経営難と言われている新聞社が倒産しない理由、背景に「折り込め詐欺」による収入を間接徴収する構図
10年ほど前から、「新聞没落」とか、「新聞終焉」とか、「新聞凋落」といったことが言われるようになった。
「新聞社が倒産するのは時間の問題」
「最初の倒産は、産経新聞か毎日新聞か?」
「次世代のメディアはどんなかたちになるのか?」
こうした話題が断続的にメディアを賑わしてきた。
直接のきっかけは、2007年に福岡高裁が真村訴訟で、読売新聞の「押し紙」政策を認定したことである。店主がPC上の読者名簿に「26区」と呼ばれる架空の配達地区を設け、そこで新聞を配達しているかのように装ってABC部数を増やす手口を強要されていたことが認定された。
読売の喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)らが、抗弁したが、この判決は、2007年12月に最高裁で確定した。
【参考記事】読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由
この時代、毎日新聞をはじめ「押し紙」率が50%を超える販売店もめずらしくなくなっていた。
が、それでも新聞社は、経営を維持してきたのである。なぜか?最近、その答えが分かった。
◆折込広告の手数料が新聞社へ流れ込む
メディア黒書で繰り返し述べてきたように、新聞販売店は「押し紙」があっても、それによる損害を相殺できる量の折込広告があれば、経営を維持できる。新聞社も、「押し紙」の量を減らさなければ、販売収入(中身は折込広告の手数料)を維持できる。
「押し紙」から生まれる折込広告の手数料が、新聞の卸代金というかたちで、新聞社に流れ込む構図があるのだ。この構図を維持する限り、折込広告の需要が減らなければ、新聞社は破綻しない。言葉をかえると、新聞社は新聞販売店にやらせている折込広告の水増しによって、自分の命を繋いでいるのである。
販売店と新聞社の共犯という実態が生まれている。悪いのは無論、新聞社の方である。
◆搬入部数3500部に対して実配は1250部
最近、メディア黒書へ寄せられた「押し紙」データを紹介しよう。都内の中央紙の店で、「搬入部数」が3500部、実配部数が約1250部である。「押し紙」率64%である。ちなみにこの店は、かなり前から「押し紙」が多かった毎日新聞のデータではない。
「ほとんどの店で折込広告を水増ししています」
販売関係者の証言だ。折込広告と「押し紙」を回収している業者から聞いたという。公共広告も多量に混じっているらしい。
折込広告の水増しが当たり前になっているから、新聞社はなんとか倒産を免れてきたの
である。逆説的に言えば、「折り込め詐欺」にメスが入れば、販売網は崩壊する。新聞発行本社も大規模なリストラを迫れる。
【参考記事】『広報えどがわ』の水増し問題、江戸川区新聞販売同業組合が区に対してABC部数を超える部数を発注させていた決定的証拠