1. 『広報えどがわ』の水増し問題、江戸川区新聞販売同業組合が区に対してABC部数を超える部数を発注させていた決定的証拠

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『広報えどがわ』の水増し問題、江戸川区新聞販売同業組合が区に対してABC部数を超える部数を発注させていた決定的証拠

江戸川区の広報紙の配布を請け負った江戸川区新聞販売同業組合(以下、組合)が、媒体の必要枚数を偽って発注させていた決定的な証拠が明らかになった。折込広告を水増しして、過剰になった媒体を廃棄していた事実が浮上した。

 

【不正が発覚した経緯】
東京都江戸川区は、組合に依頼して、『広報えどがわ』を配布してきた。ところがメディア黒書に対する公益通報により、同媒体が配達されずに大量に廃棄されている疑惑が浮上した。

そこで筆者は真相を確認するために、2つの資料を入手した。まず、江戸川区に対して、『広報えどがわ』の新聞折込を発注するに際して、組合が江戸川区に提示した同媒体の必要枚数を裏付ける資料である。情報公開請求の結果、次の枚数が明らかになった。(右上表参照)

30年度(2018年):166,300枚
31年度(2019年):144,700枚

 

次に筆者は、日本ABC協会が調査して、4月と10月に新聞各社へ通知している新聞発行部数を確認した。その結果、江戸川区の部数は、次のようになっていた。()内は、組合が区に提示した媒体の必要枚数との差異である。ABC部数には、「押し紙」などが含まれているが、たとえ「押し紙」が皆無であっても、水増し状態になっている。

2018年4月:151,977部  (+14,323)

■裏付け資料

2018年10月:145,470部(+20,830)

■裏付け資料

2019年4月:134,303部(+10,397)

■裏付け資料

 

周知のように新聞業界では、「押し紙」や「積み紙」が水面下の問題になってきた。それも中途半端な量ではない。搬入される新聞の4割も5割もが、過剰になっているケースもある。毎日新聞で7割を超えた事例もある。

  ※注:「積み紙」→新聞販売店が折込広告の水増しを目的として、実際に配達している新聞部数を超える新聞を発注した結果、過剰になった新聞部数。

江戸川区でも、「押し紙」、あるいは「積み紙」が発覚している。たとえば右の写真である。

組合は新聞の購読者数を超える部数の『広報えどがわ』を発注させていたのである。

なお、折込媒体をPRに活用している企業の大半は、残紙問題と折込広告の水増し問題を把握しているので、発注の際にABC部数よりも20%から30%少ない枚数を発注する。それが原因で新聞販売店の経営が圧迫されている実態がある。

 

【予備枚数か?】
ABC部数を超えて発注させた理由として、『広報えどがわ』の破損に備えて、予備枚数をプラスしたとも考え得るが、新聞販売店に残紙があることは周知の事実になっている。

 

【広報紙を拡財に使用】

江戸川区の話によると、組合側は、『広報えどがわ』を新聞拡販のための「景品として使う」と話していたという。それが水増しの理由だと説明する可能性もある。しかし、税金で制作された「商品」を私的な営業に利用することが認められるはずがない。

 

【公序良俗違反で契約は無効】
『広報えどがわ』の配布に際して、区と組合は、取引契約を交わしている。それに基づいて折込手数料が請求されてきた。

民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と定義している。「公共広告」の廃棄や「押し紙」・「積み紙」が公序良俗に違反することは論を待たない。

従って契約は無効ということになり、組合は過去にさかのぼって区から徴収した折込手数料を返済しなければならない。

 

【公益通報者に対する弾圧】
この事件が発覚したもともとの原因は、日本新聞販売協会の元会長(現、相談役、江戸川区で新聞販売店と広告代理店の経営)の國吉延男氏が公益通報者(國吉氏は名誉毀損を主張)を割り出すために、ウエブサイトの管理会社KDDIを相手に裁判を起こしたことである。國吉氏が勝訴したことから、公益通報者を捜す工作がはじまったのである。

この裁判については、東京地裁の閲覧室で資料を閲覧した上で、読者にお伝えする。國吉氏の弁護士は、公益通報者に対して刑事告訴などをほのめかしている。現在、筆者は懲戒請求を検討中だ。

余談になるが、こうした新聞業界の実態を前に、新聞に対する軽減税率の適用は廃止すべきではないか?