非自民・小沢一郎氏が導入した小選挙区制の弊害と共産党の悲劇
現在日本の選挙を考えるうえで、欠くことができないのが、現在の小選挙区制の検証である。重大な欠陥があるにもかかわらず、ジャーナリズムはほとんど取りあげない。避けている。
2014年の衆議院選挙では、295選挙区のうち、「死票」が50%以上になった選挙区が全体の133選挙区にもなった。また、60%以上になった選挙区は22選挙区。一方、小選挙区における自民党の得票率は48%で、議席占有率は76%だった。(■出典:しんぶん赤旗)
数字を見るだけでも、まったく民意を反映しない制度であることが分かる。政権党に圧倒的に優位にできているのだ。
◇独裁国家に近づいた日本
小選挙区制導入のイニシアティブを取ったのは、改めて言うまでもなく、小沢一郎氏である。小沢氏は、1993年に自民党を飛び出し、日本新党の細川護煕を首相とする連立政権を実現させた。
その際のテーマが、政権交代を可能にする二大政党制の導入であった。そのための具体的な方策として小選挙区制が導入されたのである。当時、小選挙区制に反対したのは、共産党だけだった。つまり小沢氏は言うまでもなく、共産党を除く政党にも重大な責任があるのだ。
ちなみに「政権交代を可能にする二大政党制」とは、右派と左派による政権交代ではなく、右派と右派による政権交代である。あるいは、ほぼ同じ政策の自民と非自民のまやかしの対立構図である。が、実は、これが茶番劇であり、政治のトリックなのだ。
右派同士の政権交代によって、日本の財界が切望してきた2つの課題-構造改革=新自由主義の導入と軍事大国化を確実に進めたいというのが、小選挙区制の導入に賛成した各政党の思惑だった。それから約20年。
構造改革=新自由主義の導入と軍事大国化という2つの課題は、ゴールに近づいている。現在の状況をどう評価すべきなのかは、小泉構造改革あたりから顕著になった格差社会や貧困の実態、それに自衛隊の軍隊化が引き起こしている北朝鮮との緊張の高まりなどを見れば一目瞭然である。
特定秘密保護法や共謀罪の施行で、日本は独裁国家に近づいている。
小沢氏らは、日本をとんでもない方向へ導いたというのが、率直な筆者の評価だ。構造改革=新自由主義の導入も軍事大国化も、そしてこれら2つの課題を進めるための道具である小選挙区制の導入も完全な誤りだった。
◇現実路線か理念の優先か?
小選挙区制の下では、小規模政党は他の政党と共闘せざるを得なくなる。現在の民進、共産、自由、社民の共闘がその典型例である。しかし、ここにきて「希望の党」が現れたので、共闘の組み合わせが変わる可能性も急浮上している。共産党だけが野党共闘から排除される可能性が出てきたのだ。
この現象をどう評価すべきなのかは難しいが、筆者は最初から、共産党が共闘できるのは、社民党だけだと見ていた。民進党や自由党は左派ではなく、非自民の保守であるから、政策的に相容れない。特に構造改革=新自由主義の導入に関しては、民進党も自由党も自民党に近いのに対して、共産党は構造改革=新自由主義の導入に反対のスタンスである。
共闘は不可能というのが、筆者の解釈である。この点では、民新党の前原党首の考えは当たっているのだ。
小選挙区制という制度の下で選挙を戦わなければならないわけだから、共産党にしてみれば、共闘なしの戦いは厳しいだろうが、筆者は理念を優先すべきだと思う。理念が曖昧になると、支持層が広がらないからだ。
【写真】小沢一郎氏