1. 言論・表現の自由の墓を掘る「反差別」グループの愚行、「保守速報」問題からカウンター活動まで

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2018年06月29日 (金曜日)

言論・表現の自由の墓を掘る「反差別」グループの愚行、「保守速報」問題からカウンター活動まで

言論の自由がじわじわと包囲されてきた。水面下で、言論活動の統制が始まっている。これに関する6つの事実を紹介しよう。

①李信恵裁判

大阪高裁は28日、フリーライターの李信恵氏が、「保守速報」を訴えた裁判の控訴審判決を言い渡した。大阪高裁は1審を支持して被告に200万円の支払いを命じた。

これによりネット上の言論が、今後、著しく制限される可能性がさらに高まった。出版界全体の深刻な問題である。

インターネット上の投稿をまとめたサイト「保守速報」の差別的な表現で精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人のフリーライター李信恵さん(46)が運営者の男性に2200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は28日、男性に200万円の支払いを命じた一審大阪地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。■出典

②関大・宇城教授による広告はがし事件

メディア黒書で既報したように、関西大学の宇城輝人教授が筆者(黒薮)に対して、「保守速報」が張っていた「押し紙」をやめさせるキャンペーンの「バナー」(NO残紙キャンペーン)を引き揚げるように、メールで申し入れてきた。宇城氏は、「バナー」を広告と勘違いしていたのである。

「押し紙」をやめさせる運動は、思想信条の違いを超えて展開している「シングルイシュー」である。事実、左派系から右派系の人まで、幅広い人々が参加している。「保守速報」も協力者である。

宇城氏とは別の人物(その大半は匿名)からも、筆者に対して次々と同じ要請がきた。この事実は、カウンター関係者が、「保守速報」に出稿していた広告主に対して個別に、広告の引き揚げを要請した可能性を示唆する。つまり広告主が必ずしも自主的に広告を引き揚げたとは限らないのだ。「外圧」があった可能性を示唆する。この点を、多くのメディアは正確に報じていない。

【参考記事】関西大学の宇城輝人教授らが、黒薮に対して『保守速報』が張った「NO残紙キャンペーン」のバナー撤去を要求
 

③差別を理由に書籍18冊が出荷中止に

アニメ化が決まっていたライトノベル「二度目の人生を異世界で」の原作者が、中国や韓国に対する差別的な発言をしたとして、出版元のホビージャパンは6日、これまでに刊行された計18巻を出荷停止にすることを決めた。アニメの公式サイトも、放送及び制作の中止を発表した。■出典

④新宿区がデモを規制

東京新聞(6月28日)によると、「騒音などへの苦情を理由に、東京都新宿区が、区立公園の使用基準を見直し、デモの出発地にできる区立公園を現在の四カ所から一カ所に減らすことを決めた。区は『要望に迅速に対応した』と説明するが、開かれた議論のないまま区長と職員だけで決定したことに、反発が広がっている」という。■出典

新宿区が規制に乗りだした背景には、ヘイトスピーチを伴ったデモが原因らしい。ヘイトスピーチに対して、カウンター側も応戦するので、「近所迷惑」になるということだ。両者に原因があるのだ。

⑤カウンターグループが右派の集会を妨害

6月3日に川崎市で予定されていた瀬戸弘幸(右派系の論客)氏の講演会がカウンターグループの抗議で中止に追い込まれた。この様子を神奈川新聞は次のように報じている。

ヘイトデモの現場でレイシストと対峙(たいじ)してきたカウンターの怒声を合図に、地域住民や市内外から集まった市民、市民運動のメンバーが一人一人を取り囲んでいく。民族虐殺をうたい、在日コリアン集住地区の桜本の街を標的にした「日本浄化デモ」をはじめ、市内外で行われてきたヘイトデモの常連参加者。県警が別の入り口に誘導しようとしたが、体を横たえるシット・インで行く手をふさいだ。1時間半にわたった非暴力の直接行動。警察官に促され引き返していったレイシストは十数人に上った。■出典

【参考記事】川崎市でヘイトスピーチがらみの言論妨害事件、カウンターグループが物理的に右派の集会開催を妨害

⑥名誉毀損裁判の多発

このところ名誉毀損裁判が多発している。これに関しては、わざわさ例を引くまでもなく、スラップが大問題になってる事実をあげれば十分だろう。筆者も、読売新聞社から、1年半の間に3件の裁判を起こされたことがある。請求額は総額で約8000万円だった。

名誉毀損の刑事事件も、いまや特に珍しくない。ウエブサイト「弁護士ドットコム」は、刑事告訴の相談ページまで開設するありさまだ。次のサイトである。

 ■「名誉毀損 刑事訴訟」の法律相談

◇みずから言論の幅を制限する愚

「1」から「6」の事実から見えてくるのは、表現者の側がみずから言論の自由を葬り去るための墓穴を掘っている実態である。

李信恵氏は、「保守速報」に対してだけではなく、あちこで裁判を起こしてきた。差別されたという悔しさは理解できる。裁判を提起する権利もある。しかし、李信恵氏はジャーナリストである。なぜ、自分のペンで戦わないのだろうか。他の表現者が判決の影響を受け、言論を制限されかねないのだ。

言論には何の制限も設けないのが本当の言論の自由だ。そのために対抗言論があるのだ。言論で反論すればいいだけの話ではないか。表現の評価により世論が形成され、社会秩序は維持されるはずだ。

また、李信恵氏の弁護団は、自分達の行動が、言論の抑圧を狙っている公権力に逆手に取られていることを認識していないのだろうか。法律解釈だけの世界に閉じこもり、取り返しのつかない愚策に走っているのではないか。