1. ロック歌手・内田裕也氏の死を伝える報道でスタンピード現象、全放送局が同じ紋切型の報道

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2019年03月18日 (月曜日)

ロック歌手・内田裕也氏の死を伝える報道でスタンピード現象、全放送局が同じ紋切型の報道

ロック歌手で俳優の内田裕也氏が17日に亡くなった。このニュースをテレビ各局はどう報道しているのかを注視したところ、ほぼ同じ視点であることが分かった。半年前に亡くなった内田氏の妻・樹木希林氏との奇妙な人間関係を、「夫婦史」をさかのぼりながら紹介し、故人が暴君でありながらも、いかに魅力的な人物であったかを演出するパターンだ。

派手な告別式のリハーサルを連想させる。それを公共の電波を使ってやっているのだ。嫌気がさして他のテレビ局にチャンネルを切り替えると、そこでも同じようなナレーションが流れ、同じような画像が紹介されている。

◆スタンピード現象

スタンピード現象という言葉がある。筆者が知る限り、この言葉を最初に使ったのは、共同通信の記者で、『わが亡きあとに洪水はきたれ!』などの名作を遺した故斎藤茂男氏だ。斎藤氏が現役だったころは、馴染みのない言葉だったが、現在ではインターネット上にもかなり解説がある。次のような状況を意味する。

サバンナなどで群れを作って暮らすシマウマなどの動物は、銃声などに反応して、先頭が東へ駆け出すと、群れ全体が一斉に東へ向かって突進する。先頭が西へ急旋回すると、追走組も西へ旋回する。これがスタンピード現象である。

斎藤氏は、日本のマスコミの実態をよくスタンピード現象に例えて話されていた。

◆首にカメラをぶら下げたシマウマ

内田裕也氏の死を伝える報道では、スタンピード現象が起きている。本日(18日)の昼のワイドショーでも、テレビ各社はこのニュースを同じ視点でたれ流すだろう。

が、こうした現象は今回が初めてではない。樹木希林氏の死去報道はいうまでもなく、直近では競泳の池江璃花子選手の白血病を伝える報道、 「桜田大臣叩き」などがある。ほぼ全放送局が同じ視点なのだ。

その一方で、東京都が、東京オリンピックの選手村の用地を地価の9割引きに相当する126億円で大手開発業者に叩き売りした官製談合疑惑はほとんど報じない。値引き額は、なんと1,214億円にもなる。

【参考記事】小池都知事を被告に近々に住民訴訟を提起、晴海の選手村建設予定地の払い下げ事件で、五輪スポンサー企業が逆に莫大な利益

筆者は、ニュースのネタは、記者クラブの情報から掘り起こすのではなく、自分で掘り起こすものだと思う。首にカメラをぶら下げたシマウマになってはいけない。

 

【写真】出典:ウィキペディア