2023年06月15日 (木曜日)
ベトナムファスティバル報道にみるマスコミの世論誘導、「佳子様」を利用して皇室のPR
メディアによる世論誘導の実態を記録する機会にめぐりあわせた。去る6月3日と4日の両立、東京都の代々木公園で開かれたベトナムファスティバルでのことである。これは日越国交樹立50年を記念する行事だ。
わたしはこのイベントをAL Press(ラテンアメリカ・プレス)の記者として取材した。AL Pressは、外交問題を扱うメディアで、昨年の12月に、コロンビアで発足した。今年の1月から、わたしは日本のニュースを担当している。
会場には、多数のメディアが取材に来ていた。要人が開会式に出席することもあって、ステージ前のエリアへの入場は制限されていた。主要メディアしか中へ入れなかったので、わたしは「外野」から開会式の様子を取材した。
開会式には、福田康夫元首相、林 芳正外務大臣、山口那津男・公明党代表らが参加した。稲田朋美議員の姿もあった。そして「佳子様」が、開会式が始まる直前に舞台に現れた。もちろんベトナム大使らも舞台の上にいた。(写真参照)
◆◆
記事で何を伝え、何を伝えないかの選択は、記者の裁量による。誰の発言を大きく報じて、誰の発言を扱わないかは記者の判断である。あるいは記者の上司の判断になる。
読者は、福田、林 、山口・稲田朋、「佳子様」、ベトナム大使のうち、どの人物にメディアが光を当てたかを想像できるだろうか。
最初に挨拶をしたのは、フェスティバルの最高顧問を務める福田元首相だった。福田氏は、この50年のあいだ日越関係はおおむね順調に推移してきたと評価したうえで、両国間の関係をさらに深めるためには文化交流が欠かせないと語った。林外務大臣は、先の広島G7サミットでベトナムの首脳らとも会談したことを強調した。次期ベトナム大使のPhan Quang Hieu氏は、「フェスティバルを通じて、音楽、芸術、食を楽しんでください」と会場の参加者に歓迎の意を示した。「佳子様」のスピーチはなかった。単に笑顔をふりまいていたにすぎない。
開会式の後、わたしは会場に来ていたベトナム人らから話を聞いた。日本での職業とか、来日した動機やプロセスなどを聞いた。大半は、肉体労働者として来日していることが分かった。
わたしは、他のメディアもわたしと同じように、開会式を取材し、会場を取材して記事を書いているものと思っていた。ところがこの日の夕方から、翌日にかけてインターネット上に現れた記事をみてびっくりした。
NHKから毎日新聞まで全社が「佳子様」に焦点を当てた記事を掲載していたのだ。(朝日と読売は、記事そのものが見当たらなかった。)次に示すのがその具体例である。
ベトナムフェスに佳子さまが初めて出席 外交関係樹立50周年(毎日)。
佳子さまが開会式に出席 日本ベトナム外交樹立50周年“フェス”(日テレ)
佳子さま ベトナムフェス開会式出席 外交関係樹立50周年(FNN)
佳子さま 日本とベトナム外交関係樹立50周年記念イベントに(NHK)
このレベルの記事であれば、高校生でも執筆できる。しかも、カンニングでもしたかのように同じ内容だ。駆け出しの記者が取材したとしても、デスクの段階で修正できるはずである。報道としては箸にも棒にもかからないものなのだ。
マスコミによる世論誘導の実態とはこのことなのである。肝心な部分は、カットしているわけだから、新聞人やテレビ人が口癖のように言っている「客観報道」にすらなっていない。わたしは日本の新聞・テレビが完全に没落していることを確信した。しかも、これらの記事をPickupなど、一部の独立系メディアも垂れ流しているのである。もはや絶望的な状況ではないか。
参考:(AL Press)FESTIVAL DE JAPÓN Y VIETNAM
冒頭写真:出典はNHK