森友・加計に続く第3の「特区事件」、国際医療福祉大学の疑惑事件の報道が始まる
森友学園、加計学園に続いて国家戦略特区がからんだ第3の事件-国際医療福祉大学を舞台とする疑惑事件の報道がようやく始まった。紙媒体では、『週刊金曜日』(7月14日)が口火を切った。ネットでは、それ以前からアクセスジャーナルなどが報じていたが、ここに来て紙媒体も報道を本格化させるようだ。
この事件の舞台となっている国際医療福祉大学は、千葉県内にいくつかのキャンパスを持つが、今後、報道のターゲットになると見られる医学部のキャンパスは、千葉県成田市公津の杜4丁目3にある。医学部が開設され、第1期生を迎え入れたのは、今年(2017年)の4月7日。第1期生の内訳は、140人。このうち20人が留学生である。
医学部の入学式では、冒頭で安倍晋三首相のビデオメッセージが披露された。安倍首相は、次のような趣旨のことを述べている。同学部のHPから引用しておこう。
安倍総理大臣は、規制緩和の実現の中で医学部の新設が「38年ぶりに実現する運びになりました」と紹介したうえで、「この試みが全国の大学それぞれに自分の大学は何を目指していくのか、という意識を芽生えさせ、医療界・教育界の新しい流れを作っていくものと期待しています」と述べられました。
(出典:同学部HP)
◇特区に「普通の医学部」?
国際医療福祉大学の件で検証点は複数ある。しかし、その核心にあたる部分は、この大学の医学部が国会戦略特区の認定基準を満たさないまま開部にこぎ着けたのではないかという疑惑と、成田市が約130億円の資金を投入した背景である。その透明性が解明点になる。資金の流れと、国際医療福祉大学・成田市・中央政界・府省庁の間にどのような人脈と金銭関係があるのかという点である。また、国からの補助金等についても、調査対象だ。
成田市の税金投入については、『週刊金曜日』は次のように報じている。
約1万4800平方メートルの土地購入に22億7600万円を投じ、校舎2棟の建設費用160億円の半分を県(35億円)と市(45億円)で補助した。さらに、大学付属病院の建設用地として約13ヘクタールの私有地と買い足し分を合わせて18ヘクタールの土地を無償貸与し、用地造成費などに10億円かけるとしている。成田市の負担だけで合計約130億円の税金が惜しみなく使われているのである。
これらの客観的な事実を踏まえた上で、今後、このプロジェクトに関連した内部文書を精査する必要があるだろう。また、安倍首相をはじめとすると政治家と国際医療福祉大学のかかわりを調査する必要もある。一部に、安倍首相と同大学の高木邦格理事長が親しい間柄にあるという情報もある。
◇「アベノミクス戦略特区」
特区制度の対象に指定されるためには、加計学園のケースでもそうだったが、新設される学部に際立った特徴がなければならない。他の大学にはないテーマを掲げ、それを国家規模で「支援」するのが特区制度である。ところが国際医療福祉大学には、留学生を20名受け入れていることを除けば、特に際立った特徴がないというのが、一般的な見方である。もっとも開学一年に満たないわけだから、結論付けるのは早いが、カリキュラムを検証すれば、何を獲得目標にしているかが分るだろう。
『週刊金曜日』の報道によると、同大学の高木邦格理事長と森田健作千葉県知事の間で、医学部開設に関する協定書があるのだが、その内容は、「医学部卒業生の千葉県内の医療機関への就業が十分に進むよう取り組む」というものである。つまり国際医療福祉大学は、平均的な医師を養成するための大学にすぎないとの見方である。
特区の趣旨とはあまり関係がないのに、莫大な公的資金が投入されているのである。
ちなみに最初に特区の構想を打ち出したのは、竹中平蔵氏である。特区は、当初、「アベノミクス戦略特区」と呼ばれていた。
国家戦略特別区域諮問会議の議員になれるのは、国家戦略特別区域法で次のように限定されている。
第三十三条 議員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 内閣官房長官
二 国家戦略特別区域担当大臣
三 前二号に掲げる者のほか、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
四 経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
森友学園にはじまる特区をめぐる一連の事件には、上記「一」から「四」の人々が深くかかわっているのである。
【参考資料】国家戦略特別区域法
【写真】国際医療福祉大学・医学部の入学式で、安倍総理のビデオメッセージが流された。出典:同学部のHP。