1. 大企業支援の国家的プロジェクト 小沢一郎氏が提唱した構造改革について考える? 

日本の政治に関連する記事

2013年01月11日 (金曜日)

大企業支援の国家的プロジェクト 小沢一郎氏が提唱した構造改革について考える? 

新年早々に、TWITTERで小沢一郎氏を批判したところ、ずいぶんたくさんの意見が寄せられた。(黒薮のTWITTER参照: https://twitter.com/kuroyabu

わたしが理解できない事柄として提起したのは次の点である。

構造改革の実質的な導入者である小沢一郎氏が、かなり広範な市民運動家やジャーナリストから熱烈な支援を受けている理由。

◇構造改革とは

そもそも構造改革とは何か?この問題を正しく定義する作業は、小沢氏について評論する際に欠くことができない。

結論から先に言えば、構造改革とは企業活動が国際化する状況の中で、日本企業の国際競争力を高めることを口実に、規制を緩和するなどして大企業が活動しやすい環境を整えるための大規模な制度改革を意味する。

具体的には、大企業の税負担を軽減し、規制緩和をはじめ、さまざまな形で企業活動を支援することを主眼としている。 その結果、消費税の導入、医療・福祉の切り捨て、労働者の切り捨て、公共事業の縮小、公的機関のリストラ、地方分権などが政策の柱になる。橋下大阪市長の登場もこのような脈絡の中で考えなければならない。

さらに特筆しなければならないのは、これらの改革だけではなくて、それに付随する極めて多岐にわたる「改革」が断行されていることである。たとえば自衛隊の海外での活動を正当化する有事法制などの制定である。

◇海外派兵との関係

企業活動の舞台が海外に移転した場合、企業が最も警戒するのは、政変・革命である。投資先の国で政権交代が起こった場合、ぼろもうけ出来る政治環境が崩壊する可能性がある。そこで「治安維持」を口実として、自衛隊(実際には、日米の共同作戦)が出動する態勢が求められることになる。

ちなみに繰り返し米軍による海外派兵を体験してた典型的な地域は、ラテンアメリカ諸国である。(グアテマラ、キューバ、チリ、ニカラグア等)いずれのケースも、米国のフルーツ会社など、多国籍企業の権益が絡んでいた。

安倍内閣が憲法改正を目指している背景にも、海外における企業の防衛策がある。つまり構造改革と海外派兵は、同じ線上にあるのだ。個々ばらばらの現象ではない。NHKや新聞はこのあたりの事情には絶対にふれない。

◇司法改革との関連

また、司法制度改革により弁護士人口を増やした背景にも、国際ビジネスに対応できる法曹人の育成という目的がある。司法制度改革については、パートナーの米国にも配慮して、米国企業が日本へ進出しやすくするために、司法制度を米国の基準に近づけようとしている。その結果、裁判員制度が導入されたり、名誉毀損裁判の賠償額が跳ね上がる現象も生じている。

大学院大学の設置は、少数精鋭のエリートを養成して、企業へ送り込むのが目的だ。 これだけ露骨な「構造改革」で大企業を支援すれば、当然、そのしわ寄せは弱者に及ぶ。事実、企業ではリストラの嵐が吹き荒れている。学校も荒廃している。

こうした社会問題を解決する案も国家的な規模で提案される。たとえば前安倍政権の時代に浮上した「美しい国」プロジェクト。これは愛国心を養うことで、「暴動」を抑え込むことが目的だ。古びた観念論教育の典型である。 メディアに対する取り締まりが強化されようとしていることは言うまでもない。

つまり構造改革というのは、大企業を支援するための大掛かりな制度改革にほかならない。大企業が繁栄すれば、国民の暮らしも向上するという考えがその背景にあるようだ。しかし、構造改革で大企業が内部留保を増やす一方、貧困層の増大が社会問題になり始めている。

小沢一郎氏の支持者は、おそらく構造改革により官僚の政治支配が排除できることを期待しているのではないか。この点については検証が必要だ。ただ、たとえ官僚支配を排除できても、それが国民の生活向上に繋がることにはありえない。

◇誰が構造改革を導入したのか

構造改革が本格化したのは、橋本内閣の時代である。しかし、そもそもの発端は、1993年の政変である。自民党の内部で、構造改革を提唱する小沢氏らと従来型の自民党政治(公共事業で大企業を繁栄させ、それによって生まれた税を、中小企業や農家の補助金にまわす)を主張するグループの対立が生まれる。

そして構造改革推進派の小沢氏が自民党を飛び出し、2大政党制の始まったのである。(続)