1. 国境なき記者団による報道の自由度序列化の愚行、「第3世界」に対する偏見

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2017年04月27日 (木曜日)

国境なき記者団による報道の自由度序列化の愚行、「第3世界」に対する偏見

フランスのパリに本部を置く、国境なき記者団が26日に、2017年の「報道の自由度ランキング」を発表した。これは毎年の恒例行事である。日本は72位だった。前年も同様の順位だった。

1,ノルウェー
2,スウェーデン
3,フィンランド
4,デンマーク
5,オランダ
6,コスタリカ
7,スイス
8,ジャマイカ
9,ベルギー
10,アイスランド

■報道の自由度・全ランキング

◇米国43位?、グアテマラ118位??

筆者は、毎年、このランキングを見るたびに違和感を覚える。何を基準に自由度を決めているのかさっぱり分からないからだ。信用できないというよりも、「自由度」という主観的なものに序列を付ける愚行に主催者の感覚を疑うのだ。

たとえば筆者が昔から取材対象にしている中央アメリカのグアテマラなどは、毎年、130位ぐらいに位置している。1960年代から36年にわたって内戦を体験し、その間に軍部による殺戮が繰り返された国である。その中で
ジャーナリズム活動も展開されてきたのである。

1996年の和平の後、戦争犯罪の検証がはじまり、2014年には1980年代の初頭に大統領職にあったグアテマラ軍の元将軍リオス・モントに対して、裁判所は禁固80年の判決を下した。

2015年の1月には、当時の警察トップに対して、禁固90年の判決を下した。これは、1982年のスペイン大使館焼き討ち事件に連座したものである。先住民族と学生37人が、軍による暴力を世界にむけてアピールするために、スペイン大使館に駆け込んだところ、軍が大使館のドアと窓を釘付けにして放火し、館内にいた人々を皆殺しにしたのである。生存者は、大使会員を含めて2人。事件後、スペインはグアテマラとの国交を断絶した。この事件の責任を警察関係者が問われたのだ。

さらにこの年、現職のオットー・ペレス=モリナ大統領が、裁判所の判断で大統領の不逮捕特権を奪われた。原因は税関汚職事件である。

【参考記事】中米グアテマラで進む戦争犯罪の検証、ジェノサイド作戦を指揮した元軍人18人を逮捕

◇自由度の序列化の愚

こうしたニュースは、インターネットを通じて米国系由で、あるいはグアテマラから直接に伝わってきた。その米国は43位で、グアテマラは118位である。これ自体がおかしなことだ。

しかし、米国の映像ジャーナリズムは伝統的にレベルが高く、それは今も健在だ。ヨーロッパや北欧の比ではない。1980年代にグアテマラなどの内戦を精力的に記録したのも、その多くはやはり米国の映像ジャーナリストである。

ニュースや報道の自由度にランキングを付けるゲームには、あまり根拠がない。筆者の私的な見解になるが、記者が特定の国に取材に入り、利便性も含めてその国の印象がよければランキングが高くなり、悪ければランキングも低くなるのではないか。

中米のコスタリカは6位になっているが、この国は中米では例外的に利便性がよく、ホテルに行けば湯が出るシャワーがあるし、水道水もそのまま飲める。
清潔な環境で育った欧米人にはうれしい。そういう国はランキングが高いが、反面、衛生面も悪く水のシャワーしかないような国は、記者の苦労も多く心証が悪くなり、ランキングも低くなっているだけの話ではないだろうか。

筆者は自由度の序列化には関心がない。

【参考サイト】米国発のDemocracy Now! (日本版)