「押し紙」も「積み紙」も広告主にとっては、「折り込め詐欺」の温床に
上の写真は残紙である。しかし、この販売店に限って言えば、その責任の所在が販売店にあるのか、新聞社にあるのかは分からない。確実にいえることは、残紙の最大の被害者は広告主である点だ。
読者は、新聞の「押し紙」と「積み紙」の違いをご存じだろうか。
「押し紙」というのは、新聞社が販売店に対して仕入れを強制した新聞のことである。たとえば1000部しか配達していない販売店に、1500部を搬入して、卸代金を徴収すれば、500部が「押し紙」ということになる。独禁法の新聞特殊指定は、「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給する」行為を禁止している。
一方、「積み紙」というのは、新聞販売店が実配部数を超える部数を自主的に買い取った結果、残紙となった新聞のことである。なぜ、配達予定のない新聞を仕入れるのかといえば、折込広告の水増しでより多くの折込手数料を稼ぐためだ。
たとえば、新聞1部が生む折込定数料が月額で2000円、新聞1部の卸価格が1700円(これも月額)とする。そうすると残紙の卸代金を支払っても、新聞1部につき月額300円の利益があがる。
そこで販売店の側から、自主的に過剰な新聞を仕入れることがある。これが折込広告の水増し行為である。「折り込め詐欺」である。
ただ、好んで折込広告の水増しをする店主はほとんどいない。水増しが発覚した時に、広告のクライアントをすべて失うリスクがあるからだ。
「積み紙」も「押し紙」と同様に、新聞社から打診されて応じるケースが多いようだ。実態として新聞販売店は、新聞社の下部組織であるから、そうせざるを得ない。両者の階層は歴然としていて、夜、新聞人から料亭に呼び出された販売店夫妻が、魚の残飯を食べさせらた挿話もある。
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「押し紙」裁判とは、「押し紙」によって被った損害の賠償を求める裁判である。争点は、必ず販売店にある残紙は「押し紙」か、それとも「積み紙」かという点である。販売店は「押し紙」だと主張して、新聞社は「積み紙」だと主張する。残紙そのものの存在は、新聞社も認めざるを得ない場合が多い。帳簿類に、新聞の搬入部数と、発証数(新聞購読者に発行した領収書)が記録されているからだ。
「押し紙」裁判の勝率は、新聞社の方が圧倒的に高い。販売店が余分な新聞をはっきりと断った証拠がないからだ。
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公正取引委員会は、「押し紙」問題を放置している。
本来は、「押し紙」だけではなく、公的な機関が「積み紙」も取り締まる必要がある。
残紙が「押し紙」であろうが、「積み紙」であろうが、広告主にとっては「折り込め詐欺」の温床になるからだ。が、実際は「押し紙」も「積み紙」も放置されたままになっている。
【写真・冒頭】販売店の残紙。(東京江戸川区)
【写真・文中】水増しされ廃棄される東京江戸川区の広報紙