1. 【連載】新聞の偽装部数 販売店の強制改廃の典型的な手口??虚偽報告という法的主張のデタラメ

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2013年02月27日 (水曜日)

【連載】新聞の偽装部数 販売店の強制改廃の典型的な手口??虚偽報告という法的主張のデタラメ

販売局員のAは、店舗に入ると、2階の事務所へ向かって、

「おはようございます」

と、声をかけた。店主のBさんが階段を下りてくるとA担当は、

「Bさん、玄関先に積み上げてある新聞は何ですか?」

と、尋ねた。

「はあ?」

「これまでわたしに対しては、残紙があることを隠していたのですか?しかも、1000部ぐらいあるじゃないですか?嘘の報告をしていたということですか?こんなことが世間様に知れたら、わが社の新聞ジャーナリズムの信用が地に落ちるではないですか。」

これは新聞社が販売店をつぶすときに使う典型的ないいがかりである。「玄関先に積み上げてある新聞」とは、念を押すまでもなく、偽装部数(広義の「押し紙」)のことである。

既に説明したように、新聞社は、過剰になっている新聞を2つの種類に分けて定義している。「押し紙」と「積み紙」である。

「押し紙」:新聞社が販売店に強制的に買い取らせた新聞。従って、強制的に新聞を買い取らせたという証拠がない新聞は、たとえ店舗に余っていても、「押し紙」ではない。

?「積み紙」:新聞販売店が折込チラシの受注枚数を増やすことを目論んで、自主的に購入した過剰な新聞を意味する。折込チラシの受注枚数は、新聞の搬入部数に準じる原則があるので、「積み紙」が発生する温床があるのだ。

「押し紙」と「積み紙」を総称して、偽装部数という。

新聞社が販売店をつぶしたいときには、販売店が「積み紙」をしていたことを理由として持ち出してくる場合が多い。偽装部数の中身が「積み紙」であることを法的に立証すれば、販売店の強制改廃を正当化できるからだ。

新聞社の弁護士が偽装部数の中身を「積み紙」と主張する根拠にはどのようなものがあるのだろうか。順を追って説明しよう。

まず、主張の大前提として彼らは、「押し紙」裁判になると、必ず「押し紙」と「積み紙」を明確に定義してくる。通常、言葉の定義というものは、実際の社会の中で、その言葉がどのようなニュアンスで使われているかが大前提になるはずだが、彼らは、辞書や特定の団体が机上で決めた言葉の定義を採用する傾向がある。従って、実社会から乖離していることが多い。

言葉の定義を我田引水に解釈した上で、偽装部数の中身が「積み紙」であるという主張を展開する。このような戦略は日本の司法界では極めて有効に作用する。

◆発注伝票の不在

まず、第1に新聞の商取引には発注伝票が存在しないので、店主が「押し紙」を断ったと主張しても、断った決定的な証拠がどこにも存在しない。発注伝票に2000部と記入したのに、3000部が搬入されたなら、1000部を押し付けた証拠になる。

新聞社はあえて発注伝票を使った商取引を導入しようとはしない。発注伝票を定着させてしまうと、店主が自分で注文部数を決める慣行ができ、「押し紙」を断る店主が増えるからだ。それに偽装部数の中身が「押し紙」であるという主張が成立する余地が生じるからだ。

◆虚偽報告という言いがかり

偽装部数の中身が「積み紙」であるという主張を展開するための第2の根拠になっているのは、新聞社が販売店に対して提出を求める部数内訳の報告書である。報告書の中身は、新聞社によって異なるが、ある著しい共通点もある。

それは部数内訳の項目として、「定数(搬入部数)」や「実配部数」、それに「予備部数」といった項目があっても、「押し紙」という項目は絶対的に不在になっていることだ。そのために偽装部数は定数や実配部数に含めて、新聞社に報告する慣行が確立している。理由は簡単で、「押し紙」が独禁法で禁止されているからだ。

たとえば実配部数が2000部で、1000部が「押し紙」であっても、販売店は実配部数3000部と報告せざるを得ない。

ところがこのような報告は、法的に見れば、明らかな虚偽報告である。そこで新聞社の弁護士は、虚偽報告により新聞社との信頼関係が崩壊したので、販売店改廃は正当だと主張してくるのだ。