1. 5Gの時代、隠されているマイクロ波のリスク、電話会社の常套句、「総務省の基準を守って操業しますから絶対に安全です」

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5Gの時代、隠されているマイクロ波のリスク、電話会社の常套句、「総務省の基準を守って操業しますから絶対に安全です」

環境問題でいう規制値とは、環境に放出される汚染物の許容範囲を定めた数値である。それは通常、総務省が設定する。無線通信で使うマイクロ波の場合、1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・センチメートル)が、規制値である。

規制値が1000μW/c㎡ と言っても、ほとんどの人は、どの程度の許容範囲なのかをイメージすることができない。結論を先に言えば、この数値では、規制になっていない。

許容範囲の程度をメージ化するためには、他の地域における規制値と比較することが有効だ。

たとえば欧州機構が定めているマイクロ波の規制値(勧告値)は、0.1μW/c㎡ である。近い将来には、この数値を、0.01μW/c㎡ へ引き上げると言われている。

日本の総務省が定めている1000 μW/c㎡と欧州機構が定めている0.1μW/c㎡には、天地の差がある。なぜ、これだけ大きな差があるのか、その理由も明らかになっている。

欧州機構が、マイクロ波には遺伝子毒性があるという説を前提にして規制値を決めたのに対して、日本の総務省は、マイクロ波には、遺伝子毒性がないという説に基づいて規制値を決めたからである。従って、総務省の見解が誤っていれば、日本国民は将来的に計り知れない被害を受ける可能性が高い。癌や神経系の病気が、激増すると予測される。

原発による被害の比ではないだろう。

特に、スマホやタブレットなどのヘビーユーザーの間で、健康被害が広がる可能性が高い。30代、40代での癌発症も珍しくなくなるだろう。

国別にマイクロ波の規制値を比較してみると、日本と米国の規制値が1000 μW/c㎡で、世界一高い。その他の国々も、中国(40μW/c㎡)などの例外を除いて、相対的に高い。900μW/c㎡に設定している国が大多数を占める。

しかし、ここからが肝心な点で、欧州では、国とは別に地方自治体が独自の規制値や勧告値を設けているケースがあることだ。マイクロ波の使用に、一定の厳しい規制をかけているのだ。

その典型は、前出の欧州機構の0.1μW/c㎡である。なぜ、独自の規制値を設けたのか?答えは簡単で、マイクロ波による遺伝子毒性などが、科学者の力で解明されてきたからにほかならない。研究の結果が規制値の強化をもたらしたのである。基地局の撤去を命じる裁判判例も生まれている。ジャーナリズムの働きもあり、マイクロ波にはリスクがあるという認識が生まれているのである。

参考記事:アメリカの国立環境衛生科学研究所のNTP(米国国家毒性プログラム)の最終報告、心臓の腫瘍、マイクロ波と癌の関係は明白と結論

ところが日本の電話会社は、総務省が定めた規制値を上段にかざして、事業を進めている。携帯電話の基地局設置を巡って、住民との間でトラブルが発生すると、電話会社は必ず、「総務省の基準を守っていますから、絶対に安全です」と公言する。

「総務省の基準の50分の1でやります」

と、自慢している社もある。

もちろん、総務省の規制値を守っているから、健康被害が発覚しても責任を取らないという立場である。

メディアも電磁波問題の報道は回避する傾向がある。携帯ビジネスに関係している企業が、彼らの大口広告主である上に、無線通信網の普及が国策になっているからだ。日本のメディアが、国策に著しく反するスタンスで報道することはほとんどない。

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先日、筆者のもとに基地局設置問題に関して、読者から相談があった。相談者は、基地局設置問題に巻き込まれている方である。電話会社が自分の住むマンションの管理組合に対して、屋上に携帯基地局を設置する計画を打診してきたという。設置場所は天井を隔てた自宅の真上である。

相談の主旨は、電話会社が1000 μW/c㎡を限度内とする電力密度で、基地局を操業した場合に、人的被害が生じるリスクが高いことを
立証できる資料を教えてほしいというものだった。資料そのものは、多数存在するが、電話会社は、総務省が定めた規制値を理由に、まったく聞く耳を持たないだろう、というのがわたしの回答である。

実際、総務省の規制値を守って基地局を操業している限り、住民に健康被害が出ても、責任を取らないというのが電話会社の基本方針である。

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電磁波問題は、新聞社の「押し紙」問題と同様に、やっかいな問題のひとつである。「押し紙」問題と同様に、メディアはほとんど報道しない。さらに幸か不幸か、健康被害は長い歳月を経て浮上することが多い。癌がその典型例である。

健康被害は、大規模な疫学調査を実施してはじめて判明する。たとえば、次のケースのように。

【参考記事】基地局の周辺ほど癌が多いことを示すブラジルの疫学調査、癌による死亡7191例と基地局の距離の関係を検証 疫学調査①

マイクロ波による人体影響はないと勘違いしている人は少なくない。ほとんどの人がスマホを使っており、しかも、急性の症状が現れることが少ないから、リスクについての認識が希薄になるのだ。

しかし、希望的な観測と客観的な事実は異なる。それを混同するメンタリティーが浸透していることが、大きな問題なのである。危険を知らせるのが、メディアの役割ではないか?