1. 横浜の副流煙裁判、被告は裁判でたとえ勝訴しても重い金銭負担を強いられる

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2019年02月21日 (木曜日)

横浜の副流煙裁判、被告は裁判でたとえ勝訴しても重い金銭負担を強いられる

横浜の副流煙裁判では、原告が被告に4500万円を請求している。法人に対する請求であれば、ともかくも一個人に対する額としては尋常ではない。しかも、被告の副流煙が原因で病気になったことを請求の根拠にしていながら、実は、原告自身が元喫煙者だったわけだから言語道断だ。それが発覚した後も、原告は請求を取り下げていない。

裁判を起こされると、たとえ敗訴しなくても、重い金銭負担を強いられることを読者はご存じだろうか。そういう制度になっているのだ。

裁判になると、法律に詳しい人は別として、通常は弁護士を選任しなければならない。その際の着手金は、原則として、裁判で請求されている額の10%になる。横浜の副流煙裁判のケースでは、請求額が4500万円だから、被告の藤井さんが準備しなければならない着手金は450万円になる。勝訴した場合は、さらに成功報酬を支払わなければならない。これはあくまで原則論であるが、歴然とした慣行である。

藤井さんは、着手金の額に納得できずに、最初の弁護士選任には失敗した。450万円を支払う気持ちにはなれなかった。そこで自分で得た情報や人脈をたよりに、安い費用で引き受けてくれる弁護士を探したのである。

ちなみに筆者も、裁判を5回経験(被告4回、原告1回)しているが、幸いに金銭的な負担はほとんどなかった。それどころか弁護士の側が赤字になっている。が、これは例外中の例外で、大半の被告は請求額の10%までにはならないまでも、重い金銭負担を強いられる。

◆ウソを前提にした裁判

米国ではスラップ防止法があり、デタラメな裁判を水際で食い止めることができる。米国と日本では、基本的な法体系が異なるので、日本で米国モデルのスラップ防止法を制定するためには、高いハードルがある。が、それでも不可能というわけではない。

事実、訴訟の提起そのものを違法とした裁判の判例は、これまで3件か4件ある。いずれも、勝訴の可能性がないことが分かっていながら起こした裁判だ。
現在、化粧品会社DHCの吉田嘉明会長を「反訴被告」とするスラップ認定裁判が東京地裁で行われている。

横浜の副流煙裁判は、若干性質が異なる。副流煙による健康被害を理由に裁判を起こしていながら、実は原告が元喫煙者であり、副流煙の発生源だったわけだから、ウソを前提に裁判を起こした疑惑があるのだ。それゆえに筆者は、取材を続けているのだ。

既に述べたように、筆者は5回、裁判を経験しているが、そのうちの最初の裁判が、やはりウソを前提にした提訴だった。この裁判を起こしたのは、読売新聞の法務室長なのだが、法務室長にアドバイスをしていたのが、自由人権協会の現在の代表理事で、最近、日産・ケリー氏の代理人になった喜田村洋一弁護士だった。審理の中で、法務室長と喜田村氏のウソが発覚して、原告が完全敗訴したのである。

たまたま筆者が取材した副流煙裁判でも、ウソを前提した疑惑が出ているわけだから、筆者は2度も類似したデタラメ裁判に直面したことになる。当然、他にも多数、同じようなケースがあるのではないかと疑っている。

◆弁護士が原告の喫煙歴を知っていた

日本にスラップ防止法がない以上、無謀な裁判を防止するためには、弁護士の良心に頼らざるを得ない。弁護士はクライアントが希望すれば、どんな裁判でも引き受けてもいいわけではない。裁判提起の依頼に対しては、裁判を起こさないようにアドバイスすることも必要なのだ。

筆者も、裁判を起こさないようにアドバイスを受けた体験がある。歌手の八木啓代氏が筆者と志岐武彦氏を訴えた裁判で勝訴した後、八木氏に対して損害賠償を求める裁判を計画したが、弁護士から止められた。

横浜の副流煙裁判で、山田義雄弁護士は、原告にどのようなアドバイスをしたのだろうか。山田弁護士自身が、原告の喫煙歴を知っていたわけだから、悪質の極みだ。

 

【注】喫煙による長期の人体影響については、次の記事に詳しい。

歌丸師匠も苦しんだCOPD(慢性閉塞性肺疾患)~患者と専門家の声から「タバコ病」の実態に迫る