2014年07月11日 (金曜日)
脱法ハーブ報道にみる水面下の世論誘導の実態、厚労省・警察庁のキャンペーンと連動か?
このところ新聞とテレビが脱法ハーブに関するニュースを連日のように報じている。これらの報道に接していると、あたかも連鎖反応のように脱法ハーブが引き金となった交通事故が多発しているような印象を受ける。
しかし、次のような見方もできる。この種の事故は今に始まったことではないが、警察が記者クラブに情報を提供しなかったために、ニュースにはなり得なかった可能性である。
わたしはメディアを利用して国が、脱法ハーブ撲滅のキャンペーンを展開しているのではないかと疑っている。報道する側も自覚がないまま、脱法ハーブがからんだ交通事故のニュースを機械的に垂れ流している。
脱法ハーブが原因となった交通事故に関する一連の報道は、6月24日に東京・池袋で37歳の男性が脱法ハーブを吸って車を運転して事故を起こし、8人を死傷させた事故が発端である。
その後、次のような事故が新聞やテレビで報じられた。以下、池袋のケースも加えて時系列を示した。
【6月24日】池袋で脱法ハーブを吸った男性が交通事故を起こし、1人が死亡、7人が負傷した。
【7月2日】愛知県豊橋市で、乗用車が民家のフェンスに衝突。運転していた男が脱法ハーブを吸って事故を起こしたことを認めた。
【7月5日】東京都北区赤羽で車がバイクとタクシーに衝突。事故を起こした男が脱法ハーブを吸って、車を運転していたことが判明した。
【7月6日】 栃木県警が脱法ハーブ「α-PVT」を販売目的で所持していた男を逮捕した。
【7月8日】 東京都板橋区で、乗用車が電柱に衝突。運転手が脱法ハーブなどの薬物を吸っていたことが判明した。
【7月8日】 仙台市内で無免許運転の男が衝突事故を起こした。県内の店で脱法ハーブを手に入れ、車内で吸ったことを認めた。
【7月11日】 東京都立川市で車が電柱に激突して運転手が死亡。車のダッシュボードから、脱法ハーブが見つかった。
◇警察庁と厚労省の動きに連動
わずか2週間ほどの間に、脱法ハーブが原因となった交通事故が次々と報じられたのである。この一種奇妙な現象の背景に何があるのだろうか。結論を先に言えば、世論誘導の可能性である。
2013年の3月28日、厚労省の秋葉副大臣は記者会見を開き、薬物使用に関する調査結果を公表した上で、対策を打ち出している。対策は、パンフレットの作成、ポスターやチラシの作成などである。
このころから脱法ハーブを取り締まる動きが本格的に生まれ、6月24日の池袋の事故を機に、厚労省と警察庁が腰を上げた。『朝日新聞』(7月3日付けデジタル)によると、7月3日に、厚労省は「各都道府県や地方厚生局麻薬取締部などに、脱法ドラッグの指導と取り締まりの強化を要請し」、「警察庁も同日、摘発強化を全国の警察本部に指示した」のである。
こうした厚生省と警察庁の動きに連動して、マスコミが脱法ハーブが引き金になった交通事故を集中的に報じるようになったのである。
◇世論誘導と洗脳
脱法ハーブを排除するための世論誘導であるから、批判の声は上がらないが、問題はこのような「洗脳」が、他分野でも進行している可能性だ。自覚がないまま、メディアにより世論が誘導される体制が社会に組み込まれていると言っても過言ではない。
記者クラブで与えられた情報を基に記事を書いていると、世論誘導の片棒を担ぐことになりかねない。報道するニュースの選択は、やはり自分の頭で考えて決めるべきだろう。一方、視聴者と読者は、信頼できるメディアを慎重に見きわめたほうがいい。