横浜の副流煙裁判、原告の山田義雄弁護士が神奈川県警と頻繁にコンタクト、刑事ら4人が出動した異常
横浜の副流煙裁判の続報である。この裁判は、マンションの2階にすむ横山家(仮名)の3人(夫妻と娘)が、同じマンションの1階に住む藤井家の家主・将登さんに4500万円の金銭支払いや喫煙の禁止などを請求したものである。
将登さんが自室で吸っていた煙草の副流煙が原因で、原告3人が化学物質過敏症になったというのが、提訴理由だ。原告は、将登さんの妻・敦子さんも、煙草を吸っていたと主張している。
【事件の概要】
この事件の最大の問題点は、化学物質過敏症がだれでもなる可能性のある病気であり、その原因もイソシアネートなど、多種多様であるにもかかわらず、藤井将登さんの煙草の副流煙と断定している点である。たとえ煙草の煙であっても、その煙草の発生源は分からないはずだ。団地内に自然発生的にできた「喫煙場」である可能性もあれば、藤井将登さんとは別の住民が吸った煙草の可能性もある。
原告は、戸別に「煙草を吸っているか否か」をアンケート調査したが、煙草をめぐるトラブルが発生している団地で、「煙草を吸っているか否か」を質問されたら、「吸っていない」と答えるのが常識だろう。アンケート調査は信憑性がない。
さらにマンションから50メートルほどのところに幹線道路があり、そこからの排気ガスも団地に流れ込む。原告の1人は、「宮田診断書」の中で「車の排気ガス」に反応(10段階で8評価)することを認めている。これが原因の可能性もある。
また、原告の陳述書からは、新築マンションに入居した生活歴(シックハウス症候群の疑惑)がある事実、医療機関に長期通院するなど日常的に化学物質に接してきた事実、携帯電話のユーザーである事実などが読み取れる。それが化学物質過敏症を引き起こした可能性もある。
もっと広い視野でみると、花粉も化学物質過敏症の引き金になる。
ちなみに横山家の家主・明さんは、元喫煙者だった。このことを昨年の10月まで、裁判所に報告していなかった。
つまり、化学物質過敏症の原因が藤井将登さんが肺から吐き出した煙であると断定することはできないのだ。原告の山田義雄弁護士は、明さんが元喫煙者であることも知っていた。それにもかかわらず原告3人の化学物質過敏症の原因が藤井将登さんの煙草にあると主張し、それを前提に裁判所へ資料を提出してきたのだ。
事件の舞台が団地ということもあり、原告の主張は、多くの住民の耳にも入っている。裁判を取り下げるべきだとの声も上がっている。
ちなみに化学物質過敏症の裁判は、化学メーカーなどを被告しとた裁判は、過去に提起されているが、いずれも訴えが棄却されている。個人を、しかも、煙草の煙が化学物質過敏症の唯一の原因として訴えたケースは、横浜のケースがはじめてだ。原告3人が化学物質過敏症である可能性は高いが、何が原因なのかは特定できない。生活環境の悪化が原因で、化学物質過敏症を誘因する物質があまりにも多いからだ。その代表格のひとつが、芳香剤などのイソシアネートである。米国では大きな問題になり、規制が始まっているが、日本は野放し状態だ。
携帯電話の電磁波も大きな要因のひとつだ。その意味で、原告宅の近辺に携帯電話の基地局がないかどうかを確認する必要もある。また、高圧電線なども電磁波の発生源になる。
◇神奈川県警察本部の斉藤実本部長
しかし、この事件には化学物質過敏症そのものの複雑さに加えて、もうひとつの不可解な点がある。民事訴訟になる前段で、神奈川県警の刑事ら4人が、アクションを起こしているのである。
2017年の夏、事前連絡もなしに4人の警察関係者が藤井家を訪れた。玄関のベルが鳴ったので、藤井敦子さんが扉を開けると、4名の警察職員が立っていた。男性が3人、女性が1人。後に分かったことだが、3人の男性は刑事だった。
4人の警察関係者が藤井家を訪れた経緯については、山田弁護士が裁判所へ提出したある書面によって推測することができる。その書面とは、神奈川県警察本部の斉藤実本部長に宛てた山田弁護士による「要請書」(平成29年12月21日付け)である。
それは、○子さん(原告)が、斉藤本部長に手紙を書いて警察の介入を求めた事実を示している。山田弁護士は、このあたりの経緯について、書面の中で次のように説明している。
3 そのような(注:化学物質過敏症による健康被害が発生した)中、たまりかねて平成29年8月13日付けにて、貴職にA○子氏(原告)がお手紙を差し上げました(今回も同封致します)。
4 その結果と思われるのですが、青葉警察署の刑事さんが4名早速、依頼人宅を訪れ、かつ藤井宅へも出向いて話しをして下さったとのことです。
つまり警察は原告の要請を受けて、最初に横山家から事情を聴取し、それから藤井家の事情聴取を行ったのである。好意的な見方をすれば、係争中の双方から公平に話を聞いたということになるが、敦子さんは4人もの警察関係者が動いていることに尋常ではないものを感じたという。
通常、警察は煙草トラブルぐらいでは動かない。
藤井敦子さんは警察に事情を説明した。説明を聞いた後、刑事のひとりが、
「将登氏が喫煙する部屋の写真を撮らせて下さい」
と、言った。敦子さんは、それを許可した。3人の刑事が将登さんの部屋に入り写真を撮影した。
撮影が終わると刑事のひとりが言った。
「事情はよくわかりました。これから先はあるとすれば裁判でしょう。警察は介入しません。今件についてはもう2度と来ません」
ところがその後、再び刑事2人が藤井家を訪れた。このあたりの事情について、山田義雄弁護士による「ご報告」(平成30年1月9日付け)は次のように述べている。
(2)平成29年12月25日、当職宛に青葉警察署署長山本殿より、電話があり、「斉藤県警本部長からの指示があったので、近く対応したい。ご本人に直接連絡してもよいか」との内容打診であった。そして、当職が電話で若干の補足説明をしたところ、署長は「場合によれば傷害罪になり得るかも知れない」旨の発言をいただき、当職はその旨を依頼人(伸子氏)に伝える。
実際、12月27日に2人の刑事が藤井家を訪れた。刑事課の浅川将也氏と住民相談係の佐藤隆之氏である。次のPDFが、その際、藤井敦子さんが残したメモである。
このように山田弁護士が神奈川県警の斎藤本部長を動かす事態まで起きているのである。
【参考記事】報じられない化学物質イソシアネートの危険性、柔軟剤で体調が悪化、産業界優先の日本の愚民政策(1)
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