1. 東京都の迷惑防止条例改正、言論規制の道具に、考察が必要な「差別者」批判の方法

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2018年03月26日 (月曜日)

東京都の迷惑防止条例改正、言論規制の道具に、考察が必要な「差別者」批判の方法

東京都の警察消防委員会で、22日に、「東京都迷惑防止条例」の改正案があっさりと成立した。この改正案は、警視庁から提出されたもので、共産党を除く会派が賛成した。

改正された条例によると、電子メールやSNSなどによる「つきまとい行為」や、「住居等の付近をみだりにうろつく」行為、さらに「名誉を害する事項を告げること」なども条例に抵触することになる。また、写真撮影の容認範囲も著しく限定された。そのためか、東京都版の共謀罪ではないかとの声も上がっている。

警視庁がこのような条例をもちだしてきた背景はなにか? 電子メールやSNSによる「つきまとい行為」についていえば、ネット上で特定の人物をターゲットに執拗に誹謗中傷するなどの行為が増えてきたことにあるのではないか。

それが高じて、ターゲットに定めた人物の「住居等の付近を」複数の人物が「みだりにうろつく」事件も、実際に起きている。

さらに名誉毀損裁判を起こすことで、公権力により言論を規制してもらう風潮が、ほとんど定着してしまったことがその大きな背景としてあげられる。言論活動の評価をBPO(放送倫理・番組向上機構)に委ねる行為なども、裁判という形式ではないが、言論の規制を圧力団体に求めるという観点では同じだ。

【参考記事】BPOが「ニュース女子」に名誉毀損の勧告、「のりこえねっと(辛淑玉共同代表)」と「しばき隊」のグレーな関係

警視庁は、名誉毀損裁判が多発する社会的な風潮を逆手に取って、言論の規制に乗りだした可能性が高い。しかし、言論の規制を司法に委ねるのが当たり前になると、公権力は、言論活動のより厳しい規制に乗りだしてくる。それゆえに言論の問題は、住民運動による世論形成やジャーナリズムによって解決する必要があるのだ。

ちなみに2016年1月15日に成立した大阪市の「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の引き金は、在特会らのヘイトスピーチを不法行為として、約1300万円の損害賠償支払いと街頭宣伝を禁止した大阪高裁の判決である。「これを受け、大阪市長(当時)の橋下徹さんは記者会見で対処を表明した」(『人権と部落問題』、部落問題研究所)のである。そして条例の制定へと動いたのだ。

その橋下氏や維新の会がどのような性質であるかを、筆者が説明するまでもなく、読者はご存じだろう。言論に関していえば、IWJの岩上安身氏に対して名誉毀損裁判を起こしている。大阪府の松井知事もやはり、米山新潟県知事に対して名誉毀損裁判を起こしている。2つの訴訟の訴因は、いずれもツイッターだ。

彼らと安倍政権との関係も極めて近い。

人権擁護の運動は、その方法を間違うと、公権力に揚げ足を取られかねないのである。注意を要する。「差別者」だから、単純に司法に委ねても問題ないという単純な論理にはならないのだ。

【参考記事】都の迷惑防止条例改正案、委員会可決も懸念の声