1. 内閣府の公共広告の価格は民間企業の3倍、大手広告代理店との癒着が鮮明、内部資料で判明、

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内閣府の公共広告の価格は民間企業の3倍、大手広告代理店との癒着が鮮明、内部資料で判明、

 地方自治体の予算の使い方に疑義がある場合、地元住民は訴訟という手段で抗議することができるが、国家予算の疑義については、訴訟を提起する制度がないことを、読者はご存じだろうか。筆者は2016年から17年にかけて、中央省庁の予算の使い方を徹底取材し、その中でずさんな出費の例を数多く見つけた。

 そこで裁判を起こすことを視野に入れて弁護士に相談したところ、そのような制度は日本にはないことを知った。国家予算の使い方を司法で正すことはできないのだ。

 次の記事は、内閣府から大手広告代理店に対して実施された疑惑の出費の一例を紹介したものである。2016年06月09日 の記事の再録だ。

 

日本のメディアの2大汚点は、新聞部数の「偽装」と、テレビ視聴率の「偽装」である。

新聞とテレビは、日本においては系列関係にある。彼らの共通した収入源のひとつに公的機関からの広告費、CM費、それに企画費などがある。その額は膨大になる。庶民感覚からすれば、公的資金の「ぼったくり」と評価されてもやむを得ない。

このようなビジネスを仲介しているのが大手広告代理店である。

筆者の手元に、2通の内部資料がある。読売新聞社が民間企業A社に提示した広告提案書と、株式会社読売エージェンシーが発行した公共広告の請求書である。

結論を先に言えば、両者の書類にはいずれも紙面広告の価格が提示され、しかも、両者間に凄まじい価格差がみられる。

 

◇民間企業A社の広告価格は1300万円

まず、民間企業A社が2011年6月に読売新聞東京本社から打診された広告の提案書を紹介しょう。この企画は、朝刊と夕刊に広告をそれぞれ4回掲載することを提案したものである。広告のスペースは選択できる。朝刊の場合、最大で全面広告(15段)にすることが可能だ。一方、夕刊は最大で10段のスペースである。

広告価格は、朝刊と夕刊が連動していたり、あるいはシリーズ広告にすることで提案価格に幅が生じる傾向があることを若干考慮する必要があるけれど、単純に朝刊の全面広告を1回掲載した場合の試算価格は、1269万6000円である。これに若干の「企画運営費」が請求されるので、おおむね1300万円ぐらいの価格になる。

ただし、既に述べたように、この広告企画は、4回シリーズ、朝刊と夕刊の連動であるから価格幅がある。そうはいいながらも、筆者が取材した限りでは、全国紙の民間企業向け全面広告の相場は500万円から1000万円前後という答えが多いので、上記の試算に大きな間違いはないだろう。

 

◇内閣府の広告価格は約3200万円

一方、公共機関が読売新聞の朝刊に全面広告を掲載する場合は、どの程度の価格が設定されるのだろうか。これを知る恰好の資料が筆者の手元にある。

2011年3月11日に掲載された内閣府の「自殺対策」の全面広告である。
読売エージェンシーが内閣府に送付した請求書によると、この広告の掲載価格は、3194万5500円(消費税を含まない)となっている。

民間企業Aに対して提案している価格の3倍近い価格が請求対象になり、実際に支払われているのである。公共広告が新聞社や広告代理店の大きな収入源になっている実態があるのだ。

ちなみに読売に「自殺対策」の広告が掲載されたのとほぼ同じ時期、3月1日に朝日新聞にはやはり内閣府の「消費税および地方消費税」をテーマとする全面広告が掲載されてる。

価格は3092万8275円である。さらに毎日新聞にも、「消費税および地方消費税」の全面広告が掲載されており、こちらの価格は1921万5000円である。

民間企業A社に提示された価格、約1300万円が適正だとすれば、公的機関に対して提示される価格は、極めて高額だと言わなければならない。しかも、役所の側はおそらく慎重な検討も経ずに承認しているのである。

こうして公共機関がメディアの大きな収入源になってしまったのである。