2018年03月08日 (木曜日)
朝日新聞による森友文書のスクープを考える、「押し紙」とメディアコントロールの深い関係
朝日新聞が、森友文書が書き換えられた可能性を報じた。このスクープは安倍政権に決定的な打撃を与えそうだ。高く評価できる報道だ。
朝日新聞は文書を確認。契約当時の文書と、国会議員らに開示した文書は起案日、決裁完了日、番号が同じで、ともに決裁印が押されている。契約当時の文書には学園とどのようなやり取りをしてきたのかを時系列で書いた部分や、学園の要請にどう対応したかを記述した部分があるが、開示文書ではそれらが項目ごとなくなったり、一部消えたりしている。
■出典:森友文書、財務省が書き換えか 「特例」など文言消える
最近、朝日新聞の報道は、かつてに比べて格段によくなった。その原因が記者の奮起にあることはいうまでもないが、それを同じ程度に、いや、それ以上に重要な別の要素もある。それは朝日新聞の経営が健全になって、公権力が介入するスキがなくなってきた事である。
メディア黒書で繰り返し報じてきたように、新聞ジャーナリズムを腐敗させてきた本当の原因は記者の職能不足ではなく、「押し紙」を柱としたビジネスモデルにほかならない。「押し紙」は独禁法違反なので、公権力は「押し紙」を口実にすれば、いつでも新聞社に介入できる。日本の新聞業界には、それを警戒して、政府批判を自粛する空気がある。逆説的にいえば、公権力は「押し紙」を取り締まらないことで、メディアコントロールの構図を維持してきたのである。
◇「押し紙」、軽減税率、再販制度の3点セット
新聞経営者にとって、もっとも打撃になるのは、公権力から経営上の汚点を
指摘されることなのだ。紙面批判は、「見解の相違」で簡単にすませることができるが、「押し紙」問題や軽減税率問題、それに再販制度の問題などは、新聞社経営の根幹にかかわる。経営上のアキレス腱である。これらの点を指摘されると、報道を自粛せざるを得なくなるのだ。
それゆえに「押し紙」が多い新聞社ほど政府よりになる傾向がある。
筆者は20年にわたって新聞販売店を取材しているが、朝日新聞の販売店は大きな転換期を迎えている。知りあいの販売店主らは、「押し紙」がゼロになって黒字経営になったと喜んでいる。
読者の中には、朝日新聞のABC部数の激減を読者の激減と思っている人が多いだろうが、これは誤った見方である可能性が高い。朝日新聞社が「押し紙」を排除しはじめた結果と考えたほうがいい。もちろん全店を調べたわけではないので、厳密には分からないが、相対的に「押し紙」が減っていることは間違いない。
幸か不幸か、いまだに「押し紙」だらけの新聞社があるので、公権力が「押し紙」問題にメスを入れたら、その影響を受けるのは、朝日以外の新聞社ということになりそうだ。それゆえにやはり「押し紙」の摘発は難しいだろう。
政府としては、新聞に対する軽減税率の適用を棚上げにして、朝日に対抗する戦略もあるが、これをやれば「押し紙」の多い他の新聞社が朝日以上の打撃を受ける。読者がいない「押し紙」にも消費税がかかるからだ。
再販制度を撤廃して、新聞社に圧力をかける戦略も残っているようにも思えるが、実は新聞社サイドとしては、再販制度を撤廃して、販売網の再編を進めたいというのが本音である。さもなければ販売網は崩壊する。
こういうふうに経営上の汚点を返上した新聞社は、強いジャーナリズム性を発揮することができるのである。
ただ、次の記事にあるように、朝日新聞広報部の対応には問題がある。これについては、朝日新聞と野党との関係を検証しながら、別の機会に再考してみたい。
【参考記事】朝日新聞社の取材拒否と非礼な対応について同社渡辺雅隆社長に通知書を送付、回答を求める! 私たちの取材要請は「迷惑」なのか!? 鹿砦社代表・松岡利康