1. 劣化する日本の国会、 権力維持のためのトリックとしての小選挙区制、小沢一郎氏に反省なし

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2018年06月28日 (木曜日)

劣化する日本の国会、 権力維持のためのトリックとしての小選挙区制、小沢一郎氏に反省なし

国会の機能が麻痺している。公文書の隠蔽や破棄に対する責任追及が頓挫したり、今だに加計孝太郎氏や安倍昭恵氏を国会に招致できない状態だ。それにもかかわらず安倍内閣の支持率が「V字回復」の兆しを見せている。

日本の議会制民主主義をここまで危機に追い込んだ諸悪の根源は何か?

筆者はその最大の原因は、小選挙区制の導入とそれに連動して、小泉内閣の下で本格的に始まった新自由主義=構造改革の導入だと思う。その意味で小沢一郎氏の責任は重大だ。本人は、いまだに小選挙区制を肯定しているようだが、大変な間違いである。多くのメディアが、この人物を「改革の旗手」と勘違いしてサポートしてきた責任も重い。

◇「党首討論」

27日に国会で、「党首討論」が開かれた。周知のように、これは首相と野党の党首が1対1で討論するものだ。ところが野党側の持ち時間が極端に少ない。議席数によってせいぜい15分から5分しか配分されない。その結果、深い討論に踏み込めない。

「党首討論」が形骸化しているのだ。

こうした実態になっているのは、そもそも議席の定数配分が間違っているからである。選挙制度を完全比例代表制にしていれば、自民党だけが圧倒的な多数を占めることもなく、「党首討論」の時間配分も是正される。

「党首討論」に小選挙区制の矛盾が露骨に現れているのだ。

◇片山虎之助氏のピント外れ

27日の「党首討論」で、日本維新の会・片山虎之助共同代表は、自民党が参議院の定数を6議席増やすことを旨とする公職選挙法改正案を提出したことを批判した。これもまた選挙制度問題の本質を見失った軽薄な質問だ。

自民党が党利党略で6議席増を提案したこと自体は問題だが、議員定数はむしろ増やす方向へ向かわなければならない。意外に気づいていない人が多いが、議員定数を削減することは、国民の参政権を狭めることを意味する。従って民主主義を成熟させるためには、徐々に議員定数を増やす必要があるのだ。

削減しなければならないのは、議員定数ではなく、議員報酬の方である。事実かどうか知らないが議員ひとりあたり2億円の予算を必要とするそうだが、これを1億円にするだけでも、かなり議員定数を増やすことができる。

片山氏は、議員定数よりも、小選挙区制を問題視すべきだろう。

「一票の格差」を是正する運動についても、同じ事がいえる。日本の選挙制度の根源的な問題点は、小選挙区制なのだ。「一票の格差」は選挙制度の問題の枝葉末節にすぎない。このあたりの事情を政治家はよく分かっていないのではないだろうか。

◇野党共闘が分解、与党補佐勢力に変質

小選挙区制の下では、議席配分が野党側に不利に作用するために、野党は「共闘」という戦術を取っている。これはある意味ではいたしかたない。しかし、原発反対など「シングルイシュー」(ひとつのテーマ)であれば、共闘できても、政権を取るための共闘はリスクが高い。野党間でも、基本的な方針がかなり異なるからだ。

たとえば新自由主義=構造改革を進めるのか、ストップするのかと言った根源的な問題を考える場合、おそらく共産党と社民党は、本音では反対だろう。一方、他の野党はむしろ新自由主義=構造改革の推進派である。従って、自民・公明が議席を減らしたとき、むしろ保守陣営へ寝返る可能性が極めて高い。

経済政策は、国策の幹にあたる部分であるからだ。

新自由主義=構造改革は、グローバリゼーションを伴っているから、当然、
新自由主義=構造改革の推進派は、国際警察(軍隊)を海外へ派兵できる体制の構築も視野にいれる。多国籍企業が進出先の国で政変などに巻き込まれたとき、軍隊を投入できる制度の構築をめざす。それが財界の要望でもある。

与党が弱体化しても、野党共闘が分解して、与党を補佐する勢力が現れることは、まず、間違いない。その結果、政策は何も変わらない。

これが権力構造を維持するためのトリックなのだ。

◇連立政権の樹立には壁

結局、日本の政治の行き詰まりを打破するには、小選挙区制を廃止して、公平な議席配分を可能にする比例代表制を導入する必要がある。それが議会制民主主義の基本である。滑稽な、「党首討論」を是正する道だ。

ところが野党には、こうした認識はないようだ。「シングルイシュー」では共闘できても、連立政権の樹立には壁があることを認識していない。メディアもそれを伝えない。理解していない。新自由主義という言葉さえ使用を控えている。

 

【写真】小沢一郎氏