1. 朝日新聞社が小川榮太郎氏に対して起こした5000万円の高額訴訟、背景に「訴訟ビジネス」の横行

司法制度に関連する記事

2018年01月26日 (金曜日)

朝日新聞社が小川榮太郎氏に対して起こした5000万円の高額訴訟、背景に「訴訟ビジネス」の横行

朝日新聞社が、小川榮太郎氏が著した『徹底検証「森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』が名誉毀損にあたるとして、著者の小川氏と版元の飛鳥新社に対して5000万円を請求する名誉毀損裁判を、昨年の12月に起こした。これに関して朝日は次のようなコメントを発表している。

小川栄太郎氏の著書には、森友・加計学園に関する朝日新聞の一連の報道について事実に反する記載が数多くありました。本社には一切の取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造、報道犯罪などと決めつけています。具体的に問題点を指摘し訂正を求めましたが、小川氏は大半について「私の『表現』か『意見言明』への苦情に過ぎません」などとして応じませんでした。出版元も著者の小川氏任せで、訂正は今後も期待できません。(全文はここをクリック)

この訴訟についてもスラップ訴訟ではないかという声があがっている。筆者は、朝日が訴因とした小川氏の著書を読んでいないので、内容そのものに関しては言及できないが、しかし、社会通念からすれば、報道機関が他のメディアに対して5000万円もの高額を請求するのは尋常ではない。

「5000万円の損害賠償」という裁判用語をかみ砕いて言えば、「5000万円のお金を払えと迫る」ということになる。あるトラブル対して、「迷惑料」や「慰謝料」の名目で5000万円の金銭を要求することなと、指定暴力団でもやらないだろう。それが訴訟というかたちを取ると、いとも簡単にやってしまう。正常な感覚が麻痺しているとしか言いようがない。

他人の著作に不満があれば、自社の紙面でそれを徹底して批判すればいいだけの話ではないか。

名誉毀損を理由とした高額訴訟は、小泉内閣が着手した司法制度改革の前の時代にはあり得なかった。が、武富士事件あたりから、請求額が尋常ではなくなった。1億円、2億円といった請求も半ば当たり前になった。筆者自身も、読売から1年半の間に、3件の裁判を起こされ、総額で約8000万円を請求された。しかも、読売の代理人を務めて訴訟の先頭に立ったのは、人権擁護団体・自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士だった。これにはびっくり仰天した。

繰り返しになるが、指定暴力団でもこんなことはしない。気にくわない人物の自宅に押しかけて、「5000万円払え」などとは言わない。ところが訴訟というかたちになると、自然なかたちで受け入れられてしまうのだ。

◇報道に対しては、報道で対抗を

こうした現象の背景に「訴訟ビジネス」があることは言うまでもない。高額訴訟になると、弁護士はより高い着手金をクライアントから請求できる。勝訴した時の成功報酬も高くなる。しかも、名誉毀損裁判は、原告に極めて有利に法理になっているので勝訴の可能性が高い。そのために弁護士のお金儲けに最適なのだ。

高額訴訟を起こすように勧誘されたといった情報も、ちらほらと筆者の耳に入っているが、弁護士事務所としてはあるまじき行為である。

言論機関はあくまでも言論で闘うべきなのだ。司法に解決を依頼せざるを得ないような言論機関は、みずからの無力を世間にさらしているに等しい。小川氏の言論が気にくわないのであれば、新聞紙上で繰り返し批判すべきだろう。

筆者も毎日新聞社に、明らかに名誉を毀損する記事を書かれたことがある。肩書きを「自称フリーライター」とされたのだ。しかし、提訴はしなかった。そのかわりに、新聞社の「押し紙」報道を続けている。こちらの方が相手にとっては、裁判よりも重荷になるはずだ。と、いうのも裁判とは異なり、報道には終点がないからだ。

毎日新聞の記事の全文

 

【参考記事】朝日のJCJ大賞受賞に異議あり、森友・加計報道は本当に朝日の特ダネなのか