1. 森裕子議員に対する刑事告発の不起訴に関して、新潟地検・小島健太検察官から回答、白紙の理由書を正当化

「森裕子VS志岐武彦」の裁判に関連する記事

2018年03月07日 (水曜日)

森裕子議員に対する刑事告発の不起訴に関して、新潟地検・小島健太検察官から回答、白紙の理由書を正当化

メディア黒書の2月26日付け記事で掲載した2人の検察官に対する質問状に対する回答期限が6日で終了した。新潟地検・小島健太検察官からは、電話で回答があったが、奈良地検・皆川剛二検察官からは回答がなかった。

新潟地検・小島健太検察官と奈良地検・皆川剛二検察官に公開質問状、高市・森両議員の不起訴に関して

回答を紹介する前に手短に、経緯を説明しておこう。(経緯をご存じの読者は、「事件の経緯」の節をスキップして下さい)。

◇事件の経緯

発端は、筆者が森裕子議員の政治資金収支報告書を過去にさかのぼって精査していた際に、ガソリン代が異常に高い事実に気づいたことだった。そのことに関して市民運動家の志岐武彦氏に意見を聞くに際し、森氏の政治資金収支報告書を見せたところ、森氏が政治献金の還付金制度を利用して不正な還付金を受けた疑惑が浮上したのである。志岐氏は元旭化成の役員で、この方面の知識があった。

【還付金制度】
 議員が代表を務める地元の政党支部などへ有権者が政治献金を行った場合、税務署で所定の手続きをすれば、寄付した金額の30%が戻ってくる。たとえば1000万円を寄付すれば、300万円が戻ってくる。

 ただし、租税特別措置法の41条18・1は、還付金制度の例外事項として、「その寄付をした者に特別の利益が及ぶと認められるものを除く」と定めている。

森氏は、自分で自分の政党支部に寄付をして、還付金を受け取っていたわけだから、原資が1000万円(100%)と仮定すれば、それを1300万(130%)円に増やしたことになる。

これはマネーロンダリングにほかならない。実際、志岐氏が選挙管理委員会に対して情報公開を進め、森氏によるマネーロンダリングの事実を突き止めたのである。

そこで筆者らは、租税特別措置法の41条18・1を根拠として、森氏を新潟地検へ連名で刑事告発したのである。地検はこの告発を受理して、捜査を進めていた。

同じ手口を森氏以外の議員も使って政治資金を増やしている可能性がないかを志岐氏が調査したところ、高市早苗議員のマネーロンダリングが判明した。
そこでこのケースについても、筆者と志岐氏は連名で、高市議員を奈良地検へ刑事告発した。

このケースについても、奈良地検は告発を受理して捜査を始めた。

とろが不思議なことに、いずれのケースも不起訴の決定を下したのである。不起訴の理由がまったく分からないので、小島、皆川の2人の検察官に筆者が公開質問状を送付したのである。

質問は次の通りである。2つの質問状の内容は同じなので、小島検察官に対するものだけを紹介しておこう。

  2018年2月25日

新潟地方検察庁
検察官・小島健太様

質問者:黒薮哲哉(フリーランス・ライター)

 

公開質問状

 森裕子氏を被疑者とする還付金制度の悪用事件(2016年8月12日付け告発状、2016年12月13日付け告発状)の「処分通知書」(2018年2月19日付け)には、理由が記されていません。

 常識的に考えて、検察官である貴殿に作文の能力が全くないとは考えられません。通常、重要文書を白紙で提出すれば、民間企業であれば全く仕事をしなかったという評価になります。

1、そこでお尋ねします。貴殿はどのような調査をして、このような結論に至ったのでしょうか。

2、租税特別措置法の41条18・1は、還付金制度の例外事項として、「その寄付をした者に特別の利益が及ぶと認められるものを除く」と定めています。この例外事項の具体例を教えてください。

3、この決定は、貴殿が自分で下されたのか、それとも上司に相談の上で下されたのでしょうか。もし、後者であれば、処分を決めた人物の名前と所属を教えてください。 

  回答は、3月6日までに書面で御願いします。

◇白紙の理由書は許されない

以上が経緯である。
新潟地検の小島検察官は、口答(電話)で次のように回答した。

「1」については、理由書があるので送付する。「2」、「3」については、答えられない。

実際、数日後に「不起訴処分理由告知書」と題する公文書が送付されてきた。だが、そこにもやはり不起訴にした具体的な理由は書いてなかった。全文は、次のPDFの通りである。肝心な部分は、以下の引用の通りだ。

不起訴処分の理由)詐欺につき罪とならず
                    所得税法違反につき嫌疑なし

「不起訴処分理由告知書」の全文

社会通念からすれば、「詐欺につき罪とならず」「所得税法違反につき嫌疑なし」では、理由書としては認められない。結論だけを書いたにすぎない。結論に至るプロセスを書くのが理由書である。

高校や大学のレポートでこのような白紙同然のものを提出すれば単位がもらえない。一般企業であれば、仕事をしなかったという評価になる。「ふざけるな、明日から出社しなくてもいい!」と言われる。学術論文であれば、研究者としての資質を根本から問われる。社会通念からして白紙の理由書はまったく通用しないのである。

ところが検察官になると、こうした行為が容認されているのだ。

「2」に関して回答できなかった事実は、検察がこれまで租税特別措置法の41条18・1に明記されている還付金制度の例外事項を理由に、政治家のマネーロンダリングを取り締まった実績がないということだろう。と、すれば森・高市のケースは最初の事例になるから、ますます不起訴にした理由を明確にして、記録として残しておく必要があるだろう。

今後、筆者としては、森・高市の2つのケースで、地検が上級機関とやりとりした際に作成した全文書の開示を求めていくことになるだろう。情報開示に応じなければ、再度、調査して理由書を作成するように求めることになる。