1. 電磁波問題の放置はスパイ国家への道、スノーデンが警告した監視社会のインフラ整備

日本の政治に関連する記事

2017年08月22日 (火曜日)

電磁波問題の放置はスパイ国家への道、スノーデンが警告した監視社会のインフラ整備

8月17日付けのメディア黒書の記事、「今世紀最大の公害・LED、危険な実体とメカニズム、研究者からメディア黒書へ情報提供」にアクセスが殺到した。LEDは、家庭の照明器具から、パソコン、スマホまで日常生活のあらゆる分野に入り込んでいるので、読者の注意を引いたのだろう。

ところでLEDの可視光線に負けず劣らず深刻な健康被害が懸念されている電磁波がある。それはスマホやワイヤレスPCに使われているマイクロ波である。マイクロ波は、2011年にIARC(世界がん研究機関)により、発癌性の可能性があることが認定された。携帯電話の基地局周辺に住む人々の発癌率が、相対的に高いことが、ドイツ、イスラエル、ブラジルなどの疫学調査でも明らかになっている。

実は、マイクロ波はLEDの可視光線よりもはるか前から、その危険性が指摘されてきたのである。

全国各地で散発的に基地局の撤去を求める住民訴訟も起こされてきたが、日本のメディアは、本格的にこの問題を報じない。それどころか、かつてはマスコミを使ったネガティブキャンペーンも展開されてきた。

その典型例は、白装束の宗教集団が電磁波を恐れて、山奥で集団生活していた例などを取り上げて、「電磁波=カルト」のイメージを提示する報道だった。実際、筆者が電磁波問題に触れると、怪訝(けげん)な表情を浮かべる人も少なくない。

あまり知られていないが、電磁波は放射線の仲間である。欧米では、電磁波と放射線を区別していない。筆者は2014年の暮れに『電磁波に苦しむ人々』(花伝社)を出版したのだが、この本のサブタイトルを「携帯基地局の放射線」としたところ、事実関係に誤りがあるのではないかという問い合わせが数件あった。

繰り返しになるが、電磁波と放射線は同じ仲間である。日本では、エネルギーが低いものを電磁波と呼び、エネルギーの高いもの(たとえば原発のガンマ線)を放射線と呼んで区別しているだけだ。区別する理由は、ひとつには電磁波は安全で、放射線は危険という学説が主流を占めていたからだ。

しかし、現在は、「電磁波」も「放射線」も人体に悪影響を及ぼすとする考えがほぼ定説になっている。事実、かつては安全と思われていたLEDの可視光線も有害であることが最近分かってきた。

放射線(電磁波)全体が危険なのだ。放射線の人体影響については次の記事に詳しい。

【参考記事】日本人の3%~5・7%が電磁波過敏症、早稲田大学応用脳科学研究所「生活環境と健康研究会」が公表

◇通信網の整備とスパイ国家の構築と特定秘密保護法

さて、情報をコントロールすることは、国策を推進する上で不可欠といっても過言でない。日本政府は、ユビキタス社会の構築を目指して、通信網の整備に力を注いでいる。自民党と対峙する共産党までが、通信網の整備を支持している。

こうした状況の下で、スマホのマイクロ波による人体影響について考える人はほとんどいない。携帯電話基地局に関する情報(たとえば所有者、出力、放射方向)も、非公開となっている。

なぜ、政府は通信網の整備に重点を置いているのだろうか。この問題について、筆者は、最近ある新しい仮説を考察している。結論を先に言えば、デジタルを利用した通信網を張り巡らすことで、秘密裡に個人情報を収集できるシステムの構築を目指している可能性が高い。

アメリカ国家安全局(NSA)の契約職員だったエドワード・スノーデンが、個人情報を盗み取るシステムが、日本にも秘密裡に導入され、横田基地、三沢基地、それに沖縄基地(米海兵隊キャンプ・ハンセンと米空軍嘉手納基地)が、その拠点になっていることを内部告発したが、この証言を中心に据えて、最近の日本政府の動きを見るとすべて整合する。

デジタルを利用した秘密裡の個人情報収集を違法から合法にするためには、どうしても特定秘密保護法や共謀罪を成立させなければならない。そして安倍首相は実際にそれを強引にやってのけた。

一方、インフラ整備については、東電と電話会社が提携して、東電の鉄塔に携帯電話の基地局を設置する計画が進んでいる。無線通信網で日本中をデジタル化して、いつでもどこでも住民を監視するシステムの構築が進んでいるのだ。

【参考記事】スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」(小笠原みどり氏)

その意味で、放射線(電磁波)問題は、人体影響という視点だけではなく、監視網の構築、あるいはスパイ国家の構築という観点からも見ていく必要がある。マイクロ波の危険性をかえりみない政府の人命軽視は、スパイ国家の構築を憚らない倫理観と、軌道を一にしているのである。

これからがジャーナリズムの正念場である。

【写真】エドワード・スノーデン