1. 新聞社の闇-「押し紙」問題の変遷① 1977年の全国平均「押し紙」率は8・3%、日本新聞販売協会の調査

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2015年01月29日 (木曜日)

新聞社の闇-「押し紙」問題の変遷① 1977年の全国平均「押し紙」率は8・3%、日本新聞販売協会の調査

新聞業界がかかえる最大の問題は、「押し紙」である。「押し紙」とは、配達部数を超えて新聞社が販売店に搬入する新聞のことである。たとえば2000部しか配達先がないのに、3000部を搬入すれば、差異の1000部が「押し紙」である。この1000部についても、販売店は新聞の原価を支払わなければならない。

かくて「押し売り」→「押し紙」となる。

「押し紙」問題は、どのように表面化してきたのか、概略を紹介しよう。

日本で最初に「押し紙」が社会問題となったのは、1977年だった。この年、新聞販売店の同業組合である日本新聞販売協会(日販協)が、販売店を対象として、アンケートのかたちで残紙(実質的に「押し紙」を意味する)調査を実施した。

その結果、1店あたり平均して搬入部数の8・3%が「押し紙」であることが判明した。これは搬入部数が1000部の店であれば、83部が「押し紙」であることを意味する。

◇読売の北田資料

1980年代に入って、新聞の商取引に関する諸問題が国会で取り上げられるようになった。1980年から85年の時期に、共産、公明、社会の3党が計15回の国会質問を行った。

このうち1982年3月8日には、共産党の瀬崎博義議員が、読売新聞・鶴舞直売所(北田敬一店主)の「押し紙」を取り上げた。質問の議事録によると、1979年1月の部数内訳は、次のようになっている。

搬入部数:1095部
実配部数: 680部
「押し紙」: 415部

注:なお、読売の宮本友丘副社長は、読売は販売店に対してこれまで一度も新聞の買い取りを強制したことはないと話している。)

5年間にわたる国会での追及にもかかわらず、新聞社が「押し紙」政策を改めることはなかった。その後、「押し紙」問題は、水面下へ隠れてしまう。

◇北國新聞事件

1997年になって、公正取引委員会は、石川県の北國新聞に対して、「押し紙」の排除勧告を発令した。独占禁止法第19条「不公正な取引方法の禁止」の適用である。勧告は次のような趣旨だった。

北國新聞は朝刊の総部数を30万部にするために増紙計画を作成して、3万部を新たに印刷するようになった。その3万部を一方的に販売店に搬入した。
さらに同文書は「押し紙」問題が北國新聞社だけに限定されたものではないことを示唆している。次の記述である。

また、当該違反被疑事件の審査過程において、他の新聞発行業者においても取引先新聞販売業者に対し『注文部数』を超えて新聞を提供していることをうかがわせる情報に接したことから、新聞発行本社の団体である社団法人・日本新聞協会に対し、各新聞発行業者において、取引先新聞販売業者との取引部数の決定方法について自己点検を行うとともに、取引先新聞販売業者に対して独占禁止法違反行為を行うことがないよう、本件勧告の趣旨の周知徹底を図ることを要請した。

この時期に北國新聞社の5人の店主が、発行本社を相手に「押し紙」裁判を起こしている。

◇販売店員からの内部告発

2000年代に入って再び「押し紙」問題がクローズアップされてくる。
ある時、わたしは栃木県の新聞販売店で働いていた男性から内部告発を受けた。自分の職場には、約4000部の新聞が搬入されるが、このうちの2000部が「押し紙」になっているという。

この話を聞いたとき、わたしは「そんなことはあり得ない」と思って取材すらしなかった。ガセネタとして処理した。ところがそれから間もなく、この内部告発がまんざら嘘ではなかったと考えるようになった。

その引き金となったのは、産経新聞・四条畷販売所(大阪府)の元店主が2002年に起こした「押し紙」裁判だった。裁判の資料を見せてもらったところ、約5000部が搬入され、このうち2000部から3000部が常時、「押し紙」となっていたことが判明したのである。

これを機に、わたしは次々と大規模な「押し紙」の実態の内部告発を受けるようになった。搬入部数の40%が「押し紙」、50%が「押し紙」という情報にも驚かなくなった。特に毎日新聞の「押し紙」が凄まじかった。

◇「押し紙」世界一

2004年、わたしは毎日新聞の内部資料「朝刊 発証数の推移」と題する資料を入手した。それによると全国にある販売店に搬入される新聞の部数は、約395万部。これに対して読者に発行される領収書の枚数は、約251万枚だった。差異の約144万部が「押し紙」という計算になる。(2002年10月時点での数字)。

その後、わたしは毎日新聞・蛍が池販売所(大阪)と豊中販売所の経営に関する詳細な資料を元店主から入手した。その結果、これら2店では、搬入された新聞の60%から70%が「押し紙」になっていたことが判明した。

たとえば次に示すのは、豊中販売所における2007年6月時点の部数内訳である。

【豊中販売所】
搬入部数:1780部
実配部数: 453部
「押し紙」:1327部

さらに毎日新聞の場合、箕面販売所(大阪)や関町販売所(東京)、新小岩北販売所などでも、「押し紙」が発覚している。手短に数字を紹介しよう。

【箕面販売所】(2005年1月)
搬入部数:1510部
実配部数: 733部
「押し紙」: 777部

現在も、「押し紙」回収を専門とした業種が産業として成立している事実から察して、同じような状況にある可能性が極めて高い。

「押し紙」は、新聞社にどのようなメリットをもたらすのだろうか?(続)