1. 15日に控訴審、佐賀新聞「押し紙」裁判、一審原告が陳述書を提出、「営業には予備紙2%で十分」

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2020年09月14日 (月曜日)

15日に控訴審、佐賀新聞「押し紙」裁判、一審原告が陳述書を提出、「営業には予備紙2%で十分」

佐賀新聞の「押し紙」裁判の控訴審は、15日の13:30分から福岡高裁の1015号法廷で開かれる。これに先だって、一審原告の寺崎昭博さんは、10日、裁判所へ陳述書を提出した。

この陳述書は、佐賀新聞の販売局員の陳述内容と原審被告の控訴理由書に対する寺崎さんの反論である。その中で、寺崎さんは佐賀新聞による優越的地位の濫用がどのようなものであるかを具体的に述べている。「押し紙」の手口、新聞の供給部数と折込広告の関係、販売店に対する威圧的な指導、寺崎さん個人に対する誹謗中傷などの実態を取り上げている。

■寺崎陳述書全文

 

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特に注目すべき点は、原審判決が販売店に対する新聞の供給部数を佐賀新聞が決めていることを認定しながら、その一方で十分に踏み込まなかった新聞の供給部数と折込広告の関係について、寺崎さんみずからが説明していることだ。

折込広告の定数(供給される枚数)は、新聞の供給部数に一致させる基本原則がある。たとえば新聞の搬入部数が2000部の場合は、折込定数も2000部に設定するのが従来の原則だった。従って「押し紙」にセットになっている折込広告は、配達されていないにもかかわらず料金だけは徴収される。それが実態とされてきた。

しかし、実際の折込広告の取り引き実態を確認すると、公共広告は例外として、民間企業の折込広告は、新聞の供給部数よりもはるかに少ない傾向が生まれている。

ところが佐賀地裁の1審判決はこの点を考慮せず一般論を採用して、単純に「押し紙」部数を基数として折込広告料金の水増し分を計算し、損害賠償額から控除している。供給部数と実配部数の差異を、折込広告水増しの温床となる「積み紙」と判断したのである。

これについて寺崎さんは、陳述書の中で説明している。それによると、佐賀新聞の販売店には、そもそも「積み紙」の概念がないという。

これは地方紙の販売店にはありがちなことである。と、いうのも地方都市では、折込広告の需要そのものがかなり少ないので、「積み紙」で販売店が利益を得ることは原則的にはあり得ないからだ。

折込広告の需要が多い都市部を拠点とする中央紙とは、事情が異なる。従って、地方紙は、「押し紙」率が相対的に低い。もっとも現在では、中央紙も供給部数に応じて折込広告の枚数が決められる状況にはない。折込広告の需要そのものが激減しているからだ。残紙が販売店に損害を与えているというのが、現在の普遍的な状況なのである。

 

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「押し紙」率は廃業時には最高で17%にもなっていた。部数にすると約500部である。しかし、予備紙は供給部数の2%で十分であるというのが、寺崎さんの主張である。これに関して、寺崎さんは次のように述べている。

1日に配達漏れ等と必要な部数の平均は多くて1~2部であり、それ以外の40部以上を営業紙として使用できます。

独禁法の新聞特殊指定に忠実な「押し紙」の定義は、販売店が必要としている部数(実配部数)に必要な予備紙を加えた部数をこえる新聞部数である。寺崎さんの販売店では、必要な予備紙は、供給部数の2%、40部程度だった。そして原審判決もその主張を認めたのである。

■「押し紙」一覧

ちなみに佐賀県に隣接する熊本県の熊本日々新聞は、予備紙率を供給部数の1.5%と決めている。これは社の方針である。熊本日々新聞は、「押し紙」がない数少ない新聞社のひとつである。

新聞社を相手にした裁判では、よく相手方に対する誹謗中傷が行われる。佐賀新聞は寺崎さんに対しても、高級車に乗っているとか、遊び人であるとか、裁判の争点とは関係もなければ、根拠もない主張をしている。これに対しては、寺崎氏は具体的にこれまで使用した車種を示すなどして、反論している。

 

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陳述書に記されていることは、多くの地方紙の実態でもある。その意味で、今後の多発が予想される「押し紙」裁判の争点になりうるポイントなのである。

 

■訴状

■1審原告控訴理由書

■佐賀新聞「押し紙」裁判に関する全記事

 

写真出典:Wikipedia