1. スーパーシティ法が成立、5Gによる人体影響を無視して見切り発車

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2020年05月30日 (土曜日)

スーパーシティ法が成立、5Gによる人体影響を無視して見切り発車

27日に参議院で可決されたスーパーシティ法をご存じだろうか。これは5Gの普及に連動して国家戦略特区を設け、そこで5Gの「実験」を可能にする法律である。厳密に言えば、国家戦略特区法の改正である。

この法案に賛成したのは、自民、公明、維新の保守3党である。

スーパーシティ法を必要とする構想は、日本のテクノロジーを使って、理想的な都市を建設して、現在の日本が直面している過疎や少子化などの問題を解決しようというものである。5Gの技術と連動しているのが大きな特徴だ。その中身は、「移動、物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全」などの領域に及ぶ。

そのための実験都市を設置を可能にすることがこの法律の目的である。


5Gを導入する立場の企業にとっては、今後の戦略の新しい一歩を踏み出したと言っても過言ではない。しかし、最大の問題は、5Gで使われるマイクロ波やミリ波が実験都市に指定された地域の住民に深刻な人体影響を及ぼしかねないことである。

マイクロ波による人体影響は、もはや否定できなくなっている。2018年には、アメリカの国立環境衛生科学研究所のNTP(米国国家毒性プログラム)が、マイクロ波の発癌性を示す「明らかな証拠」があるとする最終報告をまとめている。同研究所は、現在は癌が発生するメカニズムの解明に入っている。

それにもかかわらず、たとえばKDDIは、この結果を認めていない。認めないまま基地局の設置を進めている。

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電磁波による人体影響が指摘されるようになったのは、1980年代に入ってからである。最初は、米国で超低周波と小児白血病の関係が指摘された。それからマイクロ波など周波数が比較的高い電磁波の人体影響も指摘されるようになった。

かつて電磁波(放射線)の仲間のうち、原発のガンマ線やレントゲンのX線など周波数が極端に高いものについては、人体影響があるとされていたが、現在では周波数とはかかわりなく、人体影響があるとする考えが主流を占めている。こうした科学的見解の変化を象徴しているのが、アメリカの国立環境衛生科学研究所の最終報告にほかならない。

日本でも同じ流れがあり、たとえば電磁波研究の第一人者である荻野晃也氏は、『携帯電話基地局の真実』の中で次のように述べている。

これらの電磁波のうちで、原爆の被爆者・被曝者などの研究から、「電離放射線(黒薮注:電離放射線とは、ガンマ線やX線を指す。詳しくは後述する。)が特に発癌の危険性が高い」と思われてきたのです。ところが、最近の研究の進展で「電磁波全体が危険な可能性」があり、「共通した遺伝的毒性を示す」と考えられるようになってきたのが、現在の「電磁波問題」の本質だといってよいでしょう。

また、北里大学の名誉教授・宮田幹夫氏らがまとめた『生体と電磁波』にも、次のような記述がある。

エックス線もガンマ線も電磁波である。人工の電磁波に比べてエネルギーが非常に大きいため、物質への浸透性が強く、生体へのダメージも非常に大きい。しかし、極低周波から超高周波まで、人工電磁波も生体へのダメージは大きく、身近にある場合は障害を生じる。放射線と電磁波はメカニズムが異なるが、同じように体内にフリーラジカルを生産し、DNAを破損してがんの原因を作る点では、同じような環境汚染源としてみることができる。

が、5Gを推進しようとしている勢力は、これらの研究結果がなかったことにして、計画を前へ押し進めようとしているのである。事実を「なかったことにする」行為は、このところ何の罪悪感もなく行われることが増えている。厚顔とはこのことである。

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人体の不調や病気の発生には、必ず外的な原因がある。神や天など実在しないものの力で生み出されている祟(たたり)りではない。病気の起源には、客観的な外的要因があるのだ。Covid-19による新型肺炎も例外ではない。環境の変化を無視して語ることはできない。

戦後、最も大きな環境の変化は、化学物質による汚染と、電磁波による汚染である。米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)が登録する新しい化学物質の数は、1日で優に1万件を超えるという。もちろん、そのすべてが有害なわけではないが、化学物質や電磁波による複合汚染は、解明されていない部分の方がはるかに多いのである。

1990年代から電磁波利用が急速に進んでいるのは周知の事実である。こうした環境の中で、病因のリスクを考察すべきだろう。

たとえば子宮頸癌は、ヒト・パピローマ・ウィルスに感染した状態で、外的な要因が加わった時に、発症すると言われている。

ヒト・パピローマ・ウィルスに感染した人全員が必ず子宮頸癌になるわけではない。たとえば感染した状態で、ある環境因子にさらされてDNAがダメージを受けるなどの条件が重なった場合、発症のリスクが高くなるのだ。(『性感性症』、利部輝雄著、悠飛社)

携帯電話の普及に伴って癌が増えている原因を考える上に、示唆に富む記述である。

電磁波の危険性が指摘されているにもかかわず企業が5Gの開発を進めるのは、それが巨大ビジネスに結び付くからにほかならない。推進派の人々は経済上の利益以外は何も考えていないのである。他のことは枝葉末節にほかならない。

スーパーシティ構想もそういう性質のものなのだ。