1. 【試算】毎日新聞、1日に144万部の「押し紙」を回収、「朝刊 発証数の推移」(2002年のデータ)に基づく試算

「押し紙」の実態に関連する記事

2016年01月21日 (木曜日)

【試算】毎日新聞、1日に144万部の「押し紙」を回収、「朝刊 発証数の推移」(2002年のデータ)に基づく試算

1月中に「押し紙」回収の現場を撮影した動画を紹介したところ、どの程度の頻度で、どの程度の数量が回収されているのかという問いあわせがあった。質問者によると、確かに動画を見る限りでは、1回の回収で凄まじい量の「押し紙」が回収されているが、回収の頻度が、たとえば2週間に一度であれば、1日の量に換算すると少なくなるのではないかという疑問である。

当然の疑問である。この疑問に答えるためには、1日に回収される「押し紙」(残紙)の数量を示す証拠が必要になる。

そこでひとつの例として、メディア黒書で繰り返し紹介してきた毎日新聞社から流出した内部資料を紹介しよう。資料のタイトルは「朝刊 発証数の推移」。

◇毎日新聞の内部資料「朝刊 発証数の推移」

次のPDF資料で、わたしが記した赤に注目してほしい。

■朝刊 発証数の推移

3,953,466:全国の毎日新聞販売店へ搬入される新聞部数を示している。約395万部である。

2,509,139:「発証」数を示す。「発証」とは、販売店が読者に発行する新聞購読料の領収書である。約251万枚である。

つまり395万部の新聞が販売店に搬入されているのに、領収書は251万枚しか発行されていないのだ。両者の差異にあたる144万(部)が、一日あたりに全国で発生していた毎日新聞の「押し紙」という計算になる。率にすると搬入される新聞の36%である。

この数字は2002年10月時点のものである。12年前のデータであるから、新聞離れが急速に進んでいる現在の時点では、さらに「押し紙」が増えている可能性が高い。「押し紙」問題はさらに深刻化している。

同資料によると、毎日新聞の販売店は6457店となっているが、この中には毎日新聞の配達を請け負っていると思われる他社の販売店が相当含まれていると推測される。当然、他社の販売店に限っては、「押し紙」を強要することできない。従って6457店を基準に1店あたりの1日の「押し紙」部数を試算することは適切ではない。

◇1日の「押し紙」回収の量

そこで個々の販売店の内部資料を紹介しよう。たとえば毎日新聞・蛍ヶ池販売所のデータである。この資料(2004年)は店主が、「押し紙」裁判を提起したのを引き金に外部へ漏れたものである。

■毎日新聞・蛍が池販売所の「押し紙」

PDF資料の赤枠で囲った部分が、1日の新聞(朝刊)の搬入部数を示している。その右の青枠が実配部数である。従って両者の差異が「押し紙」ということになる。

たとえば2004年1月の場合は、次のような部数内訳になる。

搬入部数:2280部 
実配部数: 764部
押し紙 :1516部

1つの新聞の梱包には100部前後の新聞が束ねられているので、1日に15束が余っていた計算になる。2日では、30束。3日で45束。1週間で105束である。

さらに拙著『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)から、個々の販売店の「押し紙」データを紹介しよう。

■『「押し紙」という新聞のタブー』で公表しているデータ

◇『ダラス・モーニング・ニュース』

これだけ「押し紙」(残紙)の事実が明らかになっているのに、日本の新聞社と日本新聞協会は対策を取らない。

ちなみに米国では、2004年、『ダラス・モーニング・ニュース』が部数を水増していたことが発覚した。朝刊を5.5%、日曜版を11.9%、それぞれ水増していたのだ。が、対応は日本とは異なった。同社は広告主に謝罪して、2300万ドルを払い戻したのである。

わたしは日本の新聞社が異質な体質であると指摘しているゆえんである。

 

【冒頭の画像】「押し紙」回収の現場。撮影者は不明。本文のデータとは関係ありません。包装束の帯の色から社名を推定できるが、確証がないので、社名には言及しない。