2021年07月15日 (木曜日)
欧米のフリージャーナリストらが、ニューヨーク・タイムス(NYT)などのフェイクニュースを指摘、「キューバ政府支援デモ」を「反政府デモ」と報道、写真の誤使用
5月12日、キューバで反政府デモが行われた。このデモの報道をめぐって欧米のフリージャーナリストらが、フェイクニュースが拡散されていることを、SNSを使って発進している。彼らが批判しているメディアは、フィナンシャル・タイムス(the Financial Times),フォックス・ニュース( Fox News),ニューヨークタイムス( The New York Times )、ガーディアン(The Guardian)の4紙である。
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キューバは、60年に及ぶ米国による経済封鎖の影響と、コロナウィルスの感染拡大の影響で経済が疲弊している。住民の不満が高まっているとされている。
反政府デモに対して、キューバ政府を支援するデモも行われた。両者が衝突して、死者が1名発生した。
キューバのミゲル・ディアス・カネル大統領は、キューバが置かれている状況に不満を持っている層がデモに参加したことを認めたうえで、背景に米国による資金援助と扇動があるとの見解を表明した
反政府デモがあったこと自体は、東京新聞など日本の一部メディアも報じている。
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指摘されているフェイクニュースは、動画と静止画の誤使用によるものである。左の写真は、ニューヨーク・タイムスに掲載されたものである。写真のキャプションは、「ハバナにあるマキシム・ゴメス像の前に集まる反政府運動の人々、日曜日」となっている。ところがこの写真とキャプションに矛盾点があることは、わたしでも指摘できる。
読者には、写真の中央部に映っている赤と黒の旗に注目してほしい。その中に「26 Julio」という文字が記された旗がある。「7月26日」の意味である。「26 Julio」は、公式には、「Movimiento 26 de Julio」のことである。フィデル・カストロをリーターとする当時の革命軍の意味だ。赤は革命を黒は死を意味しており、キューバに限らず、他のラテンアメリカ諸国でも、左派の象徴としてよく使われる。
つまりニューヨーク・タイムスが反政府デモとして報じているのは、実はキューバ政府を支援するデモなのだ。
他にもアルゼンチンで行われたサッカーのアメリカ杯で、祝賀パレードをしている動画の一部を、キューバの反政府デモとして流しているメディアもある。(キューバ大使のSNS)
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キューバで始まった反政府デモの背景に、米国による資金援助があったという確証は、現在の時点では得られていないが、その可能性が高い。
米国の世界戦略は、かつての軍事介入から、現地の「草の根ファシズム」の育成へと方向転換しはじめている。相対的に世界の民主主義が前進したことで、軍事介入が世論の支持を得られなくなってきたからだ。その結果、大量の「支援金」が支出されるようになったのだ。
こうした政策のターゲットになってきたのは、ニカラグア、ベネズエラ、ボリビア、香港、ウィグルなどである。トランプ前米国大統領がはじめた「不正選挙キャンペーン」も世界に広がっている。近いところでは、ペルーの大統領選挙で左派に敗北したケイコ・フジモリが展開した。
このような米国政府の戦略に大メディアが協力している。キューバのケースでは、それが簡単に暴露されてしまった。香港では、「民主主義の女神」としてメディアに利用された女性が、悲劇的な結末を迎えた。
米国からの資金援助の実態については、メディア黒書でも指摘したとおりである。次の記事を参考にしてほしい。
■全米民主主義基金(NED)の「反共」謀略、ウィグル、香港、ベネズエラ・・・
■アメリカ合衆国国際開発庁がニカラグアの「市民運動」に送金、反共メディアの育成とフェイクニュース発信が目的
今後、キューバへの資金の流れについても、解明される可能性が高い。ニカラグア、ベネズエラ、ボリビア、香港、ウィグルのケースと背景が類似しているので、そのような予測ができるのである。個々のケースの背景に、米国の世界戦略の変更がある。
政情を混乱させて最後は、クーデターを起こす戦略である。