1. メディア界の2大病魔、新聞の偽装部数からテレビの視聴率偽装へ

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2016年06月10日 (金曜日)

メディア界の2大病魔、新聞の偽装部数からテレビの視聴率偽装へ

新聞・テレビの没落に歯止めがかからない。
NHKが2015年7月に実施した世論調査の結果が、それを物語っている。

ふだんの日にテレビを見る時間*(ビデオやDVDの再生は除く)は、1985年から2010年までは“長時間化”の傾向が続いていたが、この5年で「ほとんど、まったく見ない」人と「短時間」(30分~2時間)視聴の人が増加、「長時間」(4時間以上)視聴の人が減少し、全体の視聴時間は初めて“短時間化”する傾向に転じた。

■「日本人とテレビ 2015」調査 結果の概要について

テレビ離れの背景に、インターネットの台頭があることは論を待たない。たとえテレビの愛好者であっても、番組を録画して、自分が見たいときにそれを視聴する行動パターンが定着してきた。このような視聴者は、CMは、「早送り」でスキップしてしまうことが多い。

こうした状況の下で大きな影響を受けていると推測されるのがテレビ局と大手広告代理店である。クライアントのPR戦略がテレビから、他媒体、たとえばインターネットやイベントに移行する傾向が顕著になっているなか、広告代理店も同じ方向へ連動し始めているが、新分野でも問題を起こしているようだ。これについては、後述する機会があるかも知れない。

最近、メディア黒書に視聴率の「偽装」に関する情報が寄せられている。「視聴率」を偽装してCM営業を展開するケースが増えているというのだ。筆者は、長いあいだ新聞部数の偽装を問題視して取材にしてきたが、テレビ業界でも「偽装」が起こっているようだ。

◇0.1%の視聴率偽装でも影響は大きい

過去の視聴率の偽装事件として有名なのは、2003年に起こった日本テレビ視聴率買収事件である。おそらくこの時期からテレビの没落は始まっていた。ウィキペディアは、この事件を次のように記述している。

日本テレビ制作局に所属していたバラエティ番組担当のプロデューサー・Aが、自分の制作したテレビ番組の視聴率が上がるよう、埼玉県内の探偵業者に(ナンバープレートを示して)ビデオリサーチの車を尾行するよう依頼し、同社のモニター世帯を割り出し(探偵業者は、尾行に気付いたビデオリサーチから抗議文書が届き、数件の割り出しに成功した時点でAと相談して調査を中止した)、番組アンケートや機械の点検を装って23世帯に接触し、水増しした番組制作費を私的に流用した金銭を渡して視聴を依頼した。

2003年10月24日に事件が発覚。Aは懲戒解雇処分となったが、事件発覚後に流用した金額を日本テレビに全額返却したことから、同局からの詐欺容疑での刑事告訴は行われなかった一方で、電通・ビデオリサーチから民事訴訟を起こされている。(このうち電通とは2005年に1000万円の損害賠償を支払うことで和解が成立している)。ビデオリサーチは当初、偽計業務妨害容疑での刑事告訴も検討していたが、「捜査が調査協力世帯に及んで迷惑をかけることにつながる」という理由で断念した。

テレビ局と広告代理店は、たとえ0.1%でも視聴率を高く見せたがる。理由は単純で、視聴率が高い番組は、CM価格を高く設定できるからだ。それはちょうど新聞社がABC部数をかさ上げすることで、新聞広告の価格をつり上げるのと同じ原理である。

視聴率の場合、0.1%という数値は、極めて大きな数字である。たとえば3000万人がテレビを視聴している瞬間、ある番組の視聴率が0.1%とすれば、30万人がその番組の視聴者ということになる。これを1%にかさ上げするだけで、「300万人がこのCMを見ますよ」と言ってCM営業できることになる。

新聞の部数偽装(「押し紙」問題)については、メスが入るのも秒読み段階になっているが、視聴率の偽装は、これから大問題になりそうだ。メディアの主流がインターネットに移行してきた状況下では、報道できる条件も十分に整っている。

【情報提供窓口】048-464-1413(メディア黒書)