核兵器保有の割合はロシア が47%、アメリカが 45%、北朝鮮が0.06% 、日本のメディアと内閣府が煽る北朝鮮脅威論のおそまつなレベル
北朝鮮が5日、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功した。それに連動して、日本では「北の脅威」がいたずらにクローズアップされ、日米の軍事産業がビジネスを拡大するための格好の口実になっている。内閣府に至っては、政府広報(新聞・テレビ)でミサイル攻撃を受けた場合の対処方法を示して、不安を煽り、世論を誘導しているありさまだ。
しかし、北朝鮮が本当に日本やアメリカを攻撃する事態は発生しうるのだろうか。ストックホルム国際平和研究所が公表している「核兵器保有国の保有数ランキング%」は、この問題を考えるための指標となる。
1位 ロシア 47%
2位 アメリカ 45%
3位 フランス 1.9%
4位 中国 1.6%
5位 イギリス 1.3%
6位 パキスタン 0.8%
7位 インド 0.7%
8位 イスラエル 0.5%
9位 北朝鮮 0.06%
(2017年最新版)
上記の数字をみるだけで、北朝鮮が先制攻撃を仕掛ける事態など起こり得ないことが分かる。実際、米国政府が政府広報でミサイル攻撃に対する警戒を米国民に呼びかけたという話は聞いたことがない。
◇インドが地対空ミサイルの実験
報道の評価について創価大学の元教授・故新井直之氏は、次のような指摘をしている。
新聞社や放送局の性格を見て行くためには、ある事実をどのように報道しているか、を見るとともに、どのようなニュースについて伝えていないか、を見ることが重要になってくる。ジャーナリズムを批評するときに欠くことができない視点は、「どのような記事を載せているか」ではなく、「どのような記事を載せていないか」なのである。
読者は、北朝鮮のミサイル実験の数日前にインドが地対空ミサイルの開発実験に成功したことをご存じだろうか。日本のメディアは伝えていないが、海外メディア、たとえばプレンサ・ラティナ(キューバ)などは伝えている。インドは、国の防衛目的からだけではなく、兵器ビジネスとしての地対空ミサイルの開発に乗りだしたのである。
兵器を開発しているのは北朝鮮だけではない。
米国が宇宙規模の軍事開発を進めていることは周知の事実である。米国やフランスは、核実験こそやらなくなったが、これはコンピューターを使って核実験のシミュレーションが可能になったからで、開発を中止したことを意味するものではない。
ところが日本の北朝鮮報道に接していると、北朝鮮だけが、とんでもない「ならず者」国家のような印象を受けてしまう。北朝鮮など第3世界の国々を挑発しているのは、むしろ米国のトランプ政権の側である。シリアにミサイルを撃ち込んだのがその具体例だろう。
もちろん北朝鮮に重大な人権問題があることは間違いないだろう。しかし、だからといって、客観的な事実関係を無視した報道に徹していいことにはならない。
◇国連安全保障理事会を米国が主導する愚
地球上の核の大半を所有する米国やロシアが北朝鮮の核開発を批判するのは、構図としてはおかしい。国連安全保障理事会を米国が主導しているのもおかしい。国連の性格をよく現している。こういう分野でこそ、憲法9条をもつ日本が主導すべきなのだが、日本の場合は、それをドブに捨てようとしている上に、米国による軍事開発には理解を示しているわけだから、その資格もない。
それにしても日本のマスコミは、もう少し客観的な事実に基づいた報道ができないのだろうか。筆者は、世論誘導・洗脳の恐ろしさを改めて感じている。
【写真】インドによる地対空ミサイルの開発実験(出典:プレンサラティナ)