1. 危険な秘密保全法、成立すれば携帯基地局問題は取材が不可能に

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2013年09月19日 (木曜日)

危険な秘密保全法、成立すれば携帯基地局問題は取材が不可能に

秘密保全法が今秋の臨時国会で提出される見込みになっている。

秘密保全法案とは、安全保障に関する情報のうち行政機関の長や警察本部長などが、「特定秘密」に指定した情報を漏らした者に対して、最高で10年の懲役を課する法律である。情報提供を求めた側も、情報を提供した側も懲罰の対象となる。「特定秘密」とは、(1)外交(2)防衛(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動防止、に関するものとされている。

この法律が成立すると取材活動が出来なくなり、ジャーナリズムが完全に骨抜きにされる可能性がある。たとえばTPPの問題は、(1)の外交に該当する。自衛隊の批判は、(1)から(4)のすべてに該当する。憲法9条の改悪に向けて、メディアの口封じをしたいという安部首相の意図が露骨に現れている。

住民運動は、(3)(4)にこじつけることができる。

「特定秘密」の範囲はあいまいでどうにでも解釈できる。たとえば携帯電話の基地局の位置と機能、それに所有者である電話会社名は、現在でも非公開になっているが、その理由として総務省は「テロ行為」の防止をあげている。通信網が破壊されたら、国家の安全が脅かされるので、これらの情報は公開できないというのが、彼らの説明である。

かりに秘密保全法が成立すると携帯基地局の電磁波問題は取材できなくなる。基地局に関する情報を提供した者、あるいは取材した者は、処罰の対象になるだろう。こうして言論を封じて、あちこちに携帯基地局を設置し、ユビキタス社会へ突っ走るのだ。

◇秘密保全法を先取りした判決

実は、秘密保全法を先取りする危険な動きは、既に司法界では始まっている。 本サイトでたびたび紹介してきた真村裁判の例を紹介しよう。 ? 結論を先に言えば、この裁判の判決では、新聞販売店主の解任理由として、元店主が取材者であるわたしに「押し紙」(冒頭の写真)などに関する情報を提供したことが、認められたのだ。読売の主張を全面的に認めたのである。

真村裁判は2008年7月、読売がYC広川の店主・真村久三さんを一方的に解任したのをうけて、真村さんが地位保全を求めた裁判である。福岡高裁の木村裁判官(現在は、福岡家裁)は、YCの元店主・真村さんの解任理由のひとつとして、真村さんや彼の弁護団がわたしのジャーナリズム活動を「幇助」したことをあげた。

判決は次のように述べている。

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)? ? そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。?

???? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。 ?  判決内容を予約すると、次のようになる。?

黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。?

それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。

それは読売の名誉と信用を害するものである。

従って真村さんを解任する理由として正当である。

これが秘密保全法を先取りした判決である。情報提供者を断罪する判決である。

※真村氏がわたしに提供したとされる情報が具体的に何を意味するのかについては、現在、調査中。わたしには具体的な記憶がない。