1. 【連載】新聞の偽装部数 国会で新聞社の販売政策が追及された6年間

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2013年03月11日 (月曜日)

【連載】新聞の偽装部数 国会で新聞社の販売政策が追及された6年間

1980年から85年までの間に、共産党、公明党、社会党の3党が計16回にわたって新聞販売に関する「闇」を国会で追及している。これらの質問では、「押し紙」問題は言うまでもなく、景品や恫喝による新聞拡販問題、補助金問題、販売店に対する差別問題などがクローズアップされた。

国会質問を組織した沢田治氏の『新聞幻想論』によると、国会の記者席は常に満員だったが、『潮』を除いて、質問内容を記事化したメディアはなかったという。(政党機関紙は別)。沢田氏は、次のように述べている。

 新聞販売問題についての国会質問について奇妙なことに気付いた。6年間という長期にわたっているにもかかわらず、あれほど新聞のスキャンダル報道に熱心な、週刊誌はもちろん総合雑誌も、そしてマスコミ関係の雑誌も、私の知るかぎり一切話題にしていない。これはどういうことなのか。新聞業界紙には国会質問のたびに克明に派手に載せられていたことを考えれば、週刊誌、総合雑誌、それに新聞学者、研究者が知らない筈はない。

80年代前半の国会質問とは何だったのか?。この問題を考えるとき、日本の新聞人や新聞研究者の体質が輪郭を鮮明にしてくる。

国会で批判された事柄に対して、新聞関係者は一言の謝罪もしなかった。もちろん、販売政策を変更することもなかった。平然と同じことを続行したのである。こうした事実から、80年代前半の国会質問とは何だったのかという疑問が生まれてくるのである。

わたしはこれほど国会を馬鹿にした例を他に知らない。

◆ 国会を蔑視した新聞人

国会質問が終了した後、「押し紙」問題は急激に取りざたされなくなる。しかし、これは新聞社が「押し紙」政策を改めた結果ではない。依然として「押し紙」は存在したと考え得る。

と、すればなぜ販売店サイドから「押し紙」に対する不満が出なくなったのだろうか?

答えは簡単で、日本経済が好調になり、折込チラシの需要が増えたからである。既に述べたように、「押し紙」(偽装部数)で生じる損害は、折込チラシを水増しすることで相殺できる。

たとえば次の部数内訳を見てほしい。

実配部数    :2000部

?押し紙?     :1000部

合計(搬入部数):3000部

この場合、折込チラシの割り当て枚数は、原則として3000枚になる。

そこで販売店が「押し紙」による被害を被るか否かを調べるためには、過剰になった新聞1000部の卸代金と、水増しされた1000枚の折込チラシから得る不正収入を比較する必要がある。

つまり折込チラシの手数料が新聞の卸原価を上回れば、「押し紙」が何部存在していても、販売店は負担にならない。逆に折込チラシの収入が、新聞の卸代金を超えなければ、販売店は損害を受ける。

経済が好調な時代には、折込チラシの受注も増えれるので、「押し紙」による負担が軽減されるか無くなる。場合によっては、「押し紙」により逆に販売店が利益を上げるケースも現れる。

再び「押し紙」問題が浮上してくるのは、1993年のバブル経済が崩壊した後だった。しかも、「押し紙」率が40?50%といケースが相次いで現れて来るのである。