1. 新自由主義が生んだ官製談合の温床、加計・森友・オリンピック選手村の土地大幅値引き事件の背景にあるもの

日本の政治に関連する記事

2018年06月25日 (月曜日)

新自由主義が生んだ官製談合の温床、加計・森友・オリンピック選手村の土地大幅値引き事件の背景にあるもの

ここ数年、公有地の取り引きをめぐる疑惑が次々と浮上している。森友学園、加計学園、それに東京オリンピックの選手村建設が進んでいる中央区晴海5丁目の都有地である。このうち選手村の件は、ほどんど報道されていないが、最も深刻な官製談合疑惑がある。(詳細については、近々、紙媒体でリポートする)

ここで指摘した3件のケースのうち、加計学園のケースと、選手村のケースは、新自由主義とは何かを考える格好の題材である。新自由主義の政策が典型的に現れているのだ。

◇諸悪の根源としての新自由主義

新自由主義とは何かを説明するには、膨大な字数が必要になるが、簡略化すると次の点がポイントになる。

本来、政策には公的な力で維持しなければならないものがある。その典型例は、医療・福祉・教育だ。これらのサービスは、経済格差とは無関係に平等に提供されなくてはならない。それは憲法でも保障されている。従来(橋下内閣以前)の自民党は、一応はこの方針を貫いていた。

ところが小泉構造改革の下で、急進的に新自由主義が導入された。新自由主義の下では、医療・福祉・教育を民間に委ねる。新自由主義が進めば進むほど、民間への依存度が高くなる。市場原理にそぐわないものは淘汰される。同時に、政府は民間企業への介入(規制)を控える。実は、労働法制の改悪も、新自由主義の脈絡の中で起きているのである。

小泉構造改革の時代に、竹中平蔵あたりが、「小さな政府」という言葉をしきりに使ったが、これは公共の仕事を民間に丸投げして、政府は民間企業への介入を控えることを意味している。ずばり規制緩和の推進だ。規制緩和と新自由主義は連動しているのだ。

本来、新自由主義の下では、民間主導だから、国家予算が縮小できるという考えがある。ところが実際はそうはならなかった。いわゆる「特区」を設けて、新自由主義の実験場として、そこへ手厚い支援が行われるようになったのだ。

新自由主義を思想という観点から見ると、政府が民間を支援することにより、民間企業が公的な役割を果たしてくれるという考えがある。ところが公的な支援体制を構築する中で、深刻な汚職の温床が生まれてきたのである。

加計学園の場合、獣医学部の土地を今治市が無償で提供している。それに加えて96億円の補助金を支出した。それによって、「民間企業」が教育という公的な役割を担ってくれるというのが、野党も含む政治家たちの考えのようだ。

オリンピック選手村の場合は、約1300億円の土地(晴海5丁目)を、129億6000万円に値引きして、大手のディベロッパーに譲渡したわけだから、民間支援への支援規模が極めて大きい。ディベロッパーが、オリンピック終了後に、選手村を広大な住宅地として開発してくれるという期待があるのだろう。しかし、ここでもやはり、民間支援の方針の中で、官製談合の温床が生まれたのである。

余談になるが、オリンピックが民間主導になったのは、1984年のロサンゼルス大会からである。オリンピックのスポンサーを募集し、企業のPRにオリンピックを利用してもらう代わりに、大会を主導してもらおうという考えだった。

この時の米国大統領は、ドナルド・レーガンである。英国のサッチャー、チリのピノチェトと並ぶ当時の典型的な新自由主義者のひとりである。

◇地方自治体を経由した公的支援

ところで、加計学園のケースにしても、選手村のケースにしても、手厚い支援が地方自治体から実施されたことに注目してほしい。新自由主義の政策は、中央政府を小さくして、地方に役割分担をさせるという特徴があるが、それが典型的に現れているのだ。中央政府の受け皿となる地方政党が雨後のタケノコのように生まれた時期があったが、これは新自由主義のひとつの発展段階だったと見るべきだろう。

東京オリンピックの招致に熱心だった石原・猪瀬・舛添といった知事が、典型的な新自由主義者であった事と、1200億円の値引きが行われたことは整合しているのだ。好意的にみれば、「民間企業」の活躍に期待したのである。そのために都民の財産を使って手厚い支援を行ったのだ。

森友学園の事件が起こったのも、維新の会という急進的な新自由主義者が勢力を持っている大阪府だった。偶然ではない。

 

【写真】建設が進むオリンピック選手村(中央区晴海5丁目)