進む国家公務員の腐敗、会計検査院が黒薮の「審査要求」を却下、疑惑だらけの博報堂と内閣府のPR業務をめぐる取り引き
筆者が会計検査院に対して申し立てた審査請求が、12月25日に却下された。この審査請求は、今年の5月8日に申し立てたもので、内閣府と大手広告代理店・博報堂との間の不透明な取り引きの調査を求めたものである。
両者の取り引きの不可解な実態は、メディア黒書で紹介してきたとおりである。たとえば内閣府から博報堂へ宛てたPR業務の発注が、見積書を発行することなく内閣府の裁量ひとつで、自由に出来る体制になっていた事実である。この方法で、約20億円の発注が行われていた。情報公開請求により関連する書面を入手したが、その大半は黒塗りで、詳細は分からない。
また、博報堂が発行した請求書の書式が、博報堂が使う正規のものではなく、おそらくはエクセルで作成されていた事実である。その請求書には、インボイスナンバーが付番されていない。これは会計監査とシステム監査を受けていない可能性を示唆する。当然、裏金づくりの疑惑もある。
博報堂事件の詳細については、次のリンクを参考にしてほしい。
◇論理が飛躍した却下理由
わたしが審査要求の根拠としたのは、会計検査院法35条である。
会計検査院は、国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、利害関係人から審査の要求があつたときは、これを審査し、その結果是正を要求するものがあると認めるときは、その判定を主務官庁その他の責任者に通知しなければならない。
却下の理由は、筆者が「利害関係人」ではないからというものである。理由書の肝心な部分は、言葉の相関関係が分かりにくい変な作文だが、そのまま引用しておこう。
会計検査院法35条第1項の規定により会計検査院が審査を行うのは、国の会計事務を処理する職員の会計経理の取り扱いに関し、利害関係人すなわち国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱いによって自己の権利又は利益に直接影響を受ける者から自己に不利益な会計経理の取扱いの是正を求める審査の要求があった場合に限られる。
読者はこの作文に違和感を覚えないだろうか。改めていうまでもなく、ここでのキーワードは、「利害関係人」である。本来であれば、「利害関係人」を定義し、筆者がそれに該当しないことを説明したうえで、却下という結論を述べなければならない。ところが、その説明を大胆に飛び越え、既成の前提として、審査を求める権利を退けているのだ。論理が破綻している。国家公務員がこのレベルの職能ではこまる。
国民は「利害関係人」と解釈されるべきだろう。と、言うのも納税義務を負わされているからだ。国家予算は、税で支えられているのである。そのお金が見積書なしに、20億円も支出され、しかも、請求書にインボイスナンバーが付番されていなければ、会計の実態を調査するのは当たり前ではないか。
国家公務員の腐敗はどこまで進むのだろうか。
【参考記事】会計検査院に提出した審査要求書と陳述書を全面公開、国家予算の「闇」は昔から何も変わっていない
会計検査院に提出した審査要求書と陳述書を全面公開、国家予算の「闇」は昔から何も変わっていない
内閣府と博報堂のPR業務に関する商取引に疑惑があるとして、筆者が8日に山下幸夫弁護士を通じて会計検査院に提出した審査要求書とそれに添付した筆者の陳述書を紹介しよう。この事件について背景を把握していない読者は、陳述書を先に読むほうが全体の構図がとらえやすい。
ごく簡潔に審査要求に踏み切った理由と事件の流れと説明しよう。
審査要求に踏み切った理由は、内閣府やいくつかの中央省庁で、普通の市民感覚からすると犯罪にも等しい国家予算の使い方が横行していることが分かったからである。たとえば2007年ごろ、環境省が博報堂に対して3年間で約90億円分の仕事を発注した事実がある。2015年度には、博報堂ルートから新聞の政府広告だけで約20億円が支出されている。文部科学省のホームページ1件の制作が2100万円にもなっている。
こうした国家予算の使い方の実態をさらに詳しく調べるために、情報公開制度を利用して情報開示を求めても、開示を大幅に遅らせたり、たとえ開示しても肝心な箇所を全部黒塗りで隠したうえで開示する。
裁判を提起しようにも、国家予算の使い方に関しては、裁判も認められていない。(地方自治体を被告にする裁判は、地元住民であれば可能)。
民主党が政権を取った2009年から、国家予算の無駄づかいを一層するための「事業仕分け」が始まったが、結局、何も変わっていなかったのだ。しかも、無駄づかいの背景に「天下り」が関係しているらしい。筆者が調査したところ、1975年に内閣府から博報堂への天下りが始まっていた。この時期に、児玉誉士夫の秘書・太刀川恒夫氏が博報堂コンサルタンツ(博報堂の持ち株会社)の取締役に就任している。
こうした実態は、官民癒着の観点からすれば、森友学園の事件よりも、深刻である。金額の規模が格段に大きいからだ。もちろん現段階では疑惑であるが、その疑惑には十分な根拠がある。
それにもかかわらず大メディアがその実態を報道しない。大手の広告代理店がからんだ問題であるからだ。広告代理店に対するマスコミ・タブーが薄らいできたとはいえ、まだ、報道のハードルは高い。しかし、このまま放置すれば、「無かったこと」として処理され、今後も延々と国家予算の無駄づかいが続くであろう。
筆者が会計検査院に審査を求めたゆえんにほかならない。
◇民間企業における業務の実態
審査を求めるに至った経緯についても説明しておこう。事件の詳細については、陳述書に詳しいので、そちらを参考にしてほしい。
発端は2016年2月だった。筆者は福岡市に本社がある化粧品の通販会社・アスカコーポレーションから1本の電話を受けた。折込詐欺(折込広告を水増して過剰な料金を徴収する詐欺)にあった可能性があるので、アドバイスしてほしいというのが要件だった。筆者は依頼者の素性を確かめてから協力を約束した。
アスカコポーレーション(以下、アスカ)は2015年ごろまで、博報堂に全面的にPR業務を依頼していた。筆者は取引の実態を知るためにアスカから、折込詐欺に関する資料だけではなく、博報堂との取り引きに関する膨大な資料を開示してもらった。
その結果、折込詐欺よりも、むしろテレビCMの間引き疑惑や、CMを作成する際に提示される番組枠の視聴率が偽装されている疑惑、それに通販誌の編集に関する約束違反などに、より深刻な問題があることが分かった。そこで筆者は関係者を取材して、ZAITENや週刊金曜日に記事を書いた。
筆者がこれまで抱いていた博報堂の清潔なイメージが完全に崩壊した。ずいぶんドラスチックなことをする企業だと感じた。戦車のようなイメージに変化したのである。
博報堂は、初期のころは取材にも応じなかった。
◇アスカから内閣府へ
筆者はメディアを取材している関係で、定期的に内閣府と広告代理店の取引の実態を調査してきた。その一端として、2016年の夏、内閣府に対して広告代理店から受け取った全請求書・全契約書・全見積書の開示を申し立てた。こうして開示させた資料を精査したところ、博報堂と内閣府の取引に不透明な面があることが判明した。
おりしもアスカと博報堂の事件を取材していた時期でもあったので、「また、博報堂か」とあきれた。そこで内閣府との取引を調べてみると、不可解な点が次々と浮上した。
たとえば既に述べたように、「構想費」の名目で、2015年度に年間6700万円の国家予算が支払われていた。内閣府は、毎日のように博報堂と打ち合わせをしていたから金額が増えたと、その理由を説明しているが、たとえ日当が10万円で365日打ち合わせしても、3650万円にしかならない。有り得ない金額なのだ。当然、裏金疑惑が浮上する。この点だけを取っても、極めて重大な問題なのである。
また、請求書が「手作り」になっていて、インボイス・ナンバーが外してある事実にも驚いた。社のロゴも入っていない。しかも、この種の請求書は、内閣府に対してだけではなく、複数の省庁に対しても送付されているのだ。
インボイス・ナンバーが附番されていない請求書の送付が違法というわけではないが、コンピューターと連動した会計システムを導入している博報堂が、あえてインボイス・ナンバーを外した請求書を送付する合理的な理由がわからない。インボイス・ナンバーを外した状態で会計監査やシステム監査をどのようにして受けているのかも疑問だ。社内で付番しているのであれば、内閣府と省庁向けのものに対しては、インボイス・ナンバーを外す理由が不明だ。
筆者は、ここでも大がかりな裏金づくりを疑ったのである。
今回、会計検査院に提出した審査要求書では、筆者が取材の中で遭遇した数々の疑惑の解明を要求している。
◇内閣府から中央省庁
筆者は次に中央省庁と博報堂の取引の取材に入った。その結果、既に述べたように中央省庁でも、インボイス・ナンバーが外してある請求書が何枚も見つかった。防衛省にいたっては、ワープロで作成したと思われる手作りの請求書の存在が明らかになった。昭和時代の八百屋さんが作っていた請求書のレベルなのだ。コンピュータの時代にそれ自体が不思議なことである。
さらに他の疑惑も浮上した。たとえば繰り返しになるが、文部科学省では、たった数ページのウエブサイトの制作で2100万円が博報堂へ支払われていた。前年にも1500万円がウエブサイト制作の名目で博報堂に支払われている。
総務省では、国勢調査(2015年)の新聞告知が契約どおり行われていないことが分かった。契約では、延べ回数25回の告知予定が、実際には12回に間引きされ、料金は全額徴収されていた。
省庁については、現在も調査中である。主要な事件については、陳述書に記録した。
◇博報堂へ乗り込んだ児玉誉士夫の秘書・太刀川恒夫
あまりにもすさまじい実態に筆者は暗い好奇心を刺激された。そこで博報堂の歴史を調べてみると、既に述べたように1975年に、児玉誉士夫氏の秘書・太刀川恒夫氏が、博報堂コンサルタンツ(博報堂の持ち株会社、前身は伸和)の取締役に就任していたことが判明した。このころから内閣府の官僚や警察関係者が続々と博報堂へ天下りしている。現在も少なくとも天下り者が5名在籍している。資金の流れを当時までさかのぼって調査するのは、さすがに難しいが、証言だけでも集めたいと筆者は考えている。
この博報堂コンサルタンツの閉鎖会社登記を調べたところ、現在の戸田裕一会長や沢田邦夫取締役の名前があった。
ちなみに児玉誉士夫氏とは、自民党の前身である日本民主党の設立時に、同党へ資金の一部を援助した右翼の大物である。自民党の生みの親である。そのお金は、「児玉機関」が戦中に中国で荒稼ぎしたものである。児玉氏は、岸信介氏と同様に元A級戦犯容疑者である。終戦直後の時代には、不思議なことに内閣参与にも就任している。
戦後も、児玉氏は数多くの経済事件にかかわってきた。日本の黒幕である。「児玉機関」の流れが、現在も博報堂内部で持続しているかどうかは不明だが、児玉氏が内閣参与になっていた事実や博報堂の大株主・博報財団の関係者に右翼の関係者が名を連ねている事実などからすれば、少なくとも現在でも思想的には極めて右寄りといえるだろう。「天下り」を通じた内閣府との深い関係が出来ている事実との整合性もあるのだ。
◇受理か不受理か?
以上が会計検査院に審査を求めるに至った経緯である。
なお、審査要求書が受理されるかどうか、現時点ではわからない。それは会計検査院が決める。しかし、メディア黒書で指摘してきたように、この問題は森友学園の問題以上に重大である。調査を回避するのであれば、これまでの構図にメスは入らないだろう。膨大な国家予算が国策プロパガンダに使われることになる。
【写真】左から自民党の生みの親・児玉誉士夫氏、菅内閣官房長官、安倍首相、
内閣府の不正経理疑惑で会計検査院に審査要求書を提出、疑惑解明の新段階へ
【臨時ニュース】
内閣府が博報堂と契約を交わしたPRプロジェクト「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」(2015年度)の不正経理疑惑の解明が新しい段階に入った。
筆者は、8日、山下幸夫弁護士を通じて、会計検査院に審査要求書を提出した。これにより会計検査院が申し立てを受理すれば、内閣府と博報堂の取引を会計検査院が調査することになる。
どのような疑惑があるかについては、メディア黒書で報じてきた通りである。
(参考:本ウエブサイトのバナー「博報堂事件の重要記事」)また、週刊金曜日、ZAITEN、紙の爆弾、ビジネスジャーナルなどが取り上げてきた。
審査要求書の中身については、近々に筆者(黒薮)の陳述書と証拠資料も含めて、全文を公開する予定だ。(詳細は後日)
2014年12月18日 (木曜日)
「最高裁をただす市民の会」が小沢検審の架空議決疑惑で、会計検査院に調査を要請
小沢一郎議員(当時は民主党)に対する検察審査会(以下、小沢検審)による起訴相当議決(2010年9月14日)が、最高裁事務総局による架空議決だったのではないかとの策略疑惑が浮上して約4年になる。
この問題は、当初、週刊誌が盛んに報じていたので、記憶している読者も多いと思うが、実は現在も調査は続いている。わたしも会員になっている「最高裁をただす市民の会」(志岐武彦代表)は、9日、会計監査院に対して、調査を求める要望書を提出した。調査項目は、以下の2点。
①小沢検審には、本当に審査員はいたか?
②経理書類の再検証。
「市民の会」は、小沢検審が架空であったと推論するに十分な裏付けを入手している。そのなかで、経理上のさまざまな疑惑も浮上している。
なぜ、経理疑惑なのか?
架空議決を行うには、審査員も架空にしなければならない。しかし、帳簿上は、架空の審査員に対しても、旅費や日当を支給する必要が生じる。その結果、架空審査員には、必然的に不正経理が連動してしまうのだ。
◇事件の背景
発端は、小沢一郎氏が2010年に東京第5検察審査会(以下、第5検審)の議決により、強制起訴に追い込まれ、最終的には無罪になった件である。メディアでも大きく報道され、喜びを露呈した小沢氏の映像はわれわれの記憶に新しい。
ところが第5検審の起訴議決には、当初から不可解な点があった。起訴議決を行った日が、小沢氏が立候補していた民主党代表選の投票日と重複したのだ。故意なのか、偶然なのか、いずれにしても不自然さを払拭できない。
そのために、何者かが「小沢排除」をたくらみ、なんらかの裏工作を行ったのではないか、という噂が広がったのだ。特に小沢氏の支持者の間で、小沢検審に対する漠然とした不信感が広がった。
ちなみに検察審査会は、「検察」という名前を付しているが、検察の組織ではなく、文字通り「検察」を「審査」する最高裁事務総局の機関である。 従って小沢氏の支援者らが抱いた不信感は、最高裁事務総局に向けられたものだった。
調査の先頭に立ったのは、志岐武彦氏、石川克子氏(市民オンブズマンいばらぎ)、それに森裕子議員だった。が、見解の相違から、森氏は志岐・石川の両氏と決別した。しかし、ある時期まで協力関係を維持して、3氏が調査の成果を上げたことは紛れのない事実である。
◇どのような疑惑があるのか?
調査では、次のような疑惑が浮上した。
①有権者から審査員を選ぶPC上のくじ引きソフトが、デタラメだった。検察審査会の事務局が手動で審査員候補を入力したり、削除できる仕組みになっていた。しかも、PC上のくじ引きが終わった後、データの跡を残さないシステムになっていた。
架空審査員の設定を可能にする仕組みが構築されていたのである。これは森氏が議員の職権を使って調査した結果だ。森氏の『検察の罠』に詳しい。
②検察審査会が議決を下す前には、担当検察官が、みずからの意見を述べる機会を与えるルールになっている。(検察審査会法41条)しかし、担当検察官の出張記録を情報公開制度を利用して入手し、検証したが議決前に担当検察官が出張した記録は見当たらなかった。
③情報公開制度を利用して審査員の旅費支払いの実態などを調べたところ、小沢検審では、検審当日ではなく、後日にまとめて経理処理が行われていたケースが複数あることが分かった。これについて経理を担当した東京地裁を追及したところ、「資金がショートしたから」と返答している。常識的にはあり得ないことである。
本当に審査員がいれば、できないはずの経理処理である。
④2012年7月30日、森議員は国会で、小沢検審には本当に審査員が存在したのかどうかを問うた。森議員の質問に応じて、会計検査院が調査に着手した。
会計検査院は、全国11の検察審査会の会議に「平成二十三年(2011年)5月から7月までに出頭したとして旅費等が支払われている189人に調書を直送」し、旅費の受け取りの有無を確認した。
1年後に結果が出た。回答は146人からあった。これを根拠に会計検査院は、審査員は存在していたと結論づけたのである。
ところが後に調査上の重大、かつ滑稽(こっけい)なミスが発覚する。確かに会計検査院は、調査を実施したが、小沢検審の時期は調査対象から外していたのである。この事実を石川克子氏が、資料の精読で発見した。
小沢検審が疑惑の対象になり、小沢検審についての調査を求められていながら、肝心の小沢検審は除外して調査し、「問題ない」としたのである。
なお、疑惑はほかにもある。次のPDFが疑惑をまとめたのもである。
◇鳩山検審でも裏金疑惑
今回、「市民の会」が提出した要望書は、上記「③」と「④」の調査を求めたものである。全文は次の通りである。
なお、鳩山検審でも裏金疑惑を推論するに十分な証拠が見つかっている。これについても、調査を求める要望書が提出された。
参考記事:鳩山検審に架空審査会の疑惑、いわくつきの請求書で浮上した裏金づくりの舞台裏、志岐武彦氏が新事実を指摘
2014年11月10日 (月曜日)
司法の信頼ゆらぐ検察審査会制度を利用した東京地裁の経理疑惑、森本総務課長の説明とは裏腹に、会計検査院の公文書には1355万9000円の残金の記録
たとえば架空の会議を開いたことにして重要事項を決定する場合、会議に「参加」した「架空の参加者」に対する旅費や日当も支払ったことにして、帳簿に記入しなければ、会議開催の事実と経理の辻褄が合わなくなる。
結果、必然的に不正経理が発生する。が、裏金づくりの目的は、必ずしも金銭が第一目的とは限らない。アリバイづくりが主要目的になるケースもある。
小沢検審が架空だったのではないかとする疑惑の調査で、志岐武彦氏らが新たな事実を明らかにした。
志岐氏らが、東京地裁の森本総務課長に、小沢検審では、審査員に対する旅費支払いが大幅に遅れるケースが繰り返されていた理由--逆説的に考えると審査員が実在しないから、大幅な延滞が繰り返されても問題にならなかった可能性がある--を尋ねたところ、資金がショートしたと説明したことは、7日付けの「黒書」で報じたが、その後、市民オンブズマンの石川克子氏の調査により、十分な資金があった可能性が高いことが分かった。会計検査院の公文書でそれが判明した。
この点を説明する前に、経理疑惑の経緯を再度確認しておこう。
◇志岐氏による取材経緯
MEDIA KOKUSYOでは、小沢検審が架空だった可能性を裏付ける客観的な資料を、志岐氏から入手して紹介してきたが、かりに小沢検審が架空だったとすれば、帳簿類も改ざんされていると考えるのが自然だ。
経理帳簿に関して、志岐氏の調査で次の事実が判明している。
①審査員に支払う旅費の支払い手続きは、審査会が開かれた後、延滞することなく行われる。
②ただし、2つだけ例外があった。それは小沢検審とH検審(匿名)だった。
③このうち、小沢検審では、支払い手続きが大幅に遅れたり、複数回に及ぶ審査会に要した旅費を、後付でまとめて処理している。審査員が実際にいれば、通常はこのような処理はできない。次に示すのは、延滞状況をまとめたものである。
④「③」の理由を東京地裁の森本総務課長に質問したところ、次のように答えた。
「予算枠を超えたのでその資金手当てができず、支払手続を先送りした。3月19日に1人だけ支払ったのは立替え金額が大きいと判断したからである。」
つまり資金がショートしたという説明だった。