1. 新聞ジャーナリズムの骨抜き策としての消費税の軽減税率

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2013年01月21日 (月曜日)

新聞ジャーナリズムの骨抜き策としての消費税の軽減税率

新聞を消費税の軽減税率の対象にするか否かをめぐり、議論が沸騰している。 意外に気付かないがこの問題は安倍内閣によるメディア対策の側面を孕んでいる可能性が高い。

新聞が軽減税率の対象外になれば、全国の新聞販売店に積み上げれられている「押し紙」(偽装部数)に消費税が課せられ、大変なことになる。販売網が崩壊しかねない状況が生まれる。それを逆手に取れば、政権党は簡単に新聞ジャーナリズムを骨抜きにできる。

高市早苗政調会長は、軽減税率について次のように述べている。

 自民党の高市早苗政調会長は17日夜のBS11番組で、消費増税に伴う低所得者対策として生活必需品の税率を抑える軽減税率導入について「結論を出す時期は今ではない」と述べ、24日にもまとめる13年度与党税制改正大綱では、結論を先送りすべきだとの考えを示した。 ?  

公明党は来年4月に税率を8%に引き上げる段階での導入を主張し、大綱への明記を求めている。高市氏は「混乱を招かないためには準備が相当必要だ」と語り、導入は10%段階としたい考えを示した。(毎日新聞)

結論を先送りすれば、その間、新聞は政権党の批判を控えざるを得ない。政権党が「報復」として、軽減税率という特権をはく奪する恐れがあるからだ。

まったく同じ手口のメディアコントロールが過去にもあった。

◆再販問題を新聞 ?

再販撤廃の議論が本格的に始まったのは、1990年代の半ばだった。この時は、再販撤廃は避けられないというのが大方の見方だった。そこで新聞関係者は、政治家の協力を得て再販を守る大運動を展開した。

1998年3月、公取委は、再販問題の結論を先送りする決定を下した。その翌年、小渕(当時の新聞販売懇話会会長)内閣の下で、新ガイドライン、住民基本台帳法、通信傍受法、国旗・国歌法など、軍事大国化を進めるためのとんでもない法案が次々と成立した。骨抜きにされていた新聞ジャーナリズムは、何の抵抗もしなかった。

次に公取委が再販問題についての結論を出したのは、2001年3月だった。内容は、「競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべきである」としながらも、「廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況」なので、「当面同制度を存置することが相当」と結論ずけたのである。

さらに2006年にも再販(厳密には、新聞特殊指定)の撤廃が議論され、この時は、高市早苗、山本一太らが、公取委から特殊指定を扱う権限をはく奪する内容の議員立法を上段にふりかざして、新聞社を救済した経緯がある。

高市、山本には、新聞業界から政治献金が贈られている。

結局、公権力は新聞社に対して再販制度の撤廃をちらつかせながらも、それを維持する巧みな政策を続けてきたのである。再販制度が新聞社経営のアキレス腱であることを知っているからだ。

まして「押し紙」が存在する状況下では、再販を撤廃された時に新聞社が受ける打撃は計り知れない。再販が撤廃されたら、「押し紙」も出来なくなる可能性が高いからだ。

◆軽減税率とメディア対策

新聞に対する消費税の軽減税率問題でも、まったく同じ手口のメディアコントロールが採用される可能性が高い。おそらく特例として、安倍内閣は新聞に対する軽減税率を認め、同時にいつでもこの特権をはく奪できる状況を準備するだろう。

こうして新聞ジャーナリズムは言うまでもなく、出版業界全体を骨抜きにして、憲法9条の改正へと暴走するのではないか?

改めて言うまでもなく、「押し紙」(偽装部数)という新聞社の汚点を放置しておかなければ、このような巧みなメディア戦略を取ることはできない。