1. 博報堂、環境省のクールビスでも国家予算の使途に疑問符、新聞広告では読売と日経を優遇①

大手広告代理店に関連する記事

2017年02月23日 (木曜日)

博報堂、環境省のクールビスでも国家予算の使途に疑問符、新聞広告では読売と日経を優遇①

内閣府、文部科学省、総務省に続いて、環境省でも、博報堂による国家予算の使途が不透明な実態が分かった。約8億6000万円のプロジェクトで、博報堂は新聞広告はどのように出稿したのか?何が疑惑なのか?総論を紹介する。

クールビズとは、環境庁が進める地球温暖化防止やCO2削減のプロジェクトの総称である。その環境庁と博報堂の親密な関係は有名だ。たとえば、2007年6月8日に、民主党の末松義規議員が、環境省から博報堂へ3年間で約90億円もの国家予算が、環境関連プロジェクトに支出されていた事実を国会で追及したことがある。

その後も、自民党の竹本直一議員が、東日本大震災からの復興プロジェクトに関して、博報堂に対し除染関係の業務で約9億6000万円が計上された事実を国会で指摘した。

環境省と博報堂は、どのような国家予算の「食い方」をしているのか?

昨年、筆者は環境庁に対して博報堂との取引実態を示す各種の契約書、見積書、請求書を情報公開請求した。今年に入って、プロジェクトの「成果物」についても、情報公開を請求した。これに応じて環境省が開示した資料の中に何件ものクールビス関連のプロジェクトに関する書面があった。そのうちのひとつを本稿で紹介しよう。

プロジェクトのタイトル:「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」

契約金:862,852,000円

◇契約額が約1億円増額に

約8億6300万円のプロジェクトであるが、よく調べてみると、当初、環境省と博報堂が契約した時の価格は、約7億7600万円であったことが分かった。つまり一旦、契約した後、金額を増額して、再契約を結んだのである。しかも、増額が1億円近い巨額となっている。

環境省は見積書の表紙については開示したが、その明細は非開示にしたので、8億6300万円の具体的な使途はよく分からない。使途を推測する唯一の手がかりは、契約書に明記された作業内容であるが、記述が抽象的で、具体的にどのような作業を行う契約が結ばれたのかは、ほとんど分からない。

◇具体性のない仕様書

通常、プロジェクトの契約書には、「仕様」の欄に、詳細に作業内容を明記する。たとえば新聞広告に関して言えば、○月○日に、○○新聞に○○段スペースを掲載する、というふうに。しかし、環境省と博報堂と契約文は次のようなありさまだ。

・スポーツ・音楽・映画等の観点からも積極的に温暖化対策を啓発すること。

・自治体やNPO法人等地域関係者が連携した温暖化対策を実地すること。

もちろんウエブサイトの管理・運営など具体的な作業の取り決めもある。しかし、筆者が契約書を精査した限りでは、プロジェクトの中身が具体化されていないという強い印象を受けた。

契約の当事者である環境省と博報堂も、このような契約内容の問題点を認識しているのか、仕様書に「業務実施上の留意点等について」という節を設けて、プロジェクトの方向性を定めようとしているように見受けられるが、それも十分とはいえない。

たとえば新聞広告について言えば、次の記述に見るように、広告を掲載する新聞も掲載日も明記されていない。

・放送や新聞等の広告枠を利用した直接的な情報発信のみではなく、ニュース素材や社会現象となるようなPRとすることで、報道媒体によるニュース等に取り上げられ、高いパブリシティ効果を発揮させるメディア戦略を実行すること。

このような取り決めでは、博報堂の裁量で自由に作業を決定できることになりかねない。環境省が見積書の明細を開示できなかった事情もこのあたりに潜んでいるのではないか。国家予算の使い方には透明性が求められるはずなのだが。

■仕様書の例

◇箸にも棒にもかからない報告書

筆者は、このプロジェクトの実施報告書を入手した。これを手掛かりに、博報堂がどのような仕事をしたのかを検証してみた。

報告書は158ページである。しかし、仕事についての詳細を報告した内容というようりも、「成果物」の羅列の印象が強い。たとえば、博報堂が制作したロゴを使った媒体をコピーして掲載しているのだが、そのためのスペースに55ページも割いている。博報堂が執筆したオリジナルの文章はほとんどない。

■ロゴを使った媒体をコピーの例

しかも、博報堂が請け負った他のクールビス関連のプロジェクトの報告書の文面をコピーしたとしか思えない記述もある。

ほとんど報告書の態をなしていないのが実態なのだ。

◇日経と読売を優遇

新聞広告について検証してみよう。既に述べたように、新聞広告の具体的な仕様は、契約書には明記されていない。もっとも、環境省が開示しなかっただけで、別の書面を保管している可能性はあるが、少なくとも報告書を見る限り、ずさんな広告出稿を行った事実が確認できる。報告書によると、次の新聞に広告が掲載された。広告のサイズにも注目してほしい。

7月1日 日経 (15段)
7月17日 日経 (30段)
12月9日 日経(16段+記事スタイルの広告7段) 
12月16日 読売(15段)
12月20日読売(5段+記事スタイルの広告10段)
12月24日 読売Kodomo新聞(記事スタイルの広告11段)
12月24日~26日 ブロック紙+地方紙31紙(5段)
1月号 エコチルこども環境情報紙(記事スタイルの広告11段)

ちなみに「30段」広告とは、新聞の見開き2ページを割いた広告である。博報堂は出稿先として、なぜか日経と読売を優遇したのである。ちなみに読売広告社は、博報堂グループの傘下に入っている。

◇ジャーナリズム不在の悲劇

見積書も請求明細が開示されていないので、広告費として、日経や読売にいくら支払われたのかも分からない。

このような広告費ばら撒きの構図の下では、新聞ジャーナリズムを機能不全にすることができる。博報堂はジャーナリズムの監視がないところで、事業を展開することができるのだ。その結果、国家予算の使途に関する博報堂に対する疑惑が、環境省だけではなく、内閣府、総務省、文科省などでも浮上しているのである。