2014年03月06日 (木曜日)
新聞協会が内閣府で「広告営業」 広告予算44億から65億円へ 財務省公共広告にみる「謎」の実態
業界紙の報道によると、日本新聞協会広告委員会の手塚泰彦委員長は、昨年の12月、内閣府に対して「政府広報における新聞広告ご活用のお願い」と題する文書を手渡したという。「これは新年度予算で政府広報予算が増額される見通しとなったことから、改めて新聞広告の特性を説明し、利用拡大を求めた」ものである。
2014年度の広報予算は65億円。昨年度の44億円から大幅に増えている。これを機に手塚委員長が、大口広告主に対して広告営業を行ったのである。
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安倍政権の「メディア対策」は、安倍首相自身が渡邉恒雄氏をはじめとするマスコミ幹部と会食を重ねたり、NHKの経営委員にネオコンまがいの人物を抜擢するなど、露骨な姿勢が目につく。新聞に対する消費税の軽減税率をめぐる駆け引きや広報予算にもそれが反映している。
日本の新聞社は、発行部数が桁外れに多いので、新聞社のコントロールは世論誘導、あるいはメディア・コントロールにつながる。それゆえに安倍首相は、「メディア対策」を重視してきたのである。
しかし、マスコミが政府の「広報部」に変質すれば広告予算を増やし、逆に批判的な論調を強めれば広報予算を減らす意図が安倍内閣にあるとすれば、新聞の公共性には疑問符が付く。
◇版下制作、2件で2300万円
意外に知られていないが公共広告は、新聞社や広告代理店にとっては、格好の「ビジネス」にほかならない。不透明な取引がまかり通ることがままあるからだ。不正を取り締まる側を、不正に巻き込めば、摘発される危険性は限りなくゼロに近くなる。
たとえば昨年の6月27日に、MEDIA KOKUSYOに掲載した記事について、 市民オンブズマンの関係者から指摘があった次の例は、「公共広告」をめぐるビジネスのずさんな実態を考える上で、おおいに参考になる。
この記事は、「財務省の公共広告 1件4億円 版下製作は2件で2300万円 支払先は黒塗り」というタイトル。内容は、財務省が全国の45紙に「5段1/2」(ただし、朝日、読売、日経は5段)のスペースの公共広告を掲載し、広告代理店に対して約4億円を出費したというものである。
広告の掲載料が相対的に高いことに加えて、以下で比較するように版下制作費などに、相場を大幅に上回る額が出費されている。
●財務省の上記広告(タイトル不明)
サイズ:「5段1/2」(ただし、朝日、読売、日経は5段)
価格:2361万円(版下件数2)
製作社:不明
年度:2008年度
●比較1・タイトル:「中小企業資金繰り対策」?
サイズ: 7段
価格 :207万6900円(版下件数1)
製作社:毎日広告社
年度:2010年度
●比較2・タイトル:「臓器移植」
サイズ: 7段
価格 :137万4450円(版下件数1) ?
製作社:博報堂 ? 年度:2010年度
●比較3・タイトル:「特別慰労品贈呈事業」
サイズ: 半5段
価格 :136万541円(版下件数1)
製作社:東急エージェンシー
年度:2007年度
◇請求先と日付が記されてない請求書
市民オンブズマンの関係者から指摘があったのは、裏付け資料として公表した広告代理店から財務省に宛てた請求書の不備である。まず、請求書のPDFファイルをご覧いただきたい。
「財務省」と細字で記されているのは、便宜上、わたしが記したものである。
PDFファイルを見れば、明らかなように、この請求書には、請求先の名前と日付がない。つまりどの広告代理店が、不当に高額なこの広告制作を入札し、何月何日に請求書を送付したのか、公開できる記録として残っていないことになる。
こうしたずさんな経理処理が、4億円規模の「ビジネス」で行われ、しかも、財務省という国家の機関が関わっているのだ。
日本の新聞報道を読み解く時は、ジャーナリズムの裏舞台で何が進行しているかを考慮する必要がある。その上で新聞が報じている内容の信ぴょう性を検証する必要があるのでは。