1. 都民ファースト、早くも馬脚を露呈、小泉・安倍が敷いた路線の上を暴走の危険

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2017年07月05日 (水曜日)

都民ファースト、早くも馬脚を露呈、小泉・安倍が敷いた路線の上を暴走の危険

東京都議選で大勝した都民ファーストの会が、早くも馬脚を現しはじめた。小池知事が同会の代表を辞任した後、新代表に就任した野田数氏の素性がいろいろと取り沙汰されている。

たとえば「デイリー新潮」は、2点を指摘している。

東京維新の会の時代に、現行憲法を無効として戦前の大日本帝国憲法の復活を求める請願を、都議会に提出した。

アントニオ猪木参議院議員の政策担当秘書を務めていた時期、事務所のお金を自由に引き出して、キャバレーなどで使っていたことが発覚して、解雇されている

出典・デイリー新潮

◇「維新」から「都民F」へ

数年前には「維新」がブームに、そして最近は「都民F」が話題になっている。これらの流れの背景に、中央政府を小さくして、それを地方に丸投げする新自由主義=構造改革の政策がある。医療や福祉など中央政府の役割を地方に丸投げする。地方で十分な財源がなければ、地方自治体の責任で、福祉や医療を切り捨てる。自己責任とする。これが政策の原理である。

こうした政策を進めるためには、中央と地方政党との連携が不可欠となる。その結果、メディアにより地方政党をPRする世論誘導が盛んに行われた。それが「維新」のブームだった。

都民Fが台頭した背景には、加計事件などに見られる自民党の腐敗があることは間違いないが、同時に、新自由主義の継続にむけて政界の再編成が進んでいる事情もある。

野田数氏が昔は「維新」で、今は「都民F」である事実は興味深い。

東京都民は都民Fに、新鮮さを感じているのかも知れないが、中身は自民党の新自由主義路線の延長に過ぎない。

◇小沢一郎氏の大罪

日本が没落への岐路に立ったのは、1990年代の初頭である。この時期に2つの重要な国策が浮上している。ひとつは新自由主義=構造改革の導入で、もうひとつは軍事大国化である。結論を先に言えば、この2つが諸悪の根源にほかならない。

改めて言うまでもなく、新自由主義=構造改革の導入を最初に叫んだのは、当時、自民党だった小沢一郎氏である。新自由主義=構造改革の導入に消極的だった自民党を飛び出して、新党を結成したのである。ところが財界が小沢氏らを支援したために、自民党も同じ方向へ舵を切らざるを得なくなった。

こうして保守2大政党が、新自由主義=構造改革の導入を互いに競い合う構図ができたのだ。この構図を支えたのは、これも小沢氏が導入した小選挙区制である。

新自由主義=構造改革がひとつの頂点に達したのが小泉内閣の時代である。小泉構造改革とは、新自由主義のドラスチックな導入にほかならない。その後、新自由主義=構造改革は、社会格差の拡大を生むなど矛盾を露呈し、足踏みをよぎなくされたが、民主党政権の後半から復活して、第2次安倍内閣の下で完全に再起動した。

しかし、この間、大阪都構想に失敗、「維新」の後退など、自民党の思惑どうりにはなっていない。加えて、加計事件などで、自民党が危機的な状況に陥った。そこに救世主として、反自民の仮面をかぶって現れたのが小池百合子氏である。斬新な人物でもなんでもない。右翼としての顔を隠すために厚化粧しているだけなのだ。

◇新自由主義と軍事大国化

一方、軍事大国化も1992年のPKOから始まった。国際貢献が口実になっていたが、それよりも企業の多国籍企業化が進んだために、海外進出企業の防衛部隊としての「軍」の派遣体制を作ることが、財界の要望であった事情が背景にある。この原理は今も変わらない。事実、憲法9条があやうくなっている。

新自由主義には軍事大国化とグローバリゼーションが伴っている。逆説的に言えば、グローバリゼーションの中で国際競争に勝つためには、企業が国際競争力を高める必要がある。そこで多国籍企業を支援するために、規制を緩和したり、税負担を軽減したり、リストラを自由化したりする方針が取られるのだ。さらに多国籍企業を防衛する体制をつくるために、軍事大国化の方針が押し進められるのだ。

国際競争力の強化、新自由主義の導入、多国籍企業の防衛のための軍事大国化は、相互に関係しているのである。

安倍内閣が防衛大臣を重要ポストとして位置づけていることになんの不思議もない。これは、将来、総理を目指す人のポストなのだ。小池氏も、第1次安倍内閣の時代に、防衛大臣に就任している。

なお、軍事大国化という言葉を使うと、なにか旧日本軍の戦争スタイル、つまり軍が上陸作戦を展開して陣地を築き、他国を植民地にするスタイルを連想する人も多いのではないかと思うが、このイメージは間違っている。この点は、冷静に見る必要がある。

日米が狙っているのは、主としてピンポイントの軍隊投入である。ちょうど米軍によるグラナダ侵攻(1983年)、パナマ侵攻(1989)のようなスタイルだ。あるいはグアテマラの軍事クーデター(1954年)、チリの軍事クーデター(1973年)のようなスタイルだ。これらの工作は、いずれも現地の多国籍企業の権益を守るために行われた共通点がある。

日本が目指しているのは、多国籍企業にとって不都合な政権が誕生すれば、武力で倒して引き上げるスタイルだ。

都民Fが勢力拡大をはかるこの時期、新自由主義と軍事大国化について、再考する必要がある。

【写真】都民ファーストの会の代表に就任した野田数氏