1. 報道自粛がはじまる、日本のマスコミのダメぶりを象徴する2つの重大事件、森友学園事件と共謀罪

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2017年04月13日 (木曜日)

報道自粛がはじまる、日本のマスコミのダメぶりを象徴する2つの重大事件、森友学園事件と共謀罪

日本の未来を左右しかねない問題でありながら、メディアが自粛している報道がいくつかある。その筆頭は、森友学園事件と共謀罪である。

前者は前代未聞の疑獄事件で、しかも安倍夫妻や日本維新の会がかかわっている。重大な政治問題である。幕引きは許されない。

後者は、まったく必要のない前近代的な法律である。成立すれば、先人たちが命がけで勝ち取ってきた言論の自由を、われわれの世代でドブに捨てることになる。

2つの事件を手短に解説しておこう。

◇森友学園事件

ゴミの処理費用は、8億1900万円。これは土地の所有者である国の負担になる。この作業費のうち1億3200万円は、既に国から森友学園に支払われた。一方、森友学園が国に支払った額は、土地価格からゴミ処理費を差し引いた額、1億3400万円である。

このような構図を客観的に見ると、国から1億3200万円の作業費の仮払いを受け、それに200万円をプラスして、国に「返金」して、国有地を手に入れたことになる。フリーライターの筆者でも購入できる。

繰り返しになるが、このような構図になったのは、ゴミ処理に必要な8億1900万円を、土地の所有者である国が負担する法律になっているからである。

しかし、驚くべきことに本当にゴミを撤去する作業が行われたかどうかを国は確認していない。撤去されていないという見方が有力になっている。

つまり森友学園は、200万円で8770平方メートルの国有地の払い下げを受けたことになる。

この事件には、さらに別の側面がある。日本維新の会や安倍夫妻のかかわりである。たとえば、森友学園を作るに先立って、大阪府の松井知事は、学校開設の基準を緩和するなど、結果的に森友に便宜を図っている。それでもなお、開設の条件は満たしていなかったのだ。

その後、教育勅語を教育の中に取り入れようとしている極右グループで日本維新の会の遠藤敦氏が代表を務める日本教育再生機構大阪が、安倍首相を招いてタウンミーティングを開いている。

つまり森友学園は、安倍昭恵氏が名誉校長に就任するなど、「極右思想」の強いバックアップがあって、開校へ向けたプロセスを踏んでいたのである。それが豊中市議会で問題になり、共産党へ情報が持ち込まれ、国会質問を経て大きな問題になったのである。

だが、真相はまだ解明されていない。輪郭が明らかになった段階だ。ここで報道を断念する理由はなにひとつない。

◇共謀罪

「テロ等準備罪」として国会で審議に入った「共謀罪」は、特定秘密保護法よりもさらにたちの悪い法律である。話し合っただけで犯罪になるケースがあるわけだから、検察が犯罪を立証するためには、「話し合い」が行われた証拠を入手する必要がある。と、なれば当然、スパイ活動が連動してくるわけだが、恐るべきことに、既にそのインフラは構築されている。
メディア黒書で既報したように、新聞販売店が警察の「準交番」に変質して、警察の情報収集に協力させられかねない事態も起きている。

【参考記事】危惧される読売新聞販売店(YC)と警察によるスパイ活動、共謀罪と読売防犯協力会の関係

また、次のような例もある。
10年ほど前に、筆者は「押し紙」弁護団の弁護士さんらと北日本のある販売店を訪問したことがある。トラブルの相談を受けたのだが、その際、店主から販売店の業務についての説明を受けた。

筆者が驚愕したのは、販売店が管理していた読者の情報である。読者名や住所は言うまでもなく、組合活動の有無とか、宗教など30件ぐらいの項目がPC上の読者情報に記入されていた。このフォーマットが新聞社とオンラインで結ばれているのだ。当然、新聞社から警察へ情報が流されている可能性もある。

筆者が取材対象にしている新聞販売の業界ですら、半ば公権力に組み込まれ、いつでもスパイ活動が可能な状態になっているのだ。

共謀罪が成立すれば、盗聴などは、日常茶飯になりかねない。

政府が共謀罪の成立を狙っているのは、東京で開催される2020年のオリンピックと国連犯罪防止・刑事司法会議までに、国際組織犯罪防止条約に批准したいという思惑があるからだ。批准するために共謀罪が必要という論理だが、わざわざ共謀罪を成立させるまでもなく、日本はすでに批准の条件を満たしている。テロや犯罪を取り締まる法律は整備されている。

それに特定秘密保護法の中にも、共謀しただけで処罰対象とする条文が盛り込まれている。

第25条    第23条第1項又は前条第1項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、5年以下の懲役に処する。

2   第23条第2項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、3年以下の懲役に処する。

第26条    第23条第3項若しくは第24条第2項の罪を犯した者又は前条の罪を犯した者のうち第23条第1項若しくは第2項若しくは第24条第1項に規定する行為の遂行を共謀したものが自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

共謀罪に固執しているのは、特定秘密保護法と同様に警察関係者にほかならない。自民党には、(失礼な言い方だが)学がない人が多いから、国際関係の中での法の在り方がよく分かっていないようだ。国際基準に合わせたいのであれば、むしろ死刑を廃止する方が先である。