YC店主が「押し紙」を断った決定的な証拠、販売店主だけではなく販売局担当員にも強いプレッシャー(2)
読者は、以下に引用するショートメールが何を意味するのか推測できるだろうか。読売新聞大阪本社の担当員が、あるYC店主に送ったものである。店舗で過剰になっている残紙を整理して、正常な取引に改めないのであれば、残紙の減部数を求める内容証明を送付すると店主が申し入れた翌日に、担当員が店主に対して送付したショートメールである。
「元気やな!いきなり整理できないので、次回の訪店で話ししましょう。お互いの妥協策を考えましょう。俺をとばしたいなら、そうしますか。」(平成30年4月3日:9時54分)
「書面を出したら、昨日言ったとおり、全て担当員のせいになります」(4月3日、10時1分)
「俺をバックアップしてくれる気持ちがあるなら、何か妥協策を考えないかい?逃げてるんではなく、ほんまに体調悪いんで次回訪店で話しょ。考えさせて」(4月3日、10時14分)
「明日から会社でるので、部長と相談するな。少し大人しくしてな。おれに一任しておくれ。」
ここで紹介したショートメールはほんの一部だが、これだけでもYC店主が残紙を減らすように申し入れていた証拠である。
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18日付けのメディア黒書で既報したように、喜田村洋一・自由人権協会代表理事ら読売弁護団は、福山市のYCが起こした「押し紙」裁判〈令和2年(ワ)第7369号〉の中で、読売新聞社ではなく、YC側に新聞の搬入部数(注文部数)を決定する権利があることを認めた。答弁書の中の次の記述である。再度引用しておこう。
「新聞販売店は独立した自営業者であり、自店の経営に必要な部数を自由に決定する権利・自由があることは認める」
この記述を業界用語で表現すれば、新聞部数の「自由増減」の権利である。コンビニ経営など普通の商取引であれば、店主が仕入品の数量を決定することが常識となっている。ところが新聞社の中には、新聞の卸元である新聞社が新聞の搬入部数を決め、しかも、長期に渡って同じ部数に固定するケース(定数制度)がままある。
店主が搬入部数を減らすように申し入れているのにもかかわらず「販売業者からの減紙の申し出に応じない行為」は、独禁法で禁止されている。
昔から読売が「自由増減」を認めているとする見解もあるが、改めて「押し紙」裁判の場で、この権利が再確認されたのである。従って新聞社が望む一定の営業成績の維持という観点から、販売店サイドが相応の部数負担をすべきか否かという論点が不要になり、裁判が迅速に進む可能性が高い。販売店が残紙を断ったかどうかだけが、争点になりそうだ。
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冒頭で紹介した元YC店主のケースでも、長期に渡る部数の固定が行われていた。読売新聞社は、2017年(平成29年)1月から、2018年6月までの1年半の期間、新聞の搬入部数を2280部に固定したのである。
従って、ショートメールが示すように、このロックされた期間に原告の元YC店主が搬入部数(注文部数)を減らすように申し入れ、それに応じなかったわけだから、店主が負担していた残紙は、「押し紙」ということになる。
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なお、冒頭のショートメールからは、YC店主だけではなく担当員にも新聞部数を維持するための強いプレッシャーがかかっていることが読み取れる。「俺をとばしたいなら、そうしますか」とか、「書面を出したら、昨日言ったとおり、全て担当員のせいになります」と告白している。
残紙の被害を受けているのは、販売店主だけではない。担当員も苦しめられているようだ。
人権派弁護士の旗手であり、自由人権協会で代表理事を務める読売の喜田村洋一弁護士は、このような労働現場の実態をどのように考えるだろうか?
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読売新聞大阪本社の販売局は、わたしの電話取材に対して、改めてYCに「自由増減」の権利があることを認めた。また、ショートメールを送った担当員は、不在だったので、言い分がある場合は、わたしに連絡するようにメッセージを残しておいた。現時点では、何の連絡もない。