1. 新連載? 新聞の偽装部数  なぜ、「押し紙」という言葉の代わりに「偽装部数」を採用したのか?

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2013年02月17日 (日曜日)

新連載? 新聞の偽装部数  なぜ、「押し紙」という言葉の代わりに「偽装部数」を採用したのか?

「押し紙」とは何か?  「押し紙」の定義を巡っては、2つの説がある。広義の「押し紙」と、新聞社が採用している「押し紙」の定義である。

まず、広義の「押し紙」から説明しよう。

■広義の「押し紙」

新聞販売店で過剰になっている新聞(ただし若干の予備紙は除く)を指して「押し紙」と呼んでいる。週刊誌やネットの記事で使われている「押し紙」という言葉は、広義の過剰部数を意味している。

たとえば、新聞の搬入部数が3000部で、実際に配達している実配部数が2000部とすれば、差異の1000部が「押し紙」である。

「A販売店の裏庭には『押し紙』が積み上げられている」と言う表現は、「A販売店には過剰な新聞」が放置されているという意味である。

■新聞社の「押し紙」

これに対して新聞社にとって、「押し紙」とは新聞社が販売店に強制的に買い取らせた新聞だけを意味する。従って、強制的に新聞を買い取らせたという証拠がない新聞は、たとえ店舗に余っていても、「押し紙」ではない。

そこで「押し紙」に連座して採用している言葉が、「積み紙」である。

「積み紙」とは、新聞販売店が折込チラシの受注枚数を増やすことを目論んで、自主的に購入した過剰な新聞を意味する。折込チラシの受注枚数は、新聞の搬入部数に準じる原則があるので、「積み紙」が発生する温床があるのだ。

たとえば次のケース

実配部数             2000部

積み紙(あるいは「押し紙」)  1000部

合計       ・・・・・・・・・・・・・3000部

この場合、折込チラシの受注枚数も、原則として3000枚になる。販売店は実配部数2000部の卸代金の他に、自腹を切って1000部の「積み紙」(あるいは「押し紙」)の卸代金も新聞社に支払うが、同時に3000枚の折込チラシ収入を得ることができる。改めて言うまでもなく、このうちの1000枚は、水増しされたものである。

チラシで得る収入が新聞の卸値を上回れば、販売店は損害を受けない。ここに「積み紙」政策が成立する根拠があるのだ。

ちなみに「残紙」とは、「押し紙」と「積み紙」の総称である。

一般の人々は、このような新聞の商取引きのカラクリを知らない。そこで過剰な残紙を指して、広義に「押し紙」と呼んでいるのだ。

◆なぜ、偽装部数という言葉か?

最近、わたしが採用している言葉に偽装部数という新しい言葉がある。偽装部数とは、「残紙」と同様に、「押し紙」と「積み紙」の総称である。あえて「偽装」という言葉を使ったのは、広告主の観点から、その悪質性に鑑みた結果にほかならない。

周知のように広告(折込チラシ、紙面広告)収入は、新聞の公称部数により大きく左右される。それゆえに偽装部数を発生させることが、新聞社のビジネスモデルに組み込まれているのだ。

公称部数が多くなればなるほど、紙面広告の媒体価値が高くなる。その結果、新聞社は紙面広告の収入を増やし、販売店は折込チラシの水増しでより多くの手数料を稼げる。このような事情から、新聞社と販売店の連携による「押し紙」と「積み紙」の戦略が生まれたのである。

「押し紙」を巡る裁判では、偽装部数の中身が、「押し紙」なのか、「積み紙」なのかが争われる。つまり過剰な部数を新聞社が強制しかのか、それとも販売店が、自主的に買い取ったのかが争点になる。

裁判を検証する祭に、注意しなければならないのは、新聞社が「『押し紙』は1部も存在しません」と主張した場合、かならずしもそれが「積み紙」も存在しないことを意味するものではないという点である。

現に新潮(+黒薮)VS読売の裁判では、販売店側から読売に対して、「積み紙」を謝罪する顛末書や始末書が提出されている。読売はこれらの書面を示すことで、自分たちがYCに「押し紙」をしていないことを立証しようとしたのである。つまり新潮社が主張した「押し紙」の中身が、実は「積み紙」であると主張したのである。

そしてそれに成功して勝訴した。以下、YC店主から読売へ送られた顛末書と始末書を紹介しよう。

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※? 私はYC◆◆で架空読者を作り、読売新聞東京本社に虚偽の部数を注文していました。その理由と、発覚の経緯は以下の通りです。

 今年2月15日、週刊新潮の記者から、定数と実配数を書いた一覧などを写した写真を示され、「押し紙」ではないかとの質問を受けました。(略)

※ 永年にわたり本社部数報告において、朝刊の部数を虚偽報告していた事に対し、心よりお詫び申し上げます。(略)これからは実配部数増による年間目標達成に全力を傾け努力することをお約束します。  今後の処分については読売新聞東京本社に一任します。誠に申し訳ありませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  繰り返しになるが、「押し紙」は1部も存在しないという新聞社の主張は、必ずしも「積み紙」も存在しないということではない。

わたしが今後、本サイトで指摘していくのは、「押し紙」と「積み紙」の両方・・・すなわち偽装部数の問題である。