1. 秘密保護法の成立で携帯基地局問題は「秘密」指定される 「押し紙」問題は警察が「保護」か?

日本の政治に関連する記事

2013年11月26日 (火曜日)

秘密保護法の成立で携帯基地局問題は「秘密」指定される 「押し紙」問題は警察が「保護」か?

秘密保護法に反対する集会が各地で行われている。わたしが在住する埼玉県朝霞市でも、25日、弁護士を講師に招いて学習会が行われた。会場は満員だったが、若い人の姿がなく、集会としては異様な感じがした。ネット世代が社会問題に対して関心を示さなくなった最大の原因は、日本のメディア(マスコミ)にある。

秘密保護法が成立した場合、MEDIA KOKUSYOの中心的なテーマである携帯基地局問題と「押し紙」問題の報道は、どのようなリスクを孕むのだろうか。

次に紹介するのは、「特定秘密に関する法案の概要」の別表である。ここには、何が「秘密」に該当し、「秘密保護」の対象になるかが定義されている。定義そのものが抽象的なのは、適応範囲が自由に拡大できることを意味している。

(「特定秘密に関する法案の概要」の別表=ここをクリック)

このうち携帯基地局に関連した取材を行ったり、住民運動に参加した場合に、適用されると思われるものは、識別番号「一ヘ」と「四イ」である。次のように述べている。

■防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法

■テロリズムによる被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「テロリズムの防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

◇携帯基地局問題

災害にそなえ国策として、政府が積極的に携帯基地局の普及をバックアップしていることは周知の事実である。その携帯基地局がテロの標的になるリスクがあると判断されたならば、基地局に関する情報は秘密保護の対象になる。

秘密保護法が存在しない現在の段階ですら、総務省は基地局に関する情報は一切開示していない。街中に立っている基地局が、どの電話会社の所有なのかすら秘密になっている。その理由を問いただすと、必ず「テロ活動の防止」という答えが返ってくる。

秘密保護法が成立すると、基地局に関する取材により、懲役10年以下の判決を受ける可能性がある。住民運動の団体も同じリスクにさらされる。総務省に対して、たとえば、しかじかの基地局の所有会社、周波数、出力などの開示を求めたら逮捕・懲罰の対象になる。

電話会社にとって、これほど都合がいい法律はない。秘密保護法の成立で、携帯基地局は自由にどこにでも設置できるようになる。

◇「押し紙」問題

一方、「押し紙」問題はどのような扱いになるのだろうか。予測される具体的な適用の方法は、今後、検証する必要があるが、わたしが不気味に感じているのは、新聞販売網そのものに警察組織が食い込んでいる事実である。

念を押すまでもなく、秘密保護法を主導しているのは、警察(厳密には公安警察)である。その警察が「防犯協力」を理由に新聞販売店と共働している事実は、ほとんど知られていないが、重大視する必要がある。

具体例を示そう。MEDIA KOKUSYOで繰り返し報じてきたが、読売防犯協力会の存在である。

周知のように新聞販売店は、早朝から操業する。午前2時には店舗に明かりが入り、遅くても4時には配達員たちが街へくりだす。そこで新聞配達員に防犯の協力を依頼しているというが、表向きの名目のようだ。販売店が「準派出所」で配達員が「準警官」である。

事実、読売防犯協力会の活動骨子は次のようになっている。

(1)配達・集金時に街の様子に目を配り、不審人物などを積極的に通報する

(2)警察署・交番と連携し、折り込みチラシやミニコミ紙などで防犯情報を発信する

(3)「こども110番の家」に登録、独居高齢者を見守るなど弱者の安全確保に努める

(4)警察、行政、自治会などとのつながりを深め、地域に防犯活動の輪を広げる

防犯活動そのものは頭から否定すべきものではないが、これが悪用されると、新聞販売網が、警察のスパイ網として機能しかねない。

秘密保護法の運用に際しては、行政機関の職員に対する「適正評価」が行われる。秘密を扱う人物として「適正」か否かを評価するのだ。それに先立って対象者に関する情報収集活動が行われることは言うまでもない。

こうした状況の下で、たとえば新聞販売店の定員が、集金先の○○さん宅を訪問して、たまたま携帯基地局の設置に反対する住民たちが集まっている場面を目撃したとする。するとこの販売店員は、防犯協力の骨子にある「(1)配達・集金時に街の様子に目を配り、不審人物などを積極的に通報する」を実行することになりかねない。

新聞の販売網に警察が入り込むことは、危険きわまりない。民間人が民間人を監視して、警察に情報提供することにもなりかねない。 ? ちなみに読売防犯協力会と覚書を交わしているのは、次の警察である。数字は、覚書を交わした日付。

高知県警 2005年11月2日

福井県警 2005年11月9日

香川県警 2005年12月9日

岡山県警 2005年12月14日

警視庁 2005年12月26日

鳥取県警 2005年12月28日

愛媛県警 2006年1月16日

徳島県警 2006年1月31日

群馬県警 2006年2月14日

島根県警 2006年2月21日

宮城県警 2006年2月27日

静岡県警 2006年3月3日

広島県警 2006年3月13日

兵庫県警 2006年3月15日

栃木県警 2006年3月23日

和歌山県警 2006年5月1日

滋賀県警 2006年6月7日

福岡県警 2006年6月7日

山口県警 2006年6月12日

長崎県警 2006年6月13日

茨城県警 2006年6月14日

宮崎県警 2006年6月19日

熊本県警 2006年6月29日

京都府警 2006年6月30日

鹿児島県警 2006年7月6日

千葉県警 2006年7月12日

山梨県警 2006年7月12日

大分県警 2006年7月18日

長野県警 2006年7月31日

福島県警 2006年8月1日

佐賀県警 2006年8月1日

大阪府警 2006年8月4日

青森県警 2006年8月11日

秋田県警 2006年8月31日

神奈川県警 2006年9月1日

埼玉県警 2006年9月14日

山形県警 2006年9月27日

富山県警 2006年9月29日

岩手県警 2006年10月2日

石川県警 2006年10月10日

三重県警 2006年10月10日

愛知県警 2006年10月16日

岐阜県警 2006年10月17日

奈良県警 2006年10月17日

北海道警 2006年10月19日

新潟県警※ 2003年3月26日

沖縄県警 2008年6月12日