1. 放送確認書の社印の位置がバラバラ疑惑に民放連が回答、「社によっては、社印をいっこいっこ(手で)押すことはありうると思います」

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2018年10月30日 (火曜日)

放送確認書の社印の位置がバラバラ疑惑に民放連が回答、「社によっては、社印をいっこいっこ(手で)押すことはありうると思います」

同じ日に出力された2枚の放送確認書の社印の位置が、微妙に異なっているものが、多量に発見された問題で、民放連に理由を尋ねてみた。

この問題は、メディア黒書で何度か報じてきたが、再度、何が問題なのかを確認しておこう。

発端は、1990年代の後半にさかのぼる。当時、静岡第一テレビ、福岡放送、北陸放送、岩手朝日テレビなどで、一部のテレビCMが放送されないまま料金の徴収が行われる不正事件が発覚した。いわゆるテレビCMの水増し事件である。

これを重く見たテレビ関係者や広告関係者は、民放連などを中心に、再発防止策を検討するようになった。その結果、2000年から放送確認書を発行する制度をスタートさせた。現在は、それが民放連に加盟している全放送局に義務づけられている。

この放送確認書制度の特徴は、不正を防止するために、人的な力を外部から加えないで、CMが放送されるとコンピュータが自動的にそれを記録し、月に一度出力される放送確認書に反映させるというものである。人間が一切の加工をしないのが、その最大の特徴だ。少なくとも筆者が取材した限りでは、そんな仕組みになっている。

ところが最近、筆者が放送確認書の社印が押された位置を細かく調べたところ、社印の位置が一定していないことが分かった。つまり放送確認書が人的に偽造されている疑惑が浮上したのだ。偽造の目的は、クライアントに対してテレビCMの水増し架空請求を行うことである。1990年代後半の事件が、かたちを変えて再現している疑惑があるのだ。

◇新聞販売店の領収書

社印の位置が一定ではない理由について、たとえば鹿児島テレビは、社印だけを別に印刷し、その紙に放送確認書を出力しているから、誤差が生じるという趣旨の説明をしている。

筆者は社印の付いた証書類について様々な分野を調べた。まず、筆者の取引き先であるバーナーの制作業会社からの請求書だが、社印の位置は全て一致していた。コンピューターが社印を印刷するからだ。

次に新聞販売店の店主にお願いして、領収書を見せてもらった。これも社印の位置はすべて一致していた。店主は次のように話す。

「機械が自動的に領収書を打ち出すので、社印の位置も同じです」

コンピューターを核とした管理システムがあたりまえになっている状況の下では、同じ種類の証書であれば、社印の位置は1ミリの狂いも生じない。

◇一部の放送局はV字回復

ところが社印の位置にずれがある放送確認書が大量に見つかったのだ。その大半はローカル局が発行したものである。

この点について、民放連の元会長室主幹の中原和子氏に理由を尋ねてみた。次の様な趣旨の回答だった。

①放送確認書のシステムの管理は、それぞれの放送局が独自に管理しているので、民放連としては把握していない。

②社印は、放送確認書を出力した後、人が押しても許される。「社によっては、(手で)社印をいっこいっこ押すことはありうると思います」

③資料を送付してもらえれば、調査する。

テレビ業界は、リーマンショックを機に低迷の時代に入ったが、その後、一部の放送局はV字回復している。新聞の凋落とは、軌道が異なる。