1. バレンティン外野手のホームラン日本新記録は参考記録ではないか?  偽装球問題と新聞社

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2013年09月18日 (水曜日)

バレンティン外野手のホームラン日本新記録は参考記録ではないか?  偽装球問題と新聞社

『デイリースポーツ』(電子版)によると、読売の渡邉恒雄会長がプロ野球の統一球について、次のように語っている。

 【2011年9月27日付デイリースポーツ紙面より】巨人の渡辺恒雄球団会長が26日、都内で取材に応じ、本塁打の激減につながった統一球に激しくかみついた。今季、ペナントレースの行方については白旗を掲げたうえで「プロ野球の経営者としては統一球ってのはどうだ?コマーシャルベースで考えれば、空中戦のほうが面白い」と、疑問を投げかけた。 ? 首位ヤクルトと6ゲーム差の3位で、優勝は厳しい状況。4位の阪神にも2ゲーム差と迫られている現実に「下手したら4位にもなる。今年はダメだ。来年、どうやって立て直すか」とあきらめ口調の渡辺会長。少し間を空けた後、自ら統一球の話題を切り出した。 ? 「日本だけの野球だったら、何もあんな統一球にする必要ないんじゃないかね。フェンス間際でみんなホームランにならないでアウト。これで観客数が減ってんだよ」。

(出典=ここをクリック)

この発言内容が事実とすれば、16日にヤクルト・スワローズのバレンティン外野手が達成したホームランの日本新記録に疑問符が付くことになる。厳密に言えば、参考記録でしかない。

◇スポーツ・ジャーナリズムの視点は多彩なはず

たとえば陸上競技の場合、追い風が風速2.0m/sを超えると公認記録としては認められず、参考記録として処理される。トラックを周回する400メートル走や中・長距離走は対象にはならないが、一定の方向へ走る100メートル走や走り幅跳びなどが対象になる。それが記録の公平性を尊重するスポーツの常識だ。ドーピングが禁止され、違反すると厳しく罰せられるのも同じ理由だ。

ところが野球は、肝心のボールを「偽装」していても、記録として認められてしまう。それはさながら「押し紙」(新聞の偽装部数)を、ABC部数として認めているのと同じようなものだ。スポーツ・ジャーナリズムが問題点を指摘しないことが、このような状況を招いている原因のひとつである。新聞記者は、「偽装」の告発には消極的な傾向がある

理由は簡単で、新聞再販などの問題で政界に影響力を持つ渡邉恒雄氏が会長を務める読売が球団オーナーであるからだ。これでは「偽装球」を厳しく批判できるはずがない。

日本のスポーツ・ジャーナリズムは、試合の結果と選手や監督のコメントを伝えるメッセンジャーに過ぎない。オリンピック報道にしても、オリンピック「招致派」のメッセージを垂れ流しているに過ぎない。職能とは無縁だ。

オリンピックを別の視点、たとえばスポーツの政治利用、土建屋利権、広告利権、原発汚染隠しといった視点から問題提起しようという姿勢がほとんど不在になっている。

裁判報道も、やはり同じような傾向がある。訴訟が提起された時と判決が出た時に書面の内容を紹介して、関係者のコメントを掲載するだけだ。本来、司法記者の仕事は、裁判そのものの検証であるはずだが。この作業が不在になっているから、大半の裁判官は自分の出世の妨げにならない無難な判決しか下さない。

スポーツ報道と裁判報道は、日本の新聞ジャーナリズムの性格を象徴している。この2つの分野でどのような報道がなされているかを注意深く観察すると、日本の新聞ジャーナリズムの特徴が見えてくる。