1. 総選挙、東京21区から天木直人氏(新党憲法9条)が出馬、野党共闘のあり方を問う

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2017年10月11日 (水曜日)

総選挙、東京21区から天木直人氏(新党憲法9条)が出馬、野党共闘のあり方を問う

10日に衆院選が公示され、22日の投票日に向けて、選挙選がスタートした。何回かにわたり、筆者が関心のある選挙区に焦点を当ててみよう。

まず、1回目は東京21区(八王子市、立川市、日野市、国立市)である。この選挙区には、次の4人が立候補している。

小糸健介(社民)牧師

長島昭久(希望・前)元防衛副大臣

天木直人(新党憲法9条)元レバノン大使

小田原潔(自民・前)元外務政務官

注目したいのは、天木直人氏である。周知のように天木氏は、元駐レバノン日本国特命全権大使だった。在職中にイラク戦争に反対して、外務省から「解雇」された経歴の持ち主である。現在は、評論家であり、新党憲法9条の代表である。

憲法問題について言えば、この選挙区では、改憲派が長島氏と小田原氏で、護憲派が小糸氏と天木氏という構図である。護憲派が候補を統一できなかったのは、交渉が決別したかららしい。

天木氏のブログによると、次のような経緯である。

◇統一をはばむ立・共・社の政策の違い

  私は決して私の方から野党統一を拒んだわけではありません。それどころか、共産、社民、民進党の党首にトップダウンで統一候補を働きかけました。

 しかし、新党憲法9条は、彼らの邪魔にはなっても、彼らの目指す統一候補を出す政治団体にはなり得なかったという事です。新党憲法9条の代表を捨てて、彼らの統一候補のひとりとなるのであれば考えてやってもいい、という事です。

 しかも、その場合でも、つまり新党憲法9条構想を捨てても、統一候補にすることを確約するわけではありません。もし私が政治家になることを優先すれば、それに応じたでしょう。しかし、これは私を裏切る事であり、寄付をいただいた人たちを裏切る事です。

 応じられるはずはありません。そして決まって聞こえて来る言葉は、遅すぎた、もう少し早く言ってくればなんとかなった、というものです。

 それが嘘であり、いいわけである事は明らかです。そのような野党共闘や市民団体であっても、彼らが憲法9条を守る事が出来るのなら私は協力したでしょう。

 しかし、彼らでは憲法9条は守れない。なぜなら、彼らは憲法9条と矛盾する日米安保体制の見直しを本気で訴えようとしないからです。

 それを訴えれば民進党はたちどころに分裂し、社民党はかつて自社政権で日米安保を容認したという致命的失敗から立ち直れず、共産党は連立政権を目指すあまり、日米安保を封印せざるを得ないからです。(略)

 枝野立憲民主党は、前原民進党と同じ矛盾を抱えたまま、より左翼的にならざるをえなくなり、だからといって共産党や社民党のような左翼政党になりきれず、かつての民進党と同じように矛盾を抱えたまま、しりすぼみになっていくでしょう。

 これでは憲法9条を守るどころか、日本の米国属国化は固定化、永久化します。そうなれば日本国民の暮らし(経済政策)と安全(安全保障政策)は完全に米国に差し出されることになります。

 何があってもそうさせてはいけない。左翼でない一般国民が、日米同盟の誤りに気づき、日米同盟から自立する事を求めるようにならなければいけないのです。

 つまり日本の二大政党の姿は、安倍、前原、小池のような日米同盟を是認する国民政党と、日米不平等条約を見直し、憲法9条を国是とし、自主、自立した平和外交を重視する国民政党との競い合いとならなければいけないのです。

 決して自民党と共産・社民のイデオロギー対立という先祖返りにしてはならないのです。その事を私は今度の選挙で訴えます【出典】

◇重大な小沢一郎氏の責任

安保問題のスタンスの違いが、いずれ立憲民主党の内部で浮上して、立憲、共産、社民の共闘は解消に向かうという見方である。それゆえにイデオロギーを排して、護憲だけで統一すべきであるというのが天木氏のスタンスである。

天木氏の問題提起は、歴史的に見ても、なぜ、共闘が失敗してきたかを示唆している。1970年代に共産党と旧社会党が共闘を進め、東京や大阪などで革新知事を誕生させた時期があったが、これを分断していった大きな要因のひとつに、同和問題のスタンスの違いがあった。

社会党は、部落解放同盟浅田派を支援。これに対して共産党は、浅田派を厳しく批判していた。ちなみに浅田派は、八鹿高校事件などを起こしている。

八鹿高校事件

逆説的にいえば、当時の右派層は、同和問題を巧みに利用して、両党の分断を図ったのである。

天木氏は、今後、安保問題がネックになると予測している。

しかし、他にも懸念材料はある。新自由主義の導入を引き続き進めるのか、ストップするのかという問題である。この点では立憲民主党は、むしろ前原氏のスタンスに近く、共・社と共闘を進めるうえで火種となりそうだ。

共闘という形は想像以上に難題が多い。しかし、現在の小選挙区制の下では、そうせざるを得ない事情がある。一刻でも早く中選挙区制に戻すか、完全な比例代表制を導入すべきだろう。

諸悪の根元は、小選挙区制である。そしてそれを導入した張本人が、小沢一郎氏なのである。その小沢氏の岩手3区に、共産党と社民党は、候補を立てずに小沢氏を応援するというのだから、まったく、訳が分からないのである。