1. 本当に信用できるのか新聞社による世論調査、安倍内閣支持率50%の毎日新聞の報道を問う

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2016年02月03日 (水曜日)

本当に信用できるのか新聞社による世論調査、安倍内閣支持率50%の毎日新聞の報道を問う

1月31日付け毎日新聞(電子版)が、毎日新聞社が実施した世論調査の結果を公表した。タイトルは、「内閣支持率51% 甘利氏問題は影響せず」。

タイトルに象徴されているように、安倍内閣の支持率が50%を超え、逆に不支持率が7ポイントも低下して、30%になったというものである。まるで、夏の国政選挙で自民党の圧勝を予測している人々の推論の裏付けのような内容だ。記事の冒頭を引用してみよう。

   毎日新聞は30、31両日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は51%で、昨年12月の前回調査から8ポイント上昇した。支持率が5割を超えたのは2014年3月調査以来。不支持率は30%と前回より7ポイント低下した。

甘利明前経済再生担当相が28日、自身と秘書の金銭問題で辞任したのを受け、甘利氏を閣僚に任命した安倍晋三首相の責任を尋ねたところ、「任命責任は重くない」との回答が46%、「任命責任は重い」が42%でほぼ同水準だった。甘利氏の問題は支持率に影響せず、安全保障関連法への世論の批判が薄れたことや、外交面での実績などがむしろ数字を押し上げたとみられる。

■出典

◇新聞社の経営上の汚点

データの集計が間違っているという証拠があるわけではない。ただ、調査した毎日新聞社が、あるいは新聞業界全体がどのような実態の下にあるのかは、データの信憑性を見極めるうえで重要な要素になる。それはちょうど賄賂を受け取っている政治家、あるいは汚点のある政治家の方針を、一定の距離を置いて評価せざるを得ないのと同じ原理である。

毎日新聞社の大きな汚点のひとつは、念を押すまでもなく「押し紙」である。メディア黒書でも、繰り返し報じてきたように、2004年に、毎日新聞の「押し紙」の実態を示す内部資料が外部にもれ、翌年、『FLASH』(光文社)など複数の媒体に掲載された。

それによると全国の毎日新聞社の販売店に搬入される新聞のうち約36%が「押し紙」だった。詳しくは次の記事を参照にしてほしい。

【試算】毎日新聞、1日に144万部の「押し紙」を回収、「朝刊 発証数の推移」(2002年のデータ)に基づく試算

「押し紙」という経営上の汚点が、国家権力による新聞ジャーナリズムへの介入の根拠になることは言うまでもない。逆手を取られるとメディアコントロールの恰好の道具になるのだ。それゆえに公取委も取り締まらない。

新聞社の汚点の根拠は、次のとおりである。

「押し紙」が独禁法に違反している事実。

「押し紙」により、公称部数を偽っている事実。その結果、広告主を欺いていることになる。特に公共広告は、公称部数の大小で価格が設定されるので、問題が大きい。次の動画が「押し紙」回収の一場面である。(本文とは関係ありません。)

販売店サイドの問題としては、「押し紙」部数に該当する折込広告が、配達されていない可能性がある。(最近は、折込広告の搬入枚数をあらかじめ減らしているとも聞くが、過去には、折込広告を廃棄したという販売店主の証言もある)。

「押し紙」以外の要素として、考慮しておかなければならないのは、新聞業界が安倍内閣に対して、新聞に対する軽減税率の適用を求めている事実である。
ロビー活動を展開しているわけだから、原則として安倍内閣に負の要因となる記事は書けない。

新聞の巨大部数が、再販制度という既得権で守られている事実。

こんなふうに汚点だらけなのだ。当然、新聞社には世論調査をする資質がないというのが、わたしの評価である。

◇毎日の「自称フリーライター」報道

さらに記者の資質の問題もある。たとえば2009年に、読売が新潮社とわたしを提訴した際、毎日新聞は「部数巡る記事で読売が『新潮』提訴」と題する記事を掲載した。

この記事の中で、わたしの肩書を「自称フリーライター」と報じたのだ。次の記事をご覧いただきたい。

■毎日新聞の記事

「自称」という言葉を職業を示す言葉と一緒に使った場合、「本当は・・・ではない」とか、「本当は・・・に値しない」という侮辱的な意味になる。

刑法321条には、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」とある。そこでまずわたしは毎日の「開かれた新聞委員会」に提訴したが、謝罪も何もなかった。同委員会の田島泰彦・上智大学教授が個人的に謝罪されただけだった。

こういう集団が新聞を作っているのである。あまり信用できないと考えた方が無難だろう。

◇調査の条件が書かれていない

さらにおかしなことに、1月31日付け毎日新聞の記事には、世論調査の実施方法が書かれていない。どういう方法で、誰を対象に調査して、どのような質問をして、このような数値にたどり着いたのかが不明だ。自社で調査したのか、それとも他社に調査を依頼したのかも、さっぱり分からない。

質問の内容により、答えは変わる。答えを誘導することもできるのだ。

いずれにしても、報道の初歩も踏まえていない。

◇疑問だらけの日本新聞協会の世論調査

以前、わたしは日本新聞協会が実施したとされる消費税に関する世論調査の実態を取材したことがある。調査の結果は、国民の8割が生活必需品に対する軽減税率適用を求め、新聞・書籍に対しても、その4分の3が賛成している、というものだ。ところが、実際にこの調査を行ったのは、新聞協会の監事・西澤豊氏が会長を務める中央調査社という会社だったのだ。

しかも、実際に面接調査をしたのは、4000人の候補者のうち1210名だけだった。新聞と書籍をごちゃ混ぜにして質問するなど、質問内容にも結果を誘導した跡がある。

これは新聞関係者による世論誘導の典型例のひとつである。詳細は、MNJの次の記事を参照にしてほしい。

消費税軽減税率、新聞への適用是非を問う世論調査の発注先会長は新聞協会重役 

◇巨大メディアによる世論誘導

今後、他のメディアも安倍内閣の支持率が上昇していると報じる可能性が高い。その結果、投票を放棄するひとが増え、小選挙区制の下で、自民党が圧勝することになる。

日本の巨大メディアは、日本の権力構造の中に組み込まれており、世論誘導の役割を担っていると言っても過言ではない。日本がどんどん「劣化」している大きな要因といえよう。