1. 最高裁事務総局による「報告事件」の存在が判明、対象は国が被告か原告の裁判

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2021年11月12日 (金曜日)

最高裁事務総局による「報告事件」の存在が判明、対象は国が被告か原告の裁判

「報告事件」の存在を示す文書を最高裁事務総局が保管していることが判明した。

「報告事件」というのは、最高裁が下級裁判所(高裁、地裁、家裁など)に対して、審理の情況を報告させる事件のことである。それにより、国策の方向性と異なる判決が下される可能性が浮上すると、最高裁事務総局が人事権を発動して、裁判官を交代させ、国策と整合した判決を導き出す事件とされている。

しかし、その制度の詳しい実態は分かっていなかった。「報告事件」は、単なる噂なのか、それとも客観的に実在する制度なのかは、闇の中だった。

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2021年3月22日、わたしは最高裁事務総局に対して、次の内容の情報公開請求を行った。

 最高裁が下級裁判所に対して、審理の報告を求めた裁判の番号、原告、被告を示す文書。期間は、2018年4月から2021年2月。

それから7カ月、最高裁は事件番号や報告内容などを未公開にした上で、情報開示に応じた。11月8日、わたしは最高裁判所の閲覧室で、A4判用紙で15センチほどに積み上げられた書面を閲覧した。次に示すのが、開示された書面である。典型例を紹介しよう。肝心な部分である報告の内容は黒塗りにされている。

公開すると不都合な情報が含まれている可能性が高い。

 

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報告事件に指定されていたのは、国が被告、あるいは原告になっている裁判である。それ以外の事件は、開示された資料には含まれていなかった。

ただ、最高裁事務総局に対する情報公開請求制度は、公開方法に関して、不服があった場合も異議を申し立てることができない規則になっており、本当に全部を開示したのかどうかは分からない。民間企業が被告や原告になっている裁判で、「報告事件」に指定された事件がまったく存在しないという確証はない。調査の範囲を20年ぐらいに広げれば判明する可能性もある。

いずれにしても「報告事件」が制度として存在していることは、今回の調査で判明した。

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開示対象になった文書は次の通りである。

■開示対象文書の一覧

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参考までに、わたしが報告事件ではないかと疑っている裁判を1件紹介しておこう。

【参考記事】産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日