佐賀新聞の「押し紙」裁判、原告が証人尋問でABC部数の問題を追及
11月1日に佐賀地裁で行われた佐賀新聞社を被告とする「押し紙」裁判の証人尋問が行われた。その中で、佐賀新聞の元販売局員が、販売店主らの集まりで講演し、予備紙数を減らす方法を教示していたことが明らかになった。原告の江上武幸弁護士による追及で明らかになった。ただ、その目的について元販売局員は明確な回答を避けた。
予備紙を減らす方法とは、残紙を有代紙のように見せかける方法を意味している可能性が高い。つまり「押し紙」を隠して、ABC考査で不正を指摘される事態を回避することが目的だと思われる。
講演の内容は文書としても残っている。詳細については、尋問調書を閲覧したうえで論評するが、ABC部数の問題が法廷へ持ち込まれたのである。
1日の尋問には、40人を超える人々が傍聴に訪れた。この中には、鹿児島県の南日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の原告店主らの姿もあった。
◆ABC部数の操作に言及
佐賀新聞の「押し紙」裁判は、地方紙が舞台ということもあってあまり注目されていないが、特徴的な点がいくつかある。
まず、ABC部数の操作により広告主が被害を受けている問題に踏み込んでいる点である。尋問の中でも、それにより誰が被害を受けているのかを原告が追及した。
さらに「押し紙」の定義についても、原告が新しい主張を提示している。従来は、新聞社が販売店に押し付けた新聞という定義になっていたが、新聞特殊指定の厳密な定義は、実配部数に予備紙を加えた部数を超える部数を「押し紙」と定義している。従って新聞社が強制した部数か否かは関係がない。
【参考記事】佐賀新聞の「押し紙」裁判、江上武幸弁護士ら原告弁護団が訴状を修正・再提出、「押し紙」の定義に新見解を示す
裁判は、年内に原告・被告の双方から最終準備書面が提出され結審する。判決は来年の春になる見込みだ。「押し紙」裁判では、政治判断が下されることがあり、監視が必要だ。
◆「チラシの水増し詐欺」
「押し紙」問題を報じる際、よく指摘されるのが、「押し紙」という言葉である。分かりにくいという指摘が多い。業界内部だけで使われている専門用語であるからだ。
「押し紙」問題を前面に出すよりも、むしろ折込広告の水増し問題を前面に出すほうが分かりやすいかも知れない。「押し紙」は新聞業界内部の問題であり、折込広告の水増しは業界の枠を超えて、不特定多数の広告主を巻き込む問題であるからだ。
「押し紙」よりも、「チラシの水増し詐欺」を強調した方が問題の本質が見えやすい。