1. 新聞・テレビの世論調査、第3者によるデータ検証をスルー、歯止めがかからない自民党のPR

マスコミ報道・世論誘導に関連する記事

2021年09月10日 (金曜日)

新聞・テレビの世論調査、第3者によるデータ検証をスルー、歯止めがかからない自民党のPR

現在進行してる壮大な世論誘導のひとつに、自民党総裁選の報道がある。テレビ・新聞はいうまでもなく、雑誌やインターネット・メディアも盛んに自民党総裁を報じている。たとえば候補者の「お人柄」や人脈を紹介する。その先鋒を務めているのは、田崎史郎、鈴木哲夫、東国原英夫といった人々である。

しかし、大半の視聴者・読者は総裁選報道がメディアによる世論誘導であることに気付いていない。おそらく報道現場にいる人々も、自分たちがやっている「ジャーナリズム」活動が、自民党の支持率回復に、重要な役割を果たしていることを認識していない。悪気なく、無邪気にやっているのだ。世論誘導の構図とはそういうものなのだ。無知が、その根底にある。

自民党総裁選の報道は、自民党総裁が変われば、日本は新しい出口にたどり着けるというい誤解を国民に植えつける。実際、マスコミは、岸田氏が優勢か、河野氏が優勢か、それとも高市氏が優勢かと言った視点の報道を繰り返している。財界にとっては、誰が総裁になるかで、多少の権益関係の違いは生じるだろうが、大半の国民にとっては何も変わりがない。

人選によって大きく政治が変わるという考えは、一種の英雄史観に基づいた誤まりである。英雄史観というのは、ひとりの偉大な人物が現れれば、社会は変わるという単純な考え方である。観念論の歴史観の典型だ。

日本のマスコミは、この歴史観に汚染されている。NHKの歴史関連番組がその典型で、渋沢栄一をクローズアップしている背景にも、英雄史観がある。人気番組「その時歴史が動いた」もその典型的にほかならない。彼らにとっては、ナポレオンのような人物が古代に生まれていれば、もっと早く世界は変わっていたのである。

しかし、政治家を語るとき、その社会を支配している経済体制を無視することはできない。新自由主義の時代には、渋沢栄一のような人物が宣伝媒体として利用される。社会主義の構築をめざす勢力は排除される。そういう力学が常に働いている。同時代の経済体制を維持する方向性で、政治もマスコミも結束しているのだ。

自民党の総裁選は、自民党枠内で欠点を「修正」して、大企業を支援する従来の枠組みはそのまま維持する方向性の人選なのである。が、マスコミは誰が総裁になるかで、あたかも日本が革命的に変わるような錯覚を国民の間に広げている。それにより自民党の支配を維持しようとしているのだ。

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世論調査というものがある。新聞やテレビによる世論調査の信頼度は高いが、公表されているデータは、第3者による検証を経たものではない。この点に言及すると、「謀略論」のレッテルを張られかねないが、マスコミが電波利権や軽減税率(対象は新聞)の恩恵を受けることで、日本の権力構造に組み込まれていると考えれば、自民党に有利になるように、ウソの数字を公表する事態は十分に起こりうる。新聞・テレビの世論調査を見れば、自民党以外に投票しても、勝目がないと判断してしまう。

マスコミの情報は、原則として鵜呑みにしない方がいい。

現にメディアの信頼度に関する世論調査では、新聞・テレビは常に新聞を最も信頼できるメディアとする調査結果を公表してきた。新聞購読率の数字も不自然だ。新聞のABC部数に至っては、まっかな嘘である。

おそらく国民の側も新聞・テレビが発表するデータにウソはないと頭から信じ込んでいる。が、今の時代に、裏付けが証明できないデータを堂々と公表すること自体が異常なのだ。

かりに偽りの政党支持率を公表する行為が慣行になってきたとすれば、それだけで日本人は世論誘導されてきた可能性がある。

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新聞・テレビによる自民党総裁選の報道には、TBSなど「リベラル保守」といわれるメディアも参入してる。「リベラル保守」のメディアは、社会問題も積極的に取り上げるが、彼らの視点は、社会を根本的に変革する方向性のものではない。社会の欠点を「修正」して、現在の体制を維持する方向性に徹している。現状を維持することが原則なのだ。
皇室報道に至っては、ジャーナリズムの基本原則すら守っていない。

権力構造の中でのこの「役割」を放棄すると、メディア企業そのものが存続できない。権力構造からはじき出される。

このところマスコミが注目している「修正マルクス主義」なるものも、実はマルクス主義ではない。単に社会の欠点を「修正」して、現在の体制を維持すること促進する一種のトリックである。それゆえに財界人からも支持されている。

この世界には、巧みなトリックが溢れている。その代表格がマスコミによる世論誘導である。が、逆説的に言えば、自民党総裁選の報道は、世論誘導の具体的な形を把握する格好の機会でもある。