1. 野党連合の限界を露呈、新潟知事選で池田氏が落選

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2018年06月11日 (月曜日)

野党連合の限界を露呈、新潟知事選で池田氏が落選

10日に投票が行われた新潟知事選で、花角英世氏(自・公明支持)が、池田千賀子氏(立・国・共・自由・社推薦)との接戦を制して当選した。投票率は58.25%。投票数は次の通りである。

 546,670  花角 英世

509,568  池田千賀子 

45,628  安中  聡 

この選挙では、中央政界の構図がほとんどそのまま持ちこまれた。政権党と野党共闘のレースだった。

実際、各党の幹部や著名人が続々と新潟入りして、それぞれ自分が支持する候補者を応援した。小泉首相も、池田氏を支持して新潟に駆けつけた。それだけに敗北を喫した池田陣営の衝撃は大きかったようだ。朝日新聞は、次のように池田陣営の落胆ぶりを伝えている。

参院選を見据え、野党6党・会派で一致して臨んだ野党には「普通なら勝てる」(立憲幹部)との手応えがあっただけに、衝撃も小さくない。国民民主党の大島敦選挙対策委員長は党本部で記者団に「一丸となって取り組んできた選挙。私たちの努力が報われなかったことに対する責任は極めて重い」と述べた。
■出典

◇「しばき隊」隊員の派遣

花角氏と池田氏の得票率は僅差だった。これは半数の人が、現在の安倍政権を承認して、半数の人が承認しなかったことを示している。勝ち負けとは無関係に、これは深刻な実態だ。公文書の破棄や隠蔽など中央省庁では前代未聞の不祥事が発生し、森友・加計事件で首相夫妻に疑惑の目が向けられている状況からすれば、池田氏が圧勝しなければおかしい。が、実際は、僅差で破れたのだ。

沖縄の名護市長選でも、野党連合は敗北している。沖縄は米軍基地が存在することで大きな被害を受けているわけだが、予想に反して、「反基地」を主張する野党連合が破れた。「しばき隊」隊員の派遣も功を奏しなかった。今年の秋に予定されている沖縄知事選も同じことになるのではないかと思う。

なぜ、野党連合は国民からの支持を得られないのだろうか。答えは簡単で、共闘自体に無理があるからだ。有権者は、原発再稼働に賛成か反対かだけで投票先を決めているわけではない。柏崎市とその周辺では、その傾向が強いだろうが、全県的にみれば決してそうではない。

それに共闘を組んでいる野党間の基本的なスタンスがばらばらであれば、議会が機能しないことを有権者は知っている。

このあたりの事情に共産党は配慮しているのか、野党共闘が始まってから急激に右傾化した。新自由主義=構造改革の旗手で、二大政党制(小選挙区制)の導入者である小沢一郎氏と共闘歩調を取ってみたり、小泉純一郎氏の批判を控えるようになった。広義のしばき隊など市民運動に親和的なスタンスをもつ識者なども、『しんぶん赤旗』に登場するようになった。一部の共産党候補は、しばき隊の支援も受けているようだ。

こうなるとしばき隊の言動を嫌い、新自由主義=構造改革こそが諸悪の根源と考えている者は、共産党支持から離れてしまうのだ。

◇新自由主義=構造改革

二大政党制の最初の失敗は、2009年に発足した民主党の鳩山政権だった。
鳩山氏の思想や言動自体には評価できる点が多い。しかし、政治にはかならず政治の力学が働いているので、政治家個人の思想や主観だけで、政策が決定されるわけではない。理想の政策を実行するには、チリのアジェンデ大統領のような死の覚悟が必要だ。その点、鳩山氏は神経が繊細すぎた。実際、鳩山氏は当初掲げていた理想の旗を次々と降ろした。米軍基地も容認した。

その後、民主党は管・野田と次々と首相を変え、それに伴って新自由主義=構造改革の推進政党という本来の姿に立ち返り、安倍内閣へバトンタッチした。そして安倍内閣は、小泉時代に負けない勢いで、新自由主義=構造改革を断行したのである。

この時点で、かなり多くの人々が、二大政党制というものは、新自由主義=構造改革政を進めるための二大政党による悪質な茶番劇であることに気づいたのだ。

この構図は、基本的には現在も続いている。ただ、異なっている部分は、野党側が、それまで仲間はずれにしていた共産党も含めて連立を組まざるを得なくなったことだ。その意味では、すでに本来の二大政党制は崩壊しているが、その変形したかたちが現在も持続しているのである。

そして昨年、希望の党をめぐる騒動で、野党側は完全に国民の信頼を失墜させた。

◇小選挙区制の廃止が急務

こんなふうに考えると1990年代に小沢一郎氏らがはじめた構造改革=新自由主義の導入と、それに伴う二大政党制が、諸悪の根源だったことになりそうだ。さらに不幸なことに、構造改革=新自由主義だけではなく、保守系議員の数にまかせて、軍事大国化も段階的に進み、改憲の手前まで来てしまったことだ。

筆者が不思議に思うのは、野党側が小選挙区制の廃止を求める国民運動を展開しないことである。小選挙区制がある限り、野党側は政策のすりあわせをせざるを得ない。そして、その調整の方向は自民党よりになる可能性が高い。と、いうのも構造改革=新自由主義の推進に反対している政党は共産党と社民党しかないからだ。