1. 小選挙区制の問題を棚上げにして野党共闘を語る欺瞞(ぎまん)、中野晃一・上智大学教授のインタビュー記事を読む

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2019年12月10日 (火曜日)

小選挙区制の問題を棚上げにして野党共闘を語る欺瞞(ぎまん)、中野晃一・上智大学教授のインタビュー記事を読む

『マスコミ市民』(12月)に、「後先を考えず日本の未来を収奪してきた安倍政治」と題する中野晃一氏(上智大学教授)のインタビュー記事が掲載されている。安倍政権が長期化している原因を分析したうえで、安倍政権を倒すための戦略を提案した内容だ。

それによると、「安倍自民党の得票は一貫して比例区の絶対得票率20%に届くこと」はないが、「野党が割れて票が分散し、多くの人が棄権している状況によって、政権が安定しているだけ」なのだと言う。それを前提として、安倍政権に「とどめを刺す」ための具体策として、次の2点を提案している。

1、「野党が政策協定を行って、候補者を一本化していく中で選挙協力を行い、その先に政権構想をつくっていって、有権者に選択肢を与えることが非常に大事」。

2、「投票率をあげていくこと」。「政治を諦めてしまった人、関心を持っていない人たちを呼び込むことが非常に重要です。「安倍政権の長期政権化を支えてきたのは多くの無関心層だと思います。ですから、そこにどうメッセージを届けることができるかが、もう一つ大きな課題だと思うのです」

【1について】
「1」で中野氏は、野党共闘について言及している。ここでいう野党共闘とは、旧民主党政権のスタイルを意味していることは疑いない。というのも、「2012年12月の民主党の分裂や選挙の敗北によって、野党のチェック機能さえなくなってしまった」と、かつての体制の崩壊を嘆いているからだ。

しかし、旧民主党が「野党のチェック機能」を果たしていたかどうかについては大きな疑問がある。周知のように、「自民VS民主」の構図がクローズアップされてきたが、最も中心的な国の柱である経済政策に関しては、基本的には同じである。共に新自由主義=構造改革を進める立場である。

それは歴史的にも明らかで、たとえば財界の要望に応えて、急進的な「改革」を叫んで自民党を分断したのは、小沢一郎氏だった。1993年のことである。新自由主義=構造改革の導入が日本の政治の柱となったのだ。

このような流れの中で、小選挙区制が導入され、保守による2大政党制の布石が打たれた。必然的に野党は政界再編を繰り返したが、野党連合から唯一はじきだされていたのが共産党だった。その理由は簡単で、共産党はだけが新自由主義=構造改革に反対の立場だったからだ。

ところが、最近は共産党と小沢氏が共闘するなど、かつての野党共闘の形が崩れているようにも見える。その背景に、共産党が路線を変更した事情があるようだ。逆説的に言えば、小沢氏らとの共闘が可能になるほど右傾化したともいえる。それが同党の支持者ばなれを招いた。

共産党の右傾化により中野氏らが目指す野党共闘では、新自由主義=構造改革の基本路線が維持される可能性が高い。

【2について】
「2」で中野氏は、政治に対する無関心層が広がり、選挙の投票率を低迷させ、それが結果として自民党を大勝させてきた理由であると説く。だから無関心層を啓蒙することが何よも大事だと。

この考えは、論理が180度逆立ちした観念論にほかならない。政治に対する無関心層が増えた原因は、大量の死票を生み、民意を反映しない小選挙区制そのものにあるからだ。政治に無関心な層の拡大は、小選挙区制の結果にほかならない。これは、わざわざわたしが説明するまでもなく小選挙区制の弊害として指摘されてきたことだ。

とすればなぜ中野氏は小選挙区制の廃止を提案しないのだろうか?推測になるが、小選挙区制に基づいた2代政党制による政権交代を理想的な政治形態と考えているからではないだろうか。

 

◆◆◆
リベラル保守の人々の考えかたは、基本的には体制内の改革であって、基本的な路線は自民党とほとんど変わらない。特に新自由主義=構造改革の推進という点では、「改革」の速度に違いがあるだけで、同じ方向を向いている。

小選挙区制が日本の「失われた30年」の客観的な原因にほかならない。小選挙区制を廃止しなければ、問題は何も解決しない。